大丈夫、人間さ
なんやかんやであれから2週間がたった。
たまにオリジナルペンである大和を使ってみるが、ただの日本刀にしかならず、気分はもやもやしていた。
というか、まったくきっかけもつかめないでいた。
本当にペン本体の能力なんかそ存在するのかよ……。
まさか、不良品!?
なんてことを毎日思っている。
ま、何があるかわからないから携帯している。ペンのデザインもかっこいいしな。
2限目は体育。
ペンを持参しろ、ということなので、普通の体育ではなくWEAPONシステムの実践をするのだろう。
このようなことは毎回ではなく、月に1回ほどある。
人によっては楽しみであり、苦手な人にとっては嫌な時間である。
ちなみに、この時は男女共同で体育なので、テンションがあがる。
たまたま未来を見つけたので、声を掛ける。
「疾風の調子はどう?」
「全くなんですよー。きっかけもわかんないし」
同じこと思ってるなー。
「優人くんはどう?」
「こっちも同じ。手がかりゼロだよ」
「よかった〜。私だけおいていかれるかとおもっちゃったよ」
安心していた。
いや、こんなことでよかったと言われても嬉しくない……。
「お互いに頑張ろー」
ちょっとはしゃいでいる未来。
というか、はじけるほどの笑顔を浮かべている。
そんなに嬉しかったのだろうか。
は! 殺気!
俺はしゃがむ。
すると上をジャンピングキックが通り過ぎていった。
こ、こえ〜〜〜〜。
「チッ、外したか」
「あぶねーだろ、春……」
「ごめん、ごめん。ちょっと勢いがですぎて」
少し怒っている?
なんでだろ。
春は俺のことをスルーして未来としゃべりはじめた。
女子2人のところには入れないので、今体育館に入ってきた正樹のところへいく。
「優人……。君も大変だね」
「まあな。それにしても春はなんで怒り気味だったんだろう」
頭を叩かれた。
「察したれ、ばかもの」
???
いや、意味不明です。
「さすがに春がかわいそうだよ」
そんなに俺が悪いのか!?
もう、女心は解読不能です!
しばらくして、先生がチャイムと同時にやってきた。
「集合しろー」
先生のいる体育館中央に集まる。
今日は何をやるんだろうか。
俺はワクワクしていた。
「さて、今日からWEAPONシステムに新しい技が導入されました」
「「「おぉー!」」」
「まあ、実践してみるのがはやいでしょう。離れてください」
全員が5歩ほど下がる。
先生は赤のペンを2本取り出した。
なぜ、2本?
その意味はすぐわかる。
「セカンドリリース」
てか、デカ!
大きさはだいたい身長の2倍。きっと重さも変わっているだろう。
先生は持っているだけで辛そうだ。
「ちょっと道あけてねー」
先生の正面があく。
「燃やし尽くせ」
大剣が振り下ろされる。
…………。
はっ?
威力が半端ないんですけど。
今までのペン1本の威力とは比べ物にならない。
炎の大きさは何倍もあった。
あれを食らったら骨も残らないだろう、そのレベルのものだった。
先生をみると、息をきらして、また大剣はペンに戻っていた。
解説が始まる。
「さてさて、見ていただいた通りです。今まで、ペン1本ではどうしても武器化できる大きさや、その威力に限界がありました。そこで、今回のような技がつくられました」
まぁ、1本でも十分な威力だけど。
「ではまずメリットから話していきましょう」
ガラガラとホワイトボードを持ってくる。
そして書き出していった。
「この2本同時武器化をSシステムと言います。secondのsですね。これにより、武器の大型化が可能になりました。巨大な鎌、槍、剣。何でもできます。また、さっきみたように属性攻撃の威力もあがっています」
ただ、デメリットもあるんだよな。
「デメリットはやはり重さとインク消費です。重さということでは素早く動くのは無理ですし細かく振り回すこともできない。インク消費では2本使っても、1本で武器化している時間とかわりません。大きくなっているから当たり前ですね。また、全力の属性攻撃ではインクが一瞬でなくなります。また手加減も難しい。とにかく扱いが難しいのです」
俺には不向きだな。
「このようなメリット、デメリットがあるため、無理に使う必要はありません。ひ人それぞれですね」
それでいいのかよ、教師!
「じゃああとの時間はSシステムの練習で。質問あっからこいよー」
テキトーだな。
みんな散らばっていく。
隣にいる正樹にきいてみる。
「どうする?」
「うーん。俺には不向きだろうな、きっと。そもそも威力を得るよりも速さを失う方が怖いかな」
「同感だな。他のみんなはどうだろう」
「まわってみるか」
「あぁ」
まずは未来。
「どう? できた?」
「これからだよ〜」
陽気な声で返事する。
「セカンドリリース」
先生と同じ大きさの大剣がでてきた。
そして、手から滑り落ちた。
「えへへ。ドンマイだ」
しゃがんでも持ち上げようとする。
「う〜ん、う〜ん」
唸るだけでもち持ち上げられていない。
「大丈夫?、未来」
「…………無理です」
半泣きになってるよ。
「そんなに重いの?」
「信じられないほど重いです」
「非力だな、未来は」
正樹がからかう。
「どーせ、私は非力ですよーだ」
拗ねてしまった。
「そんなことないよ、未来。未来には向いていないだけだよ。非力でも問題ないよ」
「やっぱ非力なんだー」
あ、あれ? フォローしたつもりが逆効果!?
ダメじゃん!
ブルーモードに入った未来はどうしようもないので、そのままにして次の人へ行く。
萌様を見つけた。
「はろー、調子はど」
「無理です」
「そんなにキッパリ!」
しかも、どう?って言い切る前に否定されたし!
そんなに無理ですか。
「そもそも女性がこんな重いものもてるわけありません。持てる女性は女性ではありません。化け物です」
そ、そんなに言い切って、もしいたらどうすんのさ……。
「非力だな」
また正樹が言う。
お前ってやつは!
「非力でごめんなさい……」
「大丈夫だよ、萌様。持てたら化け物なんでしょ? 化け物より非力のほうが全然いいから、安心しなよ」
「ホントに非力でごめんなさい…………」
ま、またかー!
なんでフォロー失敗するんだよ。
「ドンマイ」
正樹に肩をたたかれた。
元はと言えばお前のせいだろうがーーー!
そしてブルーモードに入る萌様。
いや、本当にごめんなさい。
一礼して去った。
いきなり、後ろから強烈な風が吹いた。
俺は体育館の壁に激突する。
こ、こんなのするのは一人しかいねぇ。
「なかなかいいものだな」
しかも感想述べてやがる。
「人で実験するんじゃねぇー! このメガネ野郎!」
「黙ってろ、フォロー失敗男」
「み、みてたのかよ」
「フッ」
相変わらずだな、こいつ……。
メガネは普通に大剣をもっていた。
こいつは真面目そうでメガネ、とインテリなイメージがあるが筋力もある。
一発やり返してやりたいが、け警戒されている今ではできないだろう、ということで、あとでやり返すことにした。
ほっておいて最後、春を探した。
急に目の前が真っ白になる。
しばらくして視界が回復して、その元凶をみる。
そこには春がいた。
体育館の壁に穴が空いている。
「……まじかよ」
多分白のペン2本を使ったのだろう。
なんつー、威力だよ。
体育館にある結界はさすがに貫いていないだろうが、なんというか、…………やばい。
そして、春は大剣を軽々もっていた。
いや、担いでいます。
ここで、萌様の名言を思い出してみましょう。
持てる女性は女性ではありません。化け物です。
さて、この言葉を目の前に人にあて当てはめてみましょう。
「春は女性ではありません。化け物です」
「なんだとコラァァァァ! 放てぇぇぇ!」
俺は直感を頼りに右へ跳ぶ。
その瞬間、光、いやレーザーがとんできた。
出力がヤバすぎる。
ってか、あたったら死ぬぞ。
「待て、待つんだ春。これを言ったのは萌様だ! 俺じゃない!」
「萌ちゃん?」
春が萌様を見る。
「言ったの?」
首をブンブン横にふる。
えっ、まじで。
それじゃあやっぱり俺が言ったみたいになるじゃないか!
「優くん」
「はははははい」
「謝って。とっても傷ついたから」
笑顔が怖い。
そして、傷ついたように見えない……。
「あ、や、ま、っ、て」
「す、すいませんでした!」
「じゃあ結婚してくれる!?」
「そりゃ、もう喜んで……してたまるかーーーーーー!!!」
「ダメだったか、てへ」
てへ、じゃねー!
クラスのやつはひゅーひゅーとはやし立てる。
気にするな、俺。
頑張れ、おれーーーー!
ちなみに、春はSシステムを積極的に使うことにしたらしい。
次からだんだん話が進んで行きます