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美少女にTSしてはや数年。高嶺の花だった幼馴染が脈ありらしいので落としにいったら逆に言いなりになってました。  作者: 荒三水


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「いやお前彼氏おったんかーい! ってね」


 マックの二階の席で、あたしは宙に向かってツッコミを入れる。対面に座る未優が口元を手で抑えて笑った。


 瑠佳の用事がどれぐらいで終わるかわからない、というのと、時間もそれなりに遅くなっていたため、今日のところはそのまま解散となった。

 

 その後未優とともに駅前を軽くぶらついた。

 それから「夜ご飯どうする?」という話になって、未優が「てりやきハンバーガー食べたーい」というので、逆らわずにマックへ。


 たぶん昨日のあたしへのあてつけらしい。おかげで連続でハンバーガーを食べるはめになった。まあハンバーガーは好きだから別にいいけど。 


「だから言ったでしょ、そんなわけないって」

 

 途中ちょっと怪しい感じになった気もしたが、未優が心配していたようなことにはならなかった。当然だけど。


 彼氏のこと、瑠佳だって別に隠してたってわけじゃないだろう。

 まだ知り合って間もないのだ。あけすけにプライベートなことを話すほうがおかしい。


「わたしも本気で言ってたわけじゃないよ? 万が一そうだったらどうするのって話で」


 未優はくすくすと笑う。どうだか。

 けれどすっかり上機嫌だ。ちょっと気味悪いレベルで。

 未優はハンバーガーの包み紙をきれいに折りたたみながら、大きく息をつく。


「はぁあ、にしてもタイミング悪ーい」


 それずっと言ってる。

 というのは、あたしのスカートたくし上げが未遂に終わったことだ。


 コスプレ姿ももうちょっと楽しみたかったそうだが、瑠佳がすっかり真面目モードになってそんなノリじゃなくなったので、今回は空気を読んだらしい。


「みさき命拾いしたねぇ」

「なにそれ殺す気だったの」

「今日できなかったぶん、今度やってみせてね」

「今度とかないから。そもそも二度とあんなの着ないし。ていうか未優はあたしに勝ったわけじゃないんだから、見せる義理はないね」

「じゃあいいよ? 今度勝負する?」


 挑戦的な目つきだ。

 未優のゲームの腕前はそれこそ瑠佳以下。絶対あたしには勝てない。

 もしかして大乱闘ではなく場外大乱闘……別の勝負挑もうとしてる? 

 未優は軽く伸びをすると、口の中であくびを噛み殺した。

 

「ふぁ~あ……。今日なんか疲れたかも。帰ったらまずお風呂入って、ゆっくりしたいな」

「あれ、今日うち泊まるって言ってたのは?」

「うーん、やっぱやめようかな。疲れたし」

「え? あ、そ、そう? 別にあたしは……」


 あまりにあっさりなのでちょっと拍子抜けした。今日は泊まるという話だったので、ひそかに期待しちゃったりしなかったりしてたわけだけど。

 未優の目がじろっとあたしを見た。 


「エロ」

「……い、今エロい要素ありました?」

「昨日は『え? 泊まるの』って感じだったのに急に乗り気じゃん。瑠佳はダメそうだし、やっぱ未優にしとくかぁって感じ?」

「いや思ってないから! いい加減怒るけど!?」


 嫉妬だかなんだかしらないけど、冗談がすぎる。まったく。


「うそうそ怒んないで。本当は今日だって、わたしついてくる必要なかったかなって」

「やっぱり監視だったんかーい」

「けどまあ、いい動画もとれたし?」

「それさ、消してもらっていいです? あたし許可出してないからね? それもはや盗撮だよね」

「動画撮っていーい?」

「撮った後に言うな。スマホ貸して、消すから」

「やぁだ。だめ」

「かわいく言ってもダメ」

「え~やだぁ~~。ねえ、おねがい? だめぇ?」


 全力の上目遣い。

 ふーんいいじゃん。わざとらしく下手な演技をしてるけど、もうこういうのでいいんだよ。やればできんじゃん。

 あたしは自分のスマホを取り出した。

 

「じゃあおねだり未優と等価交換。カメラに向かっておねだりして」

「やだよばーか」

「この落差よ」


 負けじと未優がスマホを向けてくる。

 

「じゃあ、みさきが先におねだりしたらいいよ?」

「なにその搾取ループ」


 なんてやっていると、あたしの手にしていたスマホが振動とともに音を発した。

 着信している。瑠佳だった。


「もしもし? 今ってさ、どこにいる? もう家帰った?」

「いや、駅前のとこのマックにいるけど」

「あ、ほんと? 今から行くからさ、ちょっと待っててくれる?」


 言うだけ言うと、すぐに通話は切れた。

 





「さっき直接会って話してきて、別れてきた」


 しばらくしてやってきた瑠佳の第一声はそれだった。急いできたのか、少し息が切れている。瑠佳は二人がけの席の横に一つ椅子を持ってきて座った。


「ちょっと学校で話すぐらいで、別に好きとかってわけでもなかったんだけど。受験も終わってヒマで断る理由もなかったし、周りからもいいんじゃないって言われて、OKしたの。でも卒業して、学校もわかれちゃってさ、自然消滅気味になってて。もう一ヶ月ぐらい会ってなくて」


 瑠佳は息継ぎをするようにテーブルに視線を落とした。瑠佳が持ってきた飲み物は、ストローを刺してすらいない。


「遊びに行くって言っても、ちょっと買い物してゲーセン行ったりするぐらいで、べつに面白くないし、ドキドキもしないし。こうやってみさきたちと遊んでる方が、全然楽しいなって」


 とつぜん始まった瑠佳の一人語りを、あたしたちは黙って聞いていた。

 さっきまでとはうってかわって、あたしたちの席は静かだった。瑠佳の声が淡々としていたのもある。瑠佳を待っている間に周りのお客さんは減っていた。

 

 相手から告白されてなんとなくOKしてなんとなく付き合ってたけど自然消滅気味になってたからすっぱり別れた。

 っていうとこまではわかった。

  

 おそらく別れ話をしたであろう直後で、誰かに話したかったっていうのもわかる。

 でもそれだけなら、あたしたちじゃなくてもっと事情を知ってる友達とか、他にいそうなもんだけど。

 

 同じような疑問が浮かんでいるのが未優の表情からも見て取れた。

 瑠佳の話が一段落ついた後も、おかしな沈黙が流れる。やがてその空気に気づいたらしい瑠佳がぽんと手を打つ。


「……で、そう! なんでわざわざ来たかって言うと……」


 思い出したようにストローを刺して、飲料を一口吸い込む。

 瑠佳は勢いよく飲み物を置くと、あたしを見て言った。

 

「アタシ、みさきのこと、好き」



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