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美少女にTSしてはや数年。高嶺の花だった幼馴染が脈ありらしいので落としにいったら逆に言いなりになってました。  作者: 荒三水


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13 ノンデリオン

「スマホは個人情報の塊なわけですが? プライバシーの侵害ですが?」 

「では明日から不登校になりますがよろしいか?」

「いえ、すべて冗談です。それだけは勘弁してください」

「やぁだ。だめ。せんせ、怒っちゃいや」

「うえぇぇん、せんせいのいじわるぅ〜」





「ちっ、クソがっ!」

 

 あたしは職員室を出るなりそう吐き捨てた。

 授業中にスマホでマンガ読んでたら、教師に見つかって取り上げられた。よりによって担任に。


 授業が終わったあと職員室までつきまとって奪還を試みた。

 強気に出たら強気に返されたので、最後は媚びへつらいまくってなんとか取り戻した。


 無事スマホを取り返せた……はいいものの、「お前もこういうベタな少女漫画読むんだな」と笑われた。

 隣の席にいたちょっといいかなって思ってた若い女教師にも「そりゃそうですよ女の子ですもん」とかフォロー入れられて死にたくなった。


 はぁ、疲れた。

 とりあえずその場はあざとかわいいJKを演じて切り抜けたが……なにかもう屈強な男たちに凌辱でもされた気分だ。

 

 こんなことうちの親にチクったらどうなるかわかってるのかな? 

 自分の子に誰よりも厳しい逆モンペアぞ? スマホ解約されんぞ? 強めにぶたれるぞ? 

 あたしが。


 入学して3ヶ月もしないで授業まともに聞いてないのはやばすぎだろと思われるかもだが。

 あたしだって全教科そんなノリではない。ちゃんと相手というか、教科を選んでいる。このまえの中間だってそこそこいい点数取ってるから。やることはやってるわけ。

 いわゆるスーパー美少女頭脳による余力を持て余している状態なのだ。




 教室に戻るとあたしの席は占領されていた。

 ちびっこ女が椅子に横向きに座って、ごちゃごちゃ飾りのついたスマホを両手でぽちぽちしている。

 あたしは正面に立って声をかける。


「ノンデリオンただちに自分の席に帰投せよ」


 無視。

 あたしは脳天にチョップを落とす。

  

「莉音ちゃんハウス!」

「ん、なに?」

「どけっつってんの」

「ん~ちょっと待って~~」

 

 スマホを見つめたまま間延びした声を出す彼女の名前は皆見莉音みなみりおん

 通称ノンデリ女。略称ノンデリオン。

 身長も体重も小さい。態度はでかい。生意気におっぱいもそこそこでかい。 

 

 椅子の背もたれではなく、壁側に背をもたれるのがお気に入り。

 席の乗っ取りはたまにやられる。ここだと後ろからスマホ覗かれないから、とかいう理由だ。

 

 莉音はスマホをしまうと、あたしに向かって両腕を差し出してきた。

 ひっぱって、という意味らしい。子供か。

 腕を引っ張って莉音を立たせると、あたしは席についた。莉音はいきなりその場にしゃがみ込む。


「ま〜たそんな足広げて座って〜。おぱんちゅ見ちゃうぞ〜」


 この女、自分は覗かれたくないくせに人のものはいろいろ覗くという変態趣味がある。

 でもまあ、パンツぐらいなら別に勝手にすればって感じだ。

 今まではそんなノリでされるがままだったんだけど。

 

「ちょっとぉ、やめてよね!」


 未優に言われて昨日の今日だ。

 ここは足を閉じて女の子っぽく拒否ってみる。

 莉音は目をぱちくりとさせた。


「どしたの? 急に」

「いたって普通の女の子の反応でしょうが。自分がおかしいことを自覚しろ?」

「どしたの? 急に」


 壊れた機械のようにかぶせてくる。

 未優に怒られたからとか、もちろんそんな余計なことは言わない。


「みさきんスマホ返してもらったの?」

「まあね。あたしの話術をもってすれば余裕だよ」

「おぉ〜」


 莉音は感心したような声を出してあたしの机に座った。

 足をぶらぶらさせながら、またスマホを取り出していじり始める。邪魔。


 あたしはそっと莉音のスカートの裾を持ち上げて、膝の間をのぞいた。

 おぱんちゅは白だ。普通すぎて面白くもなんともない。


 ちなみに莉音はスマホに夢中で気づいていない。皮膚の感覚なしか。よほど集中しているらしい。

 まあ別に女同士だし見てもセーフでしょ。


「ねえねえ、見てこれ。かわいくない?」


 莉音は急にスマホを差し出して、自撮り写真らしきものをみせてくる。 

 変な形のピースに片目ウインクのどアップ。


 自分で言うだけあってくりくりしたおめめのかわい子ちゃんである。

 これが結構な童顔で好きな人にはぶっ刺さる容姿をしている。

 本人はコンプレックスなのか、写真はちょい大人っぽく修正されている。みずから長所を殺していくスタイル。


「おーかわいいねー。ペロいね~」

「でしょ~~?」


 こいつほど自己肯定感の高いやつをあたしは知らない。きっと両親から大切に愛されて育ったのだろう。

 そうでないとそんなペコちゃんみたいなツインテールで学校に来れない。

 

 髪を乾かすのすらめんどいあたしには考えられないことだ。短く切りたいっていうとママンと未優に止められる。「いやないわ」って冷たく言われる。あたしの髪はママンと未優によって生かされている。二人に感謝しろよお前。


「エリンギーも見たい? 気になるぅ~?」


 莉音はいきなり隣の陰キャ男子に声をかけ始めた。

 どんなあだ名だよ。たしかにエリンギみたいな髪型してるけど。


 莉音はクラスメイト全員と楽しくおしゃべりできると豪語している。自分をクラスのマスコットキャラ的存在と思っているらしい。 


「エリンギーってそれ、スマホでずっとなに見てるの?」


 本人にはノンデリだとかそういう概念がないのかもしれない。たぶん小5ぐらいのメンタリティのまま生きているのではないだろうか。


「わかったぶいちゅーばーだ! ぶいちゅーばーのえろいやつ!」


 コアなとこつっこんでくなぁ。

 いきなり不意打ちされ、隣の彼は「あ、あ、あう……」みたいになってしまっている。どっちかというとあたしは彼の気持ちすごいわかる。


「ほら莉音やめとけって。くすぐっちゃうぞー」


 あたしは机に座る莉音の脇に手を伸ばして、さわさわとくすぐる。

 身をよじった莉音はあたしの腕を掴むと、机を降りてあたしの膝の上に横座りしてきた。


「乗るなって、おもったいわ」


 いくら小柄の身軽とはいえ重いものは重い。

 莉音はお返しとばかりにあたしの脇に手を入れようとしてくる。当然払いのける。しばらくカンフー映画みたいにやりあったのち、莉音はあたしの両手首を掴んだ。


「なにー? なんですかー?」


 見上げながら口で言い返すと、ぐっと莉音の顔が近づいてきた。

 あたしは思わずのけぞる。


「う~ん……」


 うなりながら、丸っこい目がじいっと見つめてくる。

 急に真面目な表情。近い。 


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