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15-苺-  作者: 悠-haruka-
1/2

【1】

 

4月9日。



今日はいよいよ李華(リンカ)高校の入学式。


俺は今日、晴れて高校生になる!


真新しい制服に腕を通し、初めての知らない世界へと踏み込んで行く。



初めての建物。


初めての匂い。


初めての人。



緊張、期待、不安、楽しみ。


色んな気持ちが入り混じって、ムカムカと吐き気がする。




 

「それにしてもなんだろうこれは…」



校舎の入口を目指し足を進める。



「歩いても歩いても前に進まない!なんで校門から玄関までの道が、こんなに長い!」


「まぁまぁ、落ち着こうぜ。こんな有名な金持ち学校なんだ、敷地が広くて当たり前!どこに移動するにも距離が長くて当たり前!なっ?」 


「やっぱり俺は普通の高校が良かったー!しかも中学も男子校で高校も男子校って、なにが悲しくてこんなむさ苦しい…」


「だぁーから、そんなこと言ったって今更だろ?家が金持ちで、中学もあの金持ちの聖華(セイカ)中学校に通ってたら、高校は嫌でもここか華美(ハナミ)しかないしな。それにここはイケメンが多いらしいから大丈夫、むさ苦しくないぞっ」



そう、俺たちが通うのは金持ち学校。


金持ちの人ばっかりが通う学校だ。


敷地は言うまでもないが、バカでかい。



中学のときから金持ち学校の聖華中学校に通う生徒たちの高校は、自動的にこの李華高校か、姉妹校の華美高校の2択になる。



そして何故か男子校。


イケメンが多いとかそんなことは知らない。


気にくわない!


イケメンって言ったって、俺だって男なわけだし。


ときめきがないだろ?!



 

むすっと膨れる俺を宥めてくる(シュン)



春は幼馴染みで小さい頃から仲がいい。



人懐っこくて周りに人が集まりやすい、いつも春の周りは友達で賑わっているような、人気者タイプだ。



運動できるし勉強できるしおまけに見た目もいい。


背は俺と同じで165cmくらい。と、男子にしては少し小さめかな。


それでもそれ相応にバランスがとれた体格。



元々色素が薄い髪の毛は、明るい綺麗な茶色で、少し長め。


切長の目に長い睫毛、スッと通った鼻筋、薄く形のいい唇。


いわゆるイケメンってやつだ。


完璧なんだよなぁ。




 

中学2年生のころだったか記憶は定かではないが、言ったことがある。



「春はいいよなぁ。運動も勉強もできて、おまけに格好よくて、いつも周りには人が集まってくる。羨ましいぜほんとっ」



身長は変わらないにしても、俺は華奢な体つきだし、顔だって格好よくないし、ちょっとコンプレックスだった。



春になりたいぃ〜と言うように、べたーっとくっつきながら言うと、春は少し照れたように笑いながら言った。



「ありがとう。幼馴染みにそんなこと言われるなんてなっ。でも…」


「ん、でも?」


「俺は(ウミ)のほうが人気者だと思うな」


「へっ?どこがだよっ」 


いきなり予想外なことを言われて、声が裏返った。



 

「その様子じゃ自分では気付いてないみたいだけど、海は可愛いんだよな。」



べたーっとくっついた俺を剥がして、ポンポンと頭を撫でながら春は言った。



可愛い?!俺がっ?


俺、男なんですけどっ!



一人難しい顔をして考える俺に春はビシッと指をさして言う。



「そのお母さん似のくりくりした大きい目!通った鼻筋に綺麗な白い肌!俗に言う女顔!」



うぅっ…母さんの遺伝子をしっかりと受け継いだこの中性的な顔、結構気にしてたのに…



そして俺の髪の毛をツンツン引っ張りながら一気に言う。


「この、お父さんと同じ漆黒の髪の毛!真っ黒だけど柔らかくてふわふわだ!少しの風でも綺麗にサラサラなびく!白い肌と漆黒の髪、互いに引き立てて見た目は美形!運動も勉強もできなくないだろ?」



 

うん、この父さん譲りの髪の毛は自分でも好きだ。


柔らかくて触っていて気持ちいい。


だからあまり短くしないで伸ばしてる。


でも春のような明るい茶色も羨ましかったりする。



運動も勉強も、確かに平均よりは少しできるくらい。



「でもさ、俺の周りには春みたいに人が集まってくるわけじゃないぜ」



春の1番の羨ましい部分が俺にはない。



「あー、綺麗だから近寄り難いんだよ、海は。」



…はい?


なんですかそれ…



意味がわからないと言うように、眉間に少し皺を寄せていると、春は続けて言った。



「だってクラスのやつらが言ってたぜ?」


「……?」

 

俺はその先の言葉を待つ。



 

神絵(カミエ)、中学はいってすぐの頃より、すごい綺麗になったよな。綺麗だから近寄り難い。触れたら壊れそうだ。ってな。」



「はっ?なんだそれ!」


本当に意味がわからない。


触れたら壊れそう?


どんだけ儚き美しいもの扱いしてんだよっ!


この俺を!男の俺を!



「いや、真面目な話。陰で海を好きってやつは、少なくないんだぜ。襲われんなよなっ?」



……驚愕。



「すっ、好きって!?男だろっ?!俺も男だ!」


しかも襲われ……ッ



嫌な考えを振り払おうと、一人青くなって頭を左右に振る。



そんな俺を、ニヤニヤと可笑しそうに笑いながら見てる春。 


他人事だと思って!


悔しくて春を睨みつける。



「ほら、そんな顔しても怖くないんだって!目が可愛いからなっ」



頭をポンポン撫でながら楽しそうに笑う春。



悔しい…


身長は同じなのに、頭撫でられるし!


可愛いとか言われるし!


そんな笑った顔も、春は格好よくて羨ましいし!



なんていろいろ考えながら俺は春をむーっと睨み続けていた。




そんな会話したこともあったな〜‥


と、過去を振り返る。



俺は陰でそんなこと言われてたみたいだけど、今思えば春もクラスのやつらにいろいろ言われてたな。



相澤(アイザワ)と付き合いてぇ〜。」


とか。


「春くん格好いいっ!抱いて欲しい!」


とか。



おいおい、抱いて欲しいっておかしいだろ…


今更ながらにつっこむ。



「…いっ、海。……ぞっ」



ん?なんだって?



「おいっ、海!聞いてんのかっ?」


「…ぁっ、えっ?何?」



まったく…。と溜め息をつく春。



「着いたぞ、って!」


一人過去を振り返っていたら、いつの間にか玄関に辿り着いていたらしい。




「でっ、かいなー…」



今俺たちの目の前にある玄関が、バカじゃないかってくらいでかい。



「ほんと、さすがだなっ。まあとりあえず行こうぜ」


春はそう言って校舎へと入って行く。


俺も後を追って校舎に入り、入学式が行われる体育館へと向かった。



いよいよ入学式が始まる。


新しい生活が始まるんだ。




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