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6 NTRフィニッシュ

 瑠佳とは連絡先も交換し、仲良くなった。

 今度家に遊びに行く約束もした。早くもるかたんみさきんの仲だ。


 が、なんかめっさ疲れた。

 いつも話さない人と話すと気疲れする。

 あと微妙にテンションが合わない……というか、向こうが素直に陽すぎてまぶしくなってくる。


 あれもいいこれもいい、かわいいかわいい! って延々やってる感じ。

 ふぅん、まぁ、かわいいけど……それ、加工してるんでしょ? ってやるのがあたしと未優。


 真理をついてしまうのだけど人生が楽しいのはきっと瑠佳タイプ。

 あたしらってやっぱ陰キャでは?



 結局未優とは一言も話さないまま、放課後になった。

 いつもはこっちから「帰ろー」と未優のとこに行くんだけど、あたしは自分の席で窓の外をながめてたそがれていた。


 ななめに夕日を浴びて、憂いを含んだ表情をする美少女。絵になる。

 しかしその脳内は、


 露骨に避けちゃった手前自分からいくのやだなー。未優怒ってるかなー。どうだろうなー。未優から来てくれないかなー。もしかして彼ピッピとやらと一緒に帰るのかなー。放課後デートとかすんのかなー。


 などと低レベルな雑念にまみれていた。


 いくら待てども声はかからなかった。

 あたしはおそるおそる、こっそり、未優のいるうしろの席を振り返った。

 

 いない。空席だ。あたしを置いて帰りやがった。

 きっと彼ピを選んだんだ。デートだ。


 もはや悠長にたそがれていられなくなったあたしは、勢いよく立ち上がった。雑念を追い払うため、とにかく体を動かすことにした。


 野球部に混じってノックを受けてきた。

 もっと強く! 強く! と要求してドン引かれた。

 マネージャーになってよ、と鼻息荒く誘われたけどエロ漫画みたいな展開になりそうだったので断った。


 ヤリチンが多いというサッカー部と処女をかけてPK勝負してきた。

 負けそうになったけど最後は相手が焦って枠を外してくれた。雑念が邪魔して球を蹴りにくかったらしい。マネージャーに以下略。


 下着でプールに飛び込んで100メートルぐらい泳いできた。

 水着ですと言いはったけどスケスケだった。水泳部の男子はみんな前かがみになりながらこそこそしていた。あたしより恥ずかしがっているのが不思議だ。



 


 運動不足気味だったのがたたって、自宅のマンションに帰ったときには満身創痍だった。

 あたしはベッドにダイブしてうつ伏せになった。

 つかれた。もうなんもしたくない。


 でもご飯用意しないとダメだ。

 プール入ったせいかくっさい。お風呂はいらないと。着替えないと。洗濯物溜まってる。ペットボトルのゴミが限界突破してる。

 

 おじいちゃんが入院し、母親はその面倒を見にちょっと前から実家に戻っている。

「一人でだいじょうぶ?」と言われて「よっしゃあ! 自由だ!」っていったらひっぱたかれた。

 

 一人暮らし基本的には悪くないんだけど、たまにすべてがくそめんどくさくなる。

 そんなとき、うちの嫁がやってくれるんです。

 しょうがないなぁと言いながらやってくれる。

 けどもう嫁じゃなくなった。寝取られた。


 もしかしてこれって……あれかな?

 僕のほうが先に好きだったのにってやつなのか?

 失って初めて気づく的な。

 やっぱりあたしって、まだ未優のこと……。


 今ごろ未優は、どこでなにをしてるんだろう。

 もう家に帰っただろうか。それとも今まさに、彼氏とデート中なのだろうか。


 でも放課後にデートってなにをするのか、経験のないあたしには想像がつかない。未優は引きこもりの人混み嫌いだから、あんまり出かけたがらないし。

 

 そういえば放課後にカラオケがどうたら、という話をクラスメイトがしていたのを思い出した。なるほどカラオケ。

 ということは、彼氏と二人でカラオケに行って……。


 薄暗い部屋の中で、隣りあって座る。

 歌なんてそっちのけで、二人はいちゃつき始める。


『ちょっとダメだってば、こんなとこで……』


 自然と少女の体に手が伸びていく。

 

『あ、あっ……そこは、だめ、だって……』


 胸の膨らみを弄んだあと、指先は最も敏感な箇所へ滑り込んでいく。


『してあげるから……我慢。ね?』


 マイクの代わりにマイクによく似た硬いものを握る。


『え? なめてほしいの? ……うまくできるかなぁ』

 

 ……え、無理。本当に無理。

 興奮する。じゃなくて吐く。


 耐えきれなくなったあたしは、未優に電話をかけていた。

 サレ男がやってはいけない行動トップ3に入る暴挙だ。けどもうそんなこと言ってられない。


 ベッドの上で三角座りしながら、スマホを耳に当てる。

 おかけになった電話は、電波の届かない――プッ、ツーツ―。

 でNTRフィニッシュされるかと思ったけど、未優は普通に出た。出やがった。


「……もしもし? みさき?」


 出たら出たで焦る。

 どうしよう、こんなときどんな顔したらいいかわからないの。まあ電話だから顔なんてどうでもいいんだけど。


「い、今って、どこ……う、家にいる?」

「いるけど」

「それって、その、かっ、彼死? と?」


 発音が彼氏ではなく彼死になってしまった。

 つい心の内の願望が漏れてしまった。


 あたしの問いかけを最後に、沈黙が流れた。

 電話の裏で「しーっ! ちょっと静かに!」とかやってたらどうしよう。たっぷり間を取ったあと、未優の声がした。


「……ちがうけど? それが?」

「あ、そ、そっかぁ。そうなんだ……」 

「それで? なんか用?」

「いや、そんな用ってこともないんだけど……彼死と一緒だったら、邪魔したら悪いかなって思って」


 そこまで言うと、また未優の返事がとぎれた。

 かわりにかすかに物音がする。通話しながら、何かしている?

 いや怖い。この沈黙が怖い。


「……ほんとは一緒っていったら、どうする?」

「え?」 

「今一緒に、うちにいるよ」


 あたしの耳元と背後から同時に声がした。

 はっとして後ろを振り返る。スマホを耳に当てた未優が、あたしの背後に立っていた。


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