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デモンストレーションってやつですね

「文武両道、この言葉はわが高校の教育方針であります」

 織田校長が新入生へあいさつをする。

「『文』を用いて『武』となす。この2つの両立ができなければ、わが高校では大変辛い思いをするでしょう」

 ……いや、まったくですよ。この学校は『文』も『武』も努力を怠っては生きていけないからな。

「また、多くの生徒がこの学校の特殊なシステムを知って入学してきたことでしょう。いや、ここでしかできないからこそ入学してきたのでしょう。そう、WEAPONシステムです」

 はぁ、俺も期待したよ。楽しくておもしろいものなんだろうなー、と。けど真実ははかないもの。このシステムはそんなに甘いものではなく、時には命が危険にさらされ、時には熱い思いをして、痛い思いをして。これがテロリストとかに知れ渡ったら、世界は混乱する、そのレベルの代物だからね~。

「この情報は高校の外に全くでていません。故に、まず解説をしておきましょう。WEAPONシステムとは、一言で表すとすると、皆さんの身近な文房具を武器化して生徒同士で戦う、というものです。」

 お、新入生の顔がポカーンとしていますよ、校長。

「あとで2年生に実践してもらうので、とりあえず話を聞いてください」

 そういうと、1年生が集中して話を再度聞き始めた。

「まだ今のところ武器化可能な文房具はペンとシャープペンシル、鉛筆だけですが、今後増やしていく予定です。さて、武器化して戦うために、怪我をすることもあります。しかし、心配無用です。体育館、また、教師の作った結界内であるならば、その場所からでることにより、傷は治ります。正確に言えば、結界に入ったときの状態にリセットされます」

 もしこの結界がなかったら、一体何回死んでいることやら……。

「逆に言えば、結界のないところで攻撃した場合、怪我は治らないので、死ぬこともあります。そんなことは絶対にしないでください」

 戦いに使わないけれど、武器化する必要があるときがある。そのため、校内のどの場所でも武器化できる。

「……あまり長い話をしても退屈でしょう。実際に戦いを見たほうがいいですね」

 いよいよ出番か。本当に退屈でしたよ、校長。

「これから皆さんにはグラウンドに出てもらい、2年生の学年1位と2位の戦いを見てもらいます。そこでも解説をいれていきますので、安心して観戦してください。それでは十分後に決闘を始めます。解散してください。」


** *


「校舎側に立っているのは、片桐優人君、学年トップクラスの実力の持ち主です」

 俺は手を大きくふって、1年生にアピールする。

 ここで活躍すれば、モテるはずだ!

「逆側に立っているのは、小早川暁君、同じく学年トップクラスです」

 グラウンドを囲むように観客が見守っている。

 1年生だけではなく、2、3年生もいるため、そこから歓声が上がる。

 俺が暁を見ると、メガネをクイクイっと上げていた。

 クール&インテリ気取ってるのか、コノヤロー!

「おい、メガネ。この前は負けたが、今日は勝たせてもらうぜ」

「ふっ、望むところだ」

 お互いににらみ合う。漫画だったら、火花出てますよ、これ。

「今回は決闘のルールにのっとります。各自ペンは2本。替えのインク、芯は持ち込み不可。制限時間は十五分。どちらかが戦闘不能、戦場離脱、インク切れになった場合、負けとなり決闘終了とします。また、グラウンドに結界が張ってあるので、怪我の問題はありません。以上です、2人とも質問は?」

「ないです」

「問題ありません」

 まあ、いつも通りだな。

「それでは三十秒後にスタートします」

 静かに時が過ぎていく。

 俺は気持ちのよい緊張感の中、武者震いをしていた。

 ポケットから赤色のペンを出し、左腰にもってくる。

 そして、抜刀するように左手でキャップを、右手でペン本体をもつ。

 メガネ……暁をみると、右手に緑、左手に黒のノック式ペンを持っていた。

「カウント5、4、」

 何回経験してもこの緊張にはなれないな。

「3、2、」

 生徒もカウントに参加する。

「「「「1、」」」」

「スタートです!」

 織田校長の合図とともに、俺とメガネは言いなれたスペルを言う。

「「リリース」」

 同時に俺はペンをキャップから抜く。すると、キャップは消え、ペンは赤色の日本刀に武器化した。

「「おぉ!」」

 1年生が歓声をあげた。これが武器化である。

 メガネはペンをノックする。同時に長さの違う小太刀になった。少し黒の方が長い。

 俺は走って間合いをつめる。

「オォォォォォォォォ!」

 一気に刀を振り下ろす。

 メガネは黒の小太刀で防ぐ。そして緑を使って斬りかかってくる。

 俺はギリギリでかわし、左手一本で突きを繰り出す。

「あまい」

 そう言ってメガネは緑の小太刀で防いだ。いや、正確には刃を使って力を横に逃がした。そしてさっきより長い黒の小太刀で斬りかかってくる。

「そうくると思っていたよ」

 俺は空いた右手を使って、黒の小太刀をもつ左手首を握る。

 メガネの表情が一瞬曇った。その隙を俺は見逃さない。

 刀を左から右に水平に振る。

 メガネは真上に跳んだ。

「イッツ ア チャーンス!」

 俺はにやりと笑って、上から降りてくるメガネに狙いを定める。

 得意な、居合い斬りの型をとる。

 俺の勝ちだ!

 ……だが、そんなに上手くはいかない。

「切り裂け」

 メガネがそういうと、風が発生した。

 その風は、メガネを大きく後方にとばした。そして着地する。

「へ~、緑にそんな使い方があったとは。知らなかったよ」

「頭を使うんだな」

「なんだとー!」

 歓声が沸く。

 ここで一旦攻防戦が止まる。

 ふと1年生を見ると意味不明な顔をしていた。

「織田校長、解説を入れてあげてくださいよ」

 メガネがそう言うと、校長が従った。

「確かにそうですな。さて、諸君。今の現象についてだが、これは色がもつ属性だ。それぞれの色にはそれぞれの属性があります。また、大きく色は、赤、緑、青、黄、黒、白、炭に分けられます。そして、属性発動にも武器化時と同様スペルが必要です。今回暁君が使った緑では、風を発生されることが可能です。まあ、詳しくは授業で習ってくれ」

 地味に、覚えるの面倒なんだよな~。

「さらに、相性もあるので、注意して2本を選ぶ必要があります」

 ん、なんか忘れてる気が……。

「そうそう、属性発動とともにインクの減りも激しくなるので、そこはバランスよく使ってください」

 それだよ。

 さて、メガネはまだ風を発生させている。風はなんでも切り裂くことが可能。このままでは俺の刀は折られてしまうだろう。そう、このままでは。

 だから俺も言う。

「燃やし尽くせ」

 すると、刀からたちまち炎がでてくる。

 インク消費を考えて、炎をおさえておく。

「赤は緑に強い。緑を選んで運が悪かったな」

「だからこそ、黒を選んだんだぜ?」

 そう、黒白炭は赤緑青黄に耐性がある。だが、無敵というわけではなく、赤緑青黄で2色同時、もしくは同じ色2本で攻撃すればよい。まったく、上手いシステムだ。

 俺は、メガネが黒のスペルを言う前に、緑を破壊しようと思い、全力で間合いをつめた。

 炎を全力でだし緑に斬りかかる。

 だが黒で防がれた。

「拒め」

 そう言うと、黒の小太刀の周りに『闇』が生まれた。

 そして炎が吸収された。

「やられた!」

 そして周りで沸く歓声。

 俺は再度間合いをとった。そしてしばらく考えて違うスペルを唱えた。

「リバース」

 刀を鞘に収めるふりをしながら唱えると、赤のペンに戻った。

「諦めたのかい?」

「うるせー、メガネ。そんなわけあるか!」

「はいはい、仲良く仲良く。リバースと唱えると、武器化したものが文具化します。これも大切なので覚えておいてください」

 解説がはさまれた。

 俺はポケットから、白のペンをだした。

 そもそも、白のペンなど見かけないので、探すのが大変である。

「はぁ~、ここで使うとまた買いに行かないといけないじゃねーか。まあ、それで勝てるなら安いものか」

 俺はメガネのほうをむいて笑いながら唱える。

「リリース」

 純白の日本刀になった。

 白は黒に強い。そして緑にも強い。

 現時点、俺とメガネの4本で最強なのは白ということである。

 もし、黒と緑のインクが満タンならば白の攻撃を防ぐことができたかもしれない。

 けれど、2つのインクは減っていて、さらに白は満タン。これ以上無いほど優勢である。

「一気に決める!」

 間合いを詰める。

「放て!」

 スペルを発した瞬間、純白の日本刀が神々しく光った。

その光に2本の小太刀は包まれ、わずかな抵抗もむなしく折れた。

 それはつまり戦闘不能をあらわす。

「勝負あり。勝者、片桐優人」

 大きな歓声とたくさんの拍手が俺たちに送られた。

 俺は正直ホッとしている。

 よかった、白選んどいて。

「これでこの前の借りを返したぜ、メガネ」

「ふっ、これで20勝20敗3引き分け。次の勝負が楽しみだな」

「まあ、次も俺が勝つけどな」

「それはわからない」

 そう言って左手でメガネをクイっとあげて、右手で握手をした。


 結界からでるとかすり傷が治った。

 そして、校長が閉めの挨拶をした。


   ** *


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