表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

らいと おあ れふとー!

うー、微妙なでき。

放課後、俺は校長室に呼ばれた。

「今日はありがとう、優人君。いい勝負だったよ」

「ありがとうございます、校長先生」

「さて、例のものだが、これでいいかな?」

封筒を渡される。

「はい、問題ないです」

「ではまた、何かあったら頼むよ」

「お任せください。このためなら何でも手伝います」

そう言って退出する。

中身をニヤニヤみながら……。


校門をでて、しばらく歩くとそこには学生寮があった。

ほとんどの生徒はそこに住んでいる。部屋は2人用である。ちなみに、少し広めである。

「ただいまー」

「おかえり、優人」

そこには俺のルームメイトである武田正樹がいた。

「いい勝負だったね」

「校長にも言われた。ま、ちゃんと報酬ももらったがな」

「いつもの?」

「ああ。これがなかったらやらないよ、決闘なんか」

机に封筒の中身をあけた。

そこには校内用の食券一万円分と、文具券一万円があった。

高校生にとって文具を買うのはお金がかかる。ましてやここは消費量が激しい。よってこの臨時収入はとてもおおきいのである。

食券はおまけ。

「明日昼奢ってやるよ」

「ホントか? それはありがたい」

今日は勝って気分がいい。それに1人ぐらいなら何の問題もない。一万円分もあるのだから。

「明日から学校だな」

そう、今日は一年生の入学式があっただけで2、3年生はあし明日からなのである。

「クラスまた正樹と一緒だといいな。というか、いつものメンツが揃えばいいんだけどな」

「まぁなるようになるでしょ」

「そう、だな」

その後もいつもする何気ない会話をして、夜がすぎていった。


* * *


走る。俺は全力で走る。

なぜかって? そんなの遅刻しそうだからに決まってるだろ!

正樹はというと、朝から先生の手伝いだ、といって先に行ってしまった。

一度起こされたのは覚えている。その後、気がついたら始業まであと5分。

「大丈夫、ギリギリ間に合うぞ!」

下駄箱で靴を履き替え、階段を一気に4階までかけのぼる。

あと20秒。

10秒の余裕を残して扉に手をかける。そして思いっきり開けた。

……全員の注目が俺に集まる。いつも座っている席を見ると、知らない女生徒が座っていた。

そこで俺は察した。

そして、俺の絶叫とチャイムの音は同時だった。

はい、じゃあお約束いきます。

せーの、

「今日から2年生だったー!」

2年生初日、俺はクラスを一年生と間違え、遅刻した。


扉をしめ、遅刻証明書をもらいに職員室へいった。

スマホをみると、ご丁寧に正樹からどこのクラスかのメールがあった。

『クラスは2年2組だよー。一緒だー!』

しかも8時すぎにきてる。

「メール送るならもっとしっかり起こしてくれよ」

まぁ、悪いのは俺だけど。


* * *


朝のホームルームが終わってから教室に入った。

担任はもういなかったので、遅刻証明書を見せにあとで会いにいかなければならない。

……全く、面倒だ。

ふと、窓際にいた5人のグループに目がいった。

俺はそこに近づいていく。

「おはよう、優人」

正樹が最初に俺に気がついた。

「優人君だー」

優しくほ微笑んできたのは有馬未来。天然さん。

「おっはー、優くん」

軽い挨拶をしてきたのは中村春。結構暴力女。もちろん根は優しいいいやつだ。

「おはようございます、優人さん」

丁寧な言葉を使うのは浅井萌。うん、丁寧。

「ふっ」

……メガネ。小早川暁。

「おはよう、みんな。……なんだよ、メガネ。みんな挨拶してるんだからしろよ!」

「バカにする挨拶などない」

「なんだとー!」

「遅刻の上に教室を一年生と間違えるやつにバカといって何が悪い?」

「うっ、なぜそれを……」

「丸聞こえだ、お前の絶叫。ちなみに録音してある」

「なんで!」

「内緒だ」

そう言って、録音したものを再生する。

『今日から2年生だったー!』

再生しないでくれーーーー!

頭を抱える俺。

笑う他のメンバー。

よし、話題を変えよう。

「ところで、なんでみんないるの?」

「それは同じクラスだからですよ、優人さん」

「すげー偶然だな。誰1人欠けずにいるよ」

「違うよ、私たちが運命の赤い糸で繋がってるからだよ」

春はまた大胆なこというな。まぁ、俺のこと好きって公言しているし。その理由はまた、そのうち。

「はいはい」

いつものことなので俺は軽くあしらう。

「え、優人くんと春ちゃん、赤い糸あるの? いいなー、いいなー、私もほしいよ!」

ドキンと心臓が高鳴る。さすが天然。破壊力抜群。

「もう、未来は意味もわからずそういうこといわないの!」

さすが萌様。未来のことよくわかってる。

「今日も平和だなー」

まったくだぜ、正樹。

「ふっ」

「お前はそれしかいえねーのかー!」

「もう授業が始まります。席につきましょう。優人さんはこちらです」

俺とメガネの喧嘩は起こることなく、萌様に処理された。実はまとめ役兼ツッコミ役でもあります。

本当にみんなと一緒でよかった。

一年とても楽しみだ。


* * *


授業、嫌です。そりゃ、もちろん。

この学校は1コマ65分×5限で、午前に3限やる。

そしてこれから3限目。担任の授業である。

みんなによれば綺麗な女性の先生らしい。苗字は直江。


チャイムがなり、入ってくる。

第一声。

「片桐優人、あなたは包囲されている!手をあげてでてきなさい!」

なんか変な先生キターーー。

今時の高校生にこんなこと言う人なかなかいませんよー!

しかたなく手をあげて前にでていく。

「壁に手をつきなさい」

まだ、続くんだ、これ。

手をつけると、背中になにかつけつけられた。

「死にたくないのならここで選びなさい、海パン一丁で一日すごすか、それとも……」

まてまてまてまてまて。おかしいだろ、その選択。なぜだ、なぜ海パンなのだ!

背中を冷や汗が落ちていく。

クラスも異様な緊張感に満ちている。

「それとも、メイド服着て一日過ごすかを!」

「ちょっと待てーーーーーー!よりによってなぜその選択なんですか、他に罰のあたえ方あるでしょう」

「だって、みなさんも私もおもしろくないでしょ?」

なんつー考え方!

「「「「確かに」」」」

しかも声揃えて納得しないでくれ!

俺は仲間に目をむける。

未来は楽しそうに笑ってる。

春は期待に満ちた目で俺の選択を待っている。

萌様は……顔背けてる。しかもなぜか赤い。

メガネなんか頼るか!

頼みの綱は正樹。

…………親指立ててエールを送っていた。


……もう俺は誰も信じない。信じないぞー!


そして俺は海パンかメイド服かを考える。

どっちも嫌だ。決めることなどできない。

それを察したのか直江先生は黒板にあみだくじを書いた。

なんつー古典的……。

「らいとorれふとー?」

「しょうがない、ライトで」

あとは野となれ山となれ、だ。


…………結果はメイド服でした。


ノォォォォーーーーーーーー。

声にならない叫びとなった。

だって、もう男でもないじゃないか。


ここでなぜか正樹が立ち上がった。

まさか、止めてくれるのか。ありがとう、正樹。俺はお前を信じていたぜ!

「なあ優人。ここでやめちまっていいのか。……これはお前にしかできない。今この時に、日本中、いや世界中でメイド服を着ようとしているのはお前しかいないんだぞ。これが高校生活。これが青春なんだ!」

「そうだよ、優くん!」

そうだ、そうだ、とみんなも共感する。


…………そうだよな、……ここで青春しないとな。

一瞬、メガネをみる。するとわずかに笑いながら、ふっ、と言った。

あいつも、俺を応援してくれているんだろうな。

決心した。

「わかったよ、みんな。俺……やるよ!」

今日から一斉に歓声がわき、メイドコールが始まった。

やるよ、俺、やるよ。

先生をみると、俺は力強く頷いた。先生も同じ頷く。

先生は手招きして、歩き出した。きっと俺をメイド服のある場所まで連れていってくれるのだろう。

先生が教室の扉の前にたった。

「覚悟はいい? この扉をくぐると、もう二度とその格好で帰ってこれないんだよ?」

「もちろん。覚悟のうえです」

「わかりました。行きましょう」

先生が扉を開ける。



……………………織田校長が立っていた。

ピシャンと、すぐに扉を閉める。

「か、か、かか、覚悟は、いい?」

「はい」

再度扉を開ける。



…………………………織田校長が無表情で立っていた。

先生の顔がひきつった。


真面目に授業していたかのように、中央にある教卓へ向かう。が襟を後ろからつかまれてしまった。

そして、そのまま直江先生は引きずられてった。

「あ、あ、あぁぁぁぁ、あ、あぁぁァァァァぁぁぁーーー」

残ったのは、廊下に木霊する悲痛の叫びのみだった。


授業は自習になった。


* * *


そして昼休み。

「さて、正樹、飯いくか」

「奢りだったよね」

「バカ、それ大声でいったら……」

「優くん、奢るの? ま、さ、か、正樹くんだけ、ってことないよね」

「いや、実は正樹だけなん」

べこり。ロッカーが春の怪力でへこんだ。

「な、い、よ、ね?」

「ももも、もちろんでございます、春様」

まぁ、二人くらいならなんとかなるか。

「みんなー、正樹が奢ってくれるってさー」

あと3人も呼んだ。

……6人はきつい。

「そ、それは優人さんにご迷惑じゃ……」

萌様が困惑している。

「まぁ、気にするな。その食券は俺とそのバカとの共通ファイトマネーだ。俺も許可しよう」

「メガネさ、コホン、暁さん……、ありがとうございます」

「いや、今メガネさんって呼ぼうとしなかった?」

「気のせいですよ。それでは行きましようか」


6人での食事は金がかかるかと思ったが、学食が安いので4000円ほどですんだ。

もう一回は奢れそうだな。みんなで食べるのは楽しいし。

そう思いながら、平和な昼がすぎていった。


* * *


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ