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美少女にTSしてはや数年。高嶺の花だった幼馴染が脈ありらしいので落としにいったら逆に言いなりになってました。  作者: 荒三水


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11 オタ話で意気投合したクラスのギャルが急にグイグイ来る件

 その後未優はいつも以上の塩対応に戻ってしまった。

 胸キュンなかけあいもドキワクイベントもないままに登校。あたしは自分の席につく。 


「それがさ~。すごいんだって!」

「え~ほんと~? きゃははは」 


 きゃっきゃうふふする女子クラスメイトの会話をよそに、あたしはひとりでスマホをいじいじする。

 同じクラスであるにも関わらず、未優とあたしはそこまで積極的にコンタクトはしない。


 けどそれは今に始まったことではない。未優はとにかく目立つのを嫌がるフシがある。まあそこはあたしもあたしで、わあわあやるより一人でマンガ読んでる方が気楽でいいっていうのはあるんだけど。

    

 昨晩から新しいマンガアプリを入れて、少女マンガにも手を出し始めた。

 なんていうかその、恋する女の子の気持ちっていうの? 未優を落とすにあたって、参考にできるものもあるかなって。

 

 あたしが読み始めたのは俺様系の男が出てくるやつだった。で、引っ込み思案な女の子が偶然見初められるという。

 これを選んだのはべつに他意はない。今なら無料で読めますっていうから。


 あ~そういうやつね、はいはい。

 とか言いながらも、気づけば読みふけっていた。


 このオラオラ系というやつ、はなからバカにしてかかるのもよくない。意外に。女子はなんだかんだいってそういうのが好きなのかも。未優も例外ではなく。

 


 

 

 未優攻略が進まない一方で、あたしの身に少しばかり厄介な事案が起き始めていた。


「みさき、トイレ行かない?」


 オタ話で意気投合したクラスのギャルが急にグイグイ来る件。

 クラスのギャルとは昨日昼休みに仲良くなった瑠佳のことだ。じつは昨晩もメッセが飛んできて、何度かやり取りした。

 そして今日もことあるごとに絡まれる。


「みさきそれ何見てるの? マンガ?」

「あ、いやっ……と、トイレ行く?」


 あたしは隠すようにスマホをしまった。

 読み始めた少女漫画にすっかりはまっていた。主人公の子にがっつり感情移入してしまっていた。

 昨日の昼、瑠佳の前でさんざん少女漫画をディスった矢先にこれだ。


 瑠佳とともに教室を出た。

 休み時間になると、クラスの女子たちはパーティを組んでぞろぞろトイレに行く。

 けどあたしは便所ぐらい一人で行けよってタイプで、未優もそうだ。

 

 そもそも未優は連れションみたいなはしたない真似はしない。お得意の「そういうの嫌」っていう。あれでいて、それなりにいいとこのお嬢様なのだ。


「あはは、それでさー」


 瑠佳は未優とは対照的によく笑う。よくしゃべる。

 

「それさ、パンツじゃん?」

「そうそうパンツ逆に穿いて……ってオイっ! あははは」


 スキンシップも多め。べしっと二の腕にツッコミを当ててくる。


 ちょい斜めにポニーテールした髪型かわいい。制服もなんていうか、センスある着こなし。ゆるっとしてるけどだらしなくはない。スカートも長すぎず短すぎず。


 そこまでギャルって感じでもなくて、ちょっと垢抜けてるっていうの? バランスがうまい。あとは香水? どぎつくない。そこはかとなくいい匂い。


 身長もあたしと同じくらい。

 スラッとしている。でも太ももとか、ちょい肉肉しい。


 絶対モテるでしょこの子。

 あたしが元のさえない男子だったら、こんなの絶対意識する。ちょっと話しかけられたら惚れてる。


 そもそもこんなふうに関わることもないだろう。

 なにあの陰キャくんキモっ、ぐらいの距離感だったに違いない。

 



 瑠佳とともに渡り廊下を歩いて別棟のトイレへ。

 近くだと混んでるかもしれないから、と言われわざわざちょっと離れた場所まで来た。


 先客は誰もいなかった。

 先に用を終えたあたしが個室を出て、手洗い器で手を洗おうとすると、瑠佳が後ろから顔をのぞかせた。

 正面の鏡を見ながら、


「うわ、みさきと並ぶとアタシほんとブス~……」


 などといって顔をしかめてみせる。

 こちらは反応に困る。そして顔が近い。


「そんなことないって、瑠佳もかわいいって」

「そう? ほんと?」

「うん、ほんとほんと」

  

 瑠佳はぱあっと目を輝かせる。

 もちろんお世辞でもなんでもない。

「わたしなんてみさきの足元にも及びませんけど~?」とかいう人とは違ってリアクションは素直だ。


「でもさ、みさきってマジでかわいいよね。もうずっと見てられる」


 じいっと熱い視線を向けられて、つい目を伏せてしまう。

 瑠佳はふざけてか、無遠慮に顔を近づけてくる。

 いや近い。近い近い。


「ねえ、こっち見て?」


 急に命令されて、驚きつつも目線を上げる。

 それと同時に、いきなり両肩を掴まれた。真剣な目がじっと見つめてくる。

 

 瑠佳は無言だった。

 手であたしの両肩を挟みながら、顔を近づけてくる。

 

 あたしは一歩下がる。一歩近づいてくる。

 さらに下がる。さらに近づいてくる。


「な、なにを……」


 言いかけて、背中が用具入れの仕切り壁にぶつかった。

 これ以上下がれなくなって、瑠佳の顔が迫ってくる。肩を掴んだ瑠佳の手をどけようと、あたしはとっさに右手を上げた。


 瑠佳はあたしの右手をのけると、そのまま手のひらをあたしの顔のすぐ横の壁に叩きつけた。

 ダン、と耳元で音がして、反射的に身がすくむ。

 そのすきに、頬が触れそうになる距離まで瑠佳の顔が滑り込んできた。


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