9 好きならわたしの言うこと聞けるよね?
ずっと胸に秘めておこうと思ってたけど、そうも言ってられなくなった。
このカード切らないともうゲーム終了しちゃう。
あたしが切り出すと、未優の頬がピクっとひきつった。
ポーカーフェイス……かと思えば、耳がだんだん赤くなっている。
いける。効いてる。これはまだ逆転ある。
「……気づいてたんだ」
「そうですぅバレバレですぅ! 未優そんないじわるばっかり言って、ほんとはあたしのこと好きなんでしょ! ねえ! ねえねえねえ!」
ここでふたたびYandere発動。
未優はヤンデレ女に迫られた主人公のようにうろたえるかと思いきや、堂々と言い返してきた。
「みさきの見た目は文句ないの。つい寝込みを襲いたくなっちゃうぐらいには」
「何を開き直っとるか」
「だけど、中身がぜんぜん駄目。かわいくない」
そんなこと言われても、あたしってべつにかわいさで売ってないし。
かわいいよりもかっこいい寄りだし。
「わたし、おしとやかでかわいい子が好きだから。みさきがもっと女の子っぽく、かわいくなったら、考えてあげる」
そういって未優はまた笑った。
妖艶、とでもいうべきか、余裕たっぷりな笑みだ。底が見えない。
なんだか背筋がゾクっときた。
あたしのYandere(笑)なんて目じゃない。本物感ある。
「い、いやでも、もっとかわいくなったらって、あたし十分かわいい女の子じゃん。スーパー美少女じゃん」
「かわいい女の子は自分でそういうこと言わないから」
「っていわれても、具体的になにをどうしたら……」
「わたしの言うこと黙って聞いてればいいから。全部わたしの言う通りにして?」
「全部言う通りって、そんな⋯⋯」
「わたしのこと好きなら、わたしの言うこと聞けるよね?」
あたしの顔を覗き込むようにして、挑戦的な瞳が近づいてきた。
そうやって言われるとなにも言い返せない。黙っていると、肯定と取ったのか未優は人差し指を立てて傾けた。
「んーとじゃあ~~⋯⋯まず俺って言うの絶対禁止ね?」
「それはとっさに出ちゃうんだから、しょうがないじゃん」
「ていうかこれ、ずっと前から言ってるでしょ? ……ほらその足! 開かない!」
未優はぴっとあたしのふとももを指さした。
スカートから伸びた足がだらしなくあぐらをかいている。
慌てて膝を閉じると、未優の視線が突き刺さってくる。
「あとなんか、みさきプールみたいな匂いするんだけど⋯⋯」
「そりゃあ、プール入ったからね」
「……なんで? なにしてるの?」
怒られた。
でもあたしがそんな自暴自棄行為をしたのも、もとをたどれば未優のせいだ。
「だって未優が寝取られたと思って……。もうちょっとでサッカー部のやつに処女奪われるとこだったんだよ?」
「だからそういう変なのもやめて? なにしてるの本気で」
「だって未優が……」
「だってだってって、言い訳しない。まずわたしに逆らわないのは絶対条件だから。わかる?」
「逆らわないって、それ……なんか、あたしが罰ゲームみたくなってるじゃん」
「ふぅん、嫌なんだ? みさきがわたしのこと好きって、その程度なんだ」
「そ、そんなことないし! 好きだし!」
前のめりに訴えると、未優の口元がにんま~りと上がっていく。
あたしの頭に手を乗せて優しくぽんぽんしてきた。
「そうだよね、好きだよね~? そういうのでいいの、いい子いい子」
今のがいいと言われても全然わからない。
未優の言うかわいい女の子って、完全に未優のさじ加減次第では。
「この髪ももっと長いほうがいいかな~」
にしてもあの未優にしては珍しく饒舌だ。ついに本性を見た気がする。
全部言いなりとかって、まずいやつなのでは⋯⋯?
けど頭を撫でられるの気持ちいい。安心する。
ついさっきまですさんでいた気分が嘘みたいだ。
「ねえ、さっきから黙ってるけど、返事は?」
いけない、頭ナデナデが心地よくて軽くトリップしかけていた。
ごちゃごちゃ言ってるけど、なんだかんだで未優もあたしのこと好きに違いない。
ほんとにその気がなかったら、こんなめんどくさいこと言うはずないし。
「わかったよ、とりあえず言う通りにすれば、NTRだけはなくなるんだよね」
今回のことで悟った。
いやむしろキミ素質あるよとか言わないでほしい。病みさきルートのほうが面白そうとかないから。
あたしの考えを見透かしたかのように未優は笑った。
「う~ん、でもそれはみさき次第かなぁ? わたしのこと、好きなんでしょ? なら、わたしがよそに見向きもしなくなるようになってみせて?」
かつてないほどにイキイキとしている。
まったく素直じゃないんだから。けど得意げな未優もかわいい。
あたしが一方的に言いなりになるなんてありえないけど、ここはひとまず話に乗ってあげるとするか。
「ふっ⋯⋯見てなよ未優、すぐに俺以外目に入らなくなるぐらい惚れさせてあげるよ」
「だから俺って言うなって言ってるでしょ」
これまではあたしなりに配慮があったのだ。未優は普通に男が好きだと思ってたから。
でもそうじゃないなら、もう気兼ねする必要はない。
「え~でもそしたら、みさきのかわいいとこいっぱい見れるのかなぁ? 楽しみ~」
能天気に拍手なんてしてくる。
未優にしてみたら、うまいことあたしを手玉に取ってやった、ってとこなんだろうけど。
この流れ、こっちはこっちで逆に利用してやろう。
策士策に溺れるというやつだ。
ここはスーパーイケメン美少女のあたしがちょっと本気出して、このひねくれ女を軽くデレッデレに落としてやるとするか。