頑張れ、俺の理性!
校門の前。
「これより、ミッションを開始する。オーバー」
隣で泣きそうになりながらついてくる未来。
「こちら本部、状況はどうだジャック、オーバー」
「誰がジャックだ、オーバー」
「ジャックじゃいやか、わかった。状況はどうだ、クリントン、オーバー」
「もうなんでもいいや。特別棟についた。物理実験室からまわっていく、オーバー」
なんか、未来がかわいそう……。
その後、生物実験室、化学実験室と行き、階段を下って、保健室についた。
「開けるぞ」
扉を開け、中を見る。
「ひっ、や、あぁ、あ」
未来が悲鳴をあげようとするが、声になっていなかった。
「未来!」
後ろに倒れそうになる未来の肩を掴み支える。
何があったか、未来のみた方をみると、人体模型が月光をあびて不気味に立っていた。
「大丈夫だよ、人体模型だ」
そういって振り向こうとすると、いきなり抱きついてきた。
……なんか、背中にやわらかいおもちがあたった。
違う意味でドキドキするんですけどー!!!
おもちが、おもちがー!
……落ち着け、落ち着け、雑念を消せ、俺。
「な、なぁ未来。動けないんだけど」
「私は、動きたくない……」
そんな顔で言われたら反抗できない……。
「つっても依頼だしな」
さて、どうするかな。
「わかった、腕に捕まる」
そうきましたか。ってか、さらにおもちの感覚がリアルになってきた。
ノォォォォォーーーーーーー!
冷静になれ。俺の理性よ、頑張ってくれ。
一回深呼吸をして落ち着く。
その状態で保健室の中をみて、問題がないので俺たちは次の部屋にむかった。
「大丈夫だよ、何もないから」
なだめつつ、一年生棟の教室をまわった。
結局、ここにも何もいなかった。
次はどこいくかなー。もうさっさと見つけて、未来を楽にしてやりたいし。
そう思いながら、ぶらぶら歩いていると、校長室の前にきた。
わずかな扉の隙間から光がもれていた。
「なーんだ、校長いるんじゃん」
扉を開けて中に入る。
すると、そこに校長はいなかった。そして、高そうな机の横に懐中電灯をつけている男性がいた。
その顔がとても不気味に見えた。
俺で不気味に思うってことはまさか……。
隣で未来が腕を掴みながら気絶していた。
あー、限界だったか。
気を取り直して男を見た。
そして俺はポケットに手をいれ、ペンを掴み、臨戦体制になった。
「君たち、なに何やっているんだい、こんな時間に。そもそも学生は入れないはずなんだが」
教師だった。
なーんだ、見回りの教師か。
「いやー、ちゃんと許可はもらってますから大丈夫ですよ。先生こそお疲れ様です。失礼します」
扉を閉め、退出した。
だが、俺はその場から立ち去らなかった。
そもそもこんな時間に校長室に入ることがおかしいし、机の横にいるということもあやしい。
何かあっては不安なので扉に耳をあてて中の音を聞いた。
すると、電話をしていた。
『すいません、学生が入ってきたもので。えぇ、えぇ。はい。確かにWEAPONシステムについての情報は入手しました。えぇ、はい。ではまた例の場所で』
まさか、本当にビンゴだったとは……。
……待てよ。ビンゴってことは、テロリスト!?
命の危険ないっていったじゃん、校長!
ここは逃げるしかないか。
声出せないから、仲間たちに応援を頼めない。
未来は気絶しているし。
敵の仲間がいる可能性もあるので廊下においていくことはできない。
さぁ逃げよう、そう思った瞬間、
「それからラブラブしてますか、オーバー」
なんでこのタイミングで連絡してくるんだよー!
「誰だ?」
中から声がする。これはやばい。
扉から離れてポケットからペンを取り出した。
色は黄色。悪くないな。
扉が開く瞬間、俺は唱える。
「リリース!」
黄色の日本刀。
相手の手には拳銃。
俺はすかさず床でぐったりしている未来の前に立ち壁になる。
月光で顔がみえた。その顔には見覚えが。
「お前は、ぶつかってUSB壊してしまった教師!」
「そうか、君か。君のおかげで、またここにくることになったんだよ。そして君と出会う。いったい君はどれだけ僕の邪魔をすれば気がすむんだい?」
その顔には怒りの色がにじんでいた。
「いやいや、テロリストには言われたくないな」
右ポケットに手をいれた。唯一右には白のペンが入っている。
「テロリストだなんて。ただ世界をかえたいだけだよ。この世界はくさっているからね」
「それはただのエゴじゃないの?」
「違うね、君たち子供にはわからないんだよ。この世界の真実が」
「わかりたくもないね。あ、おーい!」
俺は大きく手をふる。
すると、教師はつられて後ろをむく。
そこには、誰もいなかった。
「リリース」
出現するのは純白の日本刀。
そのインクをすべて使う勢いで俺はさらにめをつむって唱える。
「放て!」
次の瞬間、純白の日本刀は勢いよく発光した。
今は夜。廊下に電気もついていない。この状態で激しい光をみるとどうなるだろうか。
そう、目がしばらく見えなくなる。
「う、目が、目がぁぁぁ」
俺が目をつむったのはこのためだ。
もう片方の黄色の日本刀の属性は雷。
「走れ!」
抑えた雷を直撃させ、教師は気絶した。
「ふぅ、一件落着」
後ろから足音がする。
見知った顔の女性の先生。その手には拳銃。
俺は安心した。
助けにきてくれたんだな。
なんかすげー険しい顔してるけど、まあしょうがないか。教師にテロリストがいたわけだし。
先生が男の近くに座る。何かをつぶやくと、男の上着からUSBを取り出した。
「ごめんなさい。迷惑をおかけして」
「いえいえ。無事ですし」
「本当にごめんなさい。…………あなた達をま巻き込んでしまって」
パン、パン。
2発の弾が打たれた。一発は俺、もう一発は未来へ。
ふたりとも個人結界のおかげで弾は体の数十cm先で落ちた。
俺は意味がわからなかった。
わからなかった。
ワカラナイ。ワカラナイ。ワカラナナナイ?ワカラナイ。
俺の中で何かが切れる音がした。