WAND
魔法道具WANDが一般的な世界で
活躍する女子高生社長日向
彼女の会社に事件が起こる
ここは科学ではなく魔法が発達した世界
と言っても街並みは高層ビルが立ち並び
道も綺麗に舗装されているのだが。
「ひったくりよぉ!誰かぁ!」
海辺で鳥が人間の持っている食べ物を奪うがごとく
歩いていた女性からバックをひったくり
空へと舞い上がるホウキに乗った男。
「へへっ、ちょろいもんだぜ」
さっさと安全な所まで逃げて
獲物を確認しようとしていると
「待ちなさい!」
後ろから追ってくる少女の姿
魔法の杖の横に棒を取り付けた
トンファーや松葉杖に似た2本の杖で空を飛び
ひったくりを追跡している。
「へっ!こいつは最新型だぞ(盗んだやつだけど)
追いつけるわけないだろ」
彼女は左にコースを変えたかと思うと
弧を描くように再び元のコースへ
そしてひったくりの横から突っ込み飛び蹴りで
近くのビルの屋上に叩きつけた!
ドン!ダン!ゴロゴロ……ドン!
屋上への出入口にぶつかりようやく止まり
少女も屋上へと降り立った
「バカな!最新型の全速力に
追いつけるわけがない!」
「確かにあんたの《シルフ》は最新型だけど
街乗り用のスタンダードモデル 、
私の《ガルーダ》は2世代前だけど
プロレーサーも使うハイエンドモデル、
元々の性能が違うのよ」
「くっ!」
男は腰に着けている収納ケースの3番のボタンを押した
さっきまで使っていたホウキが5番のケースに収納され
3番のケースから新たに銃の様な物が現れた
「炎のWAND《アグニ》か」
WAND、昔は魔法の杖を指す言葉だったが
今では魔法道具全般を表す名称だ、
「くらえ!」
アグニから火の玉が撃ち出された!
びゅおぉぉぉっ!バシュ!
火の玉は彼女の周りに現れた風の壁に当たり
粉々になって消えた。
「飛行WANDは風を操る、
そんなものが通じると思ったの?」
そこにようやく警察が到着
「やっと来た」
「ご協力感謝します!」
「それはいいから早く《メモレット》出して」
メモレット:情報の記録用のタブレット型WAND
任意で記憶のコピー&閲覧も可能
少女はメモレットを額に当て少しして
「はいさっきまでの事は全部入れたから」
警官はその場でメモレットの記録を確認する
記憶をコピーすることで
取り調べや事情聴取の手間を省き
拘束時間を減らせるのがこのWANDの利点だ。
改ざんも出来ないので証拠能力も高い、
「見たところ問題はありませんね」
「じゃ急ぐから」
少女はそう言うと飛び去って行った 。
「陽向社長、工場拡張の件ですが」
「それは任せるわ」
「社長新作WANDのテストが…」す
「後で行く」
私は神崎陽向17歳にしてWAND開発最大手
majicaの高校生社長、
「社長、今日は遅かったですね」
「ひったくり見つけたから捕まえてたの」
「そんな虫取り感覚で
危ないことしないでください!」
「それで、今日の予定は?」
「会議が2件、WANDのテスト、
社内コンペの審査です」
「じゃ、ちゃっちゃと片付けよ」
「これが新作のWANDで
火・土・光の魔法が使えます」
「多動式ね、なるほど」
WANDには1つの魔法だけ使える単動式と
複数の魔法が使える多動式がある、
多動式は複数の魔法が使えるのが利点だが、
一つ一つの魔法の出力は単動式に劣る。
「これは多動式ながら単動式に匹敵する
出力を出すことを可能にすることを
コンセプトにして開発しました」
陽向は開発者から杖を受け取ると
1のボタンに触れながら魔力を込め
的に向けて構え発動させると
野球ボール大の火の玉が撃ち出され
的に当たって弾けた。
おぉっ!感心する声が聞こえる
「コレ魔力消費が大きすぎるわね」
WANDには魔法を入れられるメモリー容量があり
使用容量のサイズが大きい魔法ほど
少ない魔力で大きなチカラを発揮出来る
多動式が単動式に出力で劣る理由がこれだ、
WANDの容量を増やせば多動式でも
高い出力が出せるがそれでは制作コストがかさみ
販売価格も高くなってしまい流通にはのせられない。
「なのでブースターをつけて……」
「ブースターを載せてこれ?
私の魔力を目いっぱい込めてあの威力、
単動式なら今の10倍は出てるはずよ
おそらく魔力伝達系に問題があるのね」
「では改良してみます」
数日後
陽向が会議に出ていると
ドガァ!
轟音と共に社屋が揺れた
「何?何が起こったの?」
「社長!大変です1階にとんでもないものが!」
「とんでもないもの?」
その頃の1階
「なんだこれは?」
そこにいたのは丸っこい体の巨人
全体がツルツルして飾り気は無い、
「搭乗型か遠隔操作型のWANDか?」
「とりあえずアレを止めるぞ!」
「はい!」
警備員達が一斉にWANDで攻撃するが
全て効果無し。
「対魔法装甲か」
「なら私がやる!」
そう言ったのは偶然、今外から戻ってきた
開発部長と部下
腰の収納ケースの2番のボタンを押すと
龍の模様をあしらった拳法着型のWANDが
彼の身を包んだ。
「この身体強化WANDは
魔力を込めるほどその効果が増す、行くぞ!」
そう言って魔力を込めると巨人に突っ込む!
その拳は分厚い鉄板もぶち抜ける
しかし… ガン!
「うっ!」拳を抱えしゃがみ込む開発部長
確かに攻撃する前にWANDに魔力を込めた、
WANDの効果で体は守られているので
固いものを殴っても痛くないはず
しかし開発部長の拳は巨人を貫くことは無く
拳を痛めてしまった。
『無駄だ、こいつの装甲は魔力を吸い取る、
魔法は効かん!』
魔力が無ければWANDは機能しない
「触れた瞬間にマルスに込めた魔力を
全て吸収するとは、なんて吸収効率だ」
「なるほど魔力吸収装甲か
触れた魔法から魔力を吸い取り
大気中に放出するシロモノね」
「社長!」
「危険です!下がってください!」
陽向はそんな声に耳を貸さずに
巨人の前に立ちはだかった。
『お前がここの社長か、
いくら魔力が強くともこいつには
手も足も出まい』
「それはどうかしら」
陽向は収納ケースの4番のボタンを押した
出てきたのはタクト型のWAND
それを巨人の頭の上を指し示すように掲げると
巨人の頭の上の空間が歪み
ずずーん!『うおっ!』
歪んだ空間から巨大なドラゴンが落ちてきた!
とっさに受け止めるが
ドラゴンの下から 逃れるすべがない。
『うっううっ』
「魔法は無効化出来ても物理攻撃は防げないでしょ」
陽向が使ったのは召喚魔法WAND
出現した召喚ゲート自体を消されたら無理だが
召喚出来れば無効化は不可能。
『こんな……ことでぇ…』
「ジャンプして」
ぴょん!ドゴッ
バギバキ!ズズーン!
ドラゴンがジャンプして巨人に追い打ちをかけると
巨人の全身にヒビが入り崩れ落ちた。
『くっくそお.……』
どうやら運良く潰されずに済んだようだ
日向はドラゴンを送還しWANDを収納した
「さてこんな事した犯人の
顔を拝ませて貰おうかしらね」
シュッ!トスッ!
突然日向の足元にナイフが飛んで来て
床に突き刺さった。
「……動け……無い……!」
日向は必死に手足を動かそうとするが
全身固まったみたいに
ピクリとも動かない。
「無駄よ、そのWANDは
刺した影の持ち主の動きを封じるから、
それにしても……あんたもうやられちゃったの?」
『お嬢様………申し訳ありません』
そこにいたのはリュックを背負った
日向と同い年くらいの少女。
「誰?貴女」
「アタシは魔具堂店主刈谷菜穂」
「社長、確か同業の老舗です、去年代替わりして
先代の娘が跡を継いだとか
ただ近年業績は下がる一方みたいですけどね」
「最後のは余計よ!」
「で、その魔具堂の主人がウチを襲撃するなんて
なんのつもり?」
「襲撃はただの陽動だったんだけどね」
そういえば彼女は階段の方から現れた
「……上で何してたのかしら?」
「気づいた?おたくの保管庫にある
WANDをいただいてきたのよ
これをコピーして売り出せば
うちを立て直せるわ」
「保管庫!?発売前の新作を置いてあるんだぞ!」
「逃がすもんですか……くっ……う…ごけぇ!」
しかし日向の身体は意思に従おうとしない
「そうか!あのナイフを抜けば!」
警備員がナイフを抜こうとするが
バリバリ!「アウッ!」
「無駄よ、それは使用者以外には抜けないわ
ほら、あんたは早く出てきなさいよ!」
『す、すみませんドアが歪んでて』
「なんか手は無いのか?」
「………!そうだ部長これを使ってください!」
そう言うと部下がバックから取り出した
杖型のWANDを部長に渡した
「これはこの間の」
「改良したんです、今日社長に
もう一度見てもらおうと思って、
部長の魔力は僕より強いですから、
3番を使ってください」
部長は3番のボタンに触れながら魔力を込める
「社長!目をつぶってください!」
WANDの光魔法が周囲を照らし
日向の影の向きを変えた!
「社長!今ですナイフから離れて!」
ナイフの効果から開放された日向は
ナイフから距離をとる
そしてケースの六番のボタンを押した
すると日向の体が氷をイメージさせる
色のドレスに包まれた
氷系最強WAND《極寒地獄の女王》だ。
「これで終わりよ」
日向が菜穂に手をかざすと
床から伸びてきた氷のつるが菜穂の四肢を捉えた!
「くっ…こんなものぉ…」
「無駄よ、それはプロレスラーでも
引きちぎれないから」
「くっ!こんなことで魔具堂の立て直しを
諦める訳には………」
日向は菜穂に歩み寄ると
彼女のリュックの中を漁り始めた
「ええっとコレとコレ、·····後はこれかな」
いくつかのWANDを取り出すと
菜穂の拘束を解除した
「中に残ってるWANDは
持ってっていいわよコレは返して貰うけど」
「………なんのつもり?」
「あそこに置いてあったのは
発売前の新製品だけじゃなくて
改良待ちの欠陥品もあるの」
「もしかして………欠陥品やるから
諦めろってこと?」
菜穂の言葉に日向は首を振る
「あそこに置いてたのは欠陥品の中でも
上手く改良出来れば役に立つものよ、
改良できたらそのWANDの権利は
貴女にあげる、魔具堂で売ればいいわ」
「·····っく、施しなんて」
ばこっ!巨人のガレキの中からようやくドアを開け
アラサー位の年齢と思われる男が這い出てきた
「お嬢様、向こうの申し出を受けましょう」
「な、何言ってんのよ!」
「これはmajicaの技術を知るチャンスです!」
「それに、うちの新作をコピーして売るなんて泥棒みたいな真似、老舗のプライドが泣くでしょ?」
陽向は不敵に微笑みながら、菜穂に手を差し伸べた。
「その『欠陥品』、中身は筋がいいのよ。ただ、うちの量産ラインには乗せられないほど調整がシビアなだけ。職人気質の魔具堂なら、案外化けさせられるんじゃない?」
菜穂は悔しそうに唇を噛み、陽向の手を払いのけるようにして立ち上がった。
「……言われなくても、あんたたちが匙を投げたガラクタ、最高の一品に仕上げてみせるわよ! その時は、覚悟しなさい!」
「楽しみにしてるわ。……あ、お巡りさん。残りの事務処理は任せてもいいかしら?」
陽向は、いつの間にか現場に到着していた警察官たちに、慣れた手つきで《メモレット》を差し出した。
数日後:majica 本社社長室
「社長、例の魔具堂ですが……」
秘書が困ったような、それでいて感心したような顔で報告書を持ってきた。
「どうしたの?」
「盗ませた……いえ、お渡しした欠陥品のWAND、一週間で改良を終えて限定販売を開始したそうです。特定の魔力波形を持つ人にしか扱えない極端な仕様ですが、一部の専門家から絶賛されています」
陽向は窓の外、高層ビルの間を飛び交う多くのホウキ(WAND)を眺めながら、満足げに鼻を鳴らした。
「いいじゃない。最大手のうちが作るのは『みんなのための魔法』。でも、それだけじゃ世界はつまらないでしょ?」
彼女はデスクに置かれた新型の設計図に目を落とした。そこには、先日改良された多動式WANDのデータが、以前よりも遥かに高い出力効率を示して並んでいる。
「さて、うちも負けてられないわね。次は『魔力吸収装甲』を逆手に取ったエネルギー還流システムでも組み込んでみようかしら」
若き天才社長の瞳には、科学を超越した魔法の未来が、数式と魔法陣の混ざり合った新しい輝きとして映っていた。
見た目は現代日本でも魔法世界
そんな世界を書いてみました




