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美少女にTSしてはや数年。高嶺の花だった幼馴染が脈ありらしいので落としにいったら逆に言いなりになってました。  作者: 荒三水


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「待て待て待てぃ!」


 瑠佳の前にダッシュで滑り込んだあたしは、傘を横に構えてたちふさがる。

 ナンパ男二人はいきなり何だこいつみたいな顔であたしを見た。


「あっ、みさき!」


 ぱっと笑顔になった瑠佳が後ろからあたしの腕に抱きついてきた。  

 柔らかい感触が当たる。いい匂いする。

 などと気がそれつつも、あたしは男たちを睨みつける。


「うちの瑠佳になんか用?」

「あ、友達? 来たんじゃん、よかったじゃん」


 男の一人が笑った。まったく悪びれる様子もない。

 しかし瑠佳の様子からして嫌がっているのは明らかだった。こういう手合のあしらいには慣れてるかと思ったけど、怯えているようだった。


「きえろぶっとばされんうちにな」


 あたしは男たちに向かって中指を立てた。

 けど追いついてきた未優に「やめなって」と腕ごとおろされた。


「あはは、きみ面白いね?」

「顔ちっちゃ、足長いねぇ~」


 ナンパ男たちはゆるい笑みを向けてきた。

 何だてめぇゴラァ! みたいに来ると思ったのに展開が違う。値踏みするような視線をあたしたちに送ってくる。


「三人とも高校生? めっちゃ可愛いねぇ~。ヤバいじゃん美少女三人組」

「あ、ごめんね~こいつ変態で」


 あくまで友好的だ。苦手なタイプ。 

 ヤンキーマンガの不良みたいに「かわい子ちゃん遊ぼうぜぇ!」と強引に腕を取ってきたりしない。

 向こうから手を出してくれれば、この傘で牙突・岬式を食らわしてやれるのに。


「そしたらみんなでカラオケ行こうよカラオケ。全部おごるからさ。むしろお小遣いあげちゃおうかな!」

「お前それパパ活やん。ダメだよみんな、こういうのについてったら」


 おもんないタイプの漫才はじまった。

 え、だるっ。これ、聞いてないといけないの。


「いやでも全然、おごるから。ご飯食べてないならとりあえず……」

「あの、わたしたち用事あるんで。あんまりしつこいと警察呼びますけど」


 さえぎるように未優が低い声で言った。

 変な間があって、和やかだった場が一気に凍る感じがした。 

 

「は? なに? ノリわるっ」


 男の一人が未優を睨みつけると、舌打ちをして身を翻した。もう一人があーあ、みたいな顔をして、その後を追って去っていった。


「ふたりともありがとー! こわかった〜〜!」


 男たちの姿が見えなくなるなり、瑠佳が安堵の声を上げた。あたしの二の腕をぶんぶん揺すったあと、未優に近づく。


「未優かっこよかった! アタシちょっとびっくりした!」


 瑠佳はアイドルの握手会に来たオタクのようにはしゃいで未優の手を握る。

 いきなり手を取られて驚いたのか、未優は目を白黒させている。


「ギャップやばいね! なんか別人が乗り移ったみたいだった!」

「あはは⋯⋯わたしも怖かったけどね」

「かわいいね今日の未優の服~! めっちゃ似合ってるそれ!」

「あ、ありがと……」


 瑠佳をあまりよく思っていないはずの未優の頬に赤みがさす。

 あら微笑ましい。こっちも自然とニヤけてくる。

 

「え~でもほんとに未優も来てくれたんだ! うれし~~」


 未優も一緒のこと、事前に瑠佳にはメッセで伝えてある。

 反応は『え? ほんと? やった楽しみ~』だった。だから未優が想像しているようなことにはならない。

 

 手をにぎにぎされて、さしもの未優もあうあうになっている。

 陰キャがギャルに優しくされて声も出なくなっているとかそういうのが頭をよぎった。


 ……いやちょっと待って? 

 いくらなんでもベタベタしすぎでは?


 未優も未優で急になに? その嬉し恥ずかしそうな、まんざらでもない感じ。チョロインか?

 あたしのときはそんな顔しなくない? あたしには見せない表情してない?

 

 ……なーんてね。

 また軽くYandereっちゃいました。


 このぐらい全然なんとも思わないしまったく効いてないしちょっとぐらいしか。

 違うんだ。嫉妬とかそういう話ではなく、あたしは頭にきている。

 あの男たちにではなく、もちろん未優にでもなく、あたし自身に。


 未優に怖い思いをさせた自分が情けない。

 あたしがさっさと追い払っていればよかった。初手ヤ◯チャスタイルでいったのが悪かった。やっぱ道化だわあいつ。 

 

「……みさき、どうしたの?」


 一人で落ちていたあたしに、未優が声をかけてくる。

 あたしは未優の手を取って、ぎゅっと握ってあげる。


「怖かったね未優? だいじょうぶ?」

「え? べつに、だいじょうぶだけど……」

「ごめんね未優、あたしがすぐ傘で牙突しなかったから……」

「それはやんなくていいよ」


 あたしが肩を落としていると、未優はあたしの二の腕を撫でながら言った。


「みさきがいたから強気に行けたの。わたし一人だったら無理だよ、入っていけなかった」

「未優……」


 あたしは未優を見つめた。体に手を回して抱きつく。

 

「みゆぅぅぅう~」


 するとあたしのマネをした瑠佳が反対側から未優にひっつく。


「みゅゅう~~」

「みゅうぅぅう~」

「ふたりして変な鳴き声出さないで!」

 

 瑠佳と二人で未優を抱きしめてサンドイッチした。両側から体を挟まれ、みゆモンマスター未優は顔を真っ赤にする。


「も、もうわかったから、おしまい!」

「未優めっちゃ顔赤くなってる~かわいい~」

「だから近いってば!」


 瑠佳に頭ナデナデされて顔を覗き込まれ、未優はさらに動揺する。

 かわいい。

 

 ⋯⋯けど、ちょっと過剰反応すぎない? 

 そういえば未優ってかわいい女の子が好きっていってたよね? ってことは瑠佳も全然あるってこと? 瑠佳にNTRされる可能性もありってこと?


「みゆたん顔真っ赤にしてかわいいぞこのこの~~」

「みさきも、もうやーめーて」


 瑠佳に負けじと、あたしは未優のほっぺたを高速でツンツンする。

 負けられない戦いがここにある。

 

「やめろっつってんの、聞こえない?」

「はい、しゅみましぇん……」


 顎を握りつぶされながら引き剥がされた。

 あたしにはだいぶ当たり強い。けれどそれが仲良しの証でもある。まだまだあたしのほうにアドバンテージがある。

 あたしは「負けねえからな?」とライバルに睨みをきかせた。

 

「ん?」


 瑠佳はあたしの思惑などつゆ知らず、首を傾げてにこっと笑い返してきた。横でまとめた髪が揺れる。 

 ぐぬぬ、かわいい。


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