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第7話 サボり魔と不毛な集合体_2

 午前中の授業は退屈で窮屈でたまらなかった。スマホを見れば没収され、居眠りすれば叱られる。仕方なく、平均より少し下の生徒に合わせた授業をぼんやり眺めていた。

 久しぶりに投げ込まれた教室では、平俗で徒爾に均衡化された授業と、無為無聊なガールズトークを、当然のごとく強制される。

 学校なんて、やっぱりちっとも楽しくない。

 教科書さえあれば自室のベッドに寝転がって学べることを、教師が不明瞭な文字で黒板に書き連ね、生徒が大袈裟に頷いてノートをとる。

 学校とは、教師とは、生徒とは、つまりはそんな不毛な集合体。

 そんなことを口にすると、「 学校に通う目的は勉学だけでなくて、社会性を獲得するためでもあるんだよ」なんて反論に晒されるけれど。

 その社会性という言葉が、闇雲に平均に合わせるための時間の浪費を指すのであれば、私の人生には必要ない。

 「そういえば、席替えっていつあったの?」

 ああ、昼休みの無駄話に適当な話題があったと気づき、話の切れ目を探して口を開く。黙々と食べ進めていたせいで、ランチは誰よりも早く食べ終わってしまった。

 「一昨日だよ。おなじみの談合方式」唯が満面の笑みで答える。

 「代わりにクジ引きしてくれてありがとう」

 「全然いいよお」

 「でも、一番前の席って想定外だった。交渉下手になったね」

 高校三年生にもなれば、決定的に馬の合わない相手も、陳腐でも看過できない人間関係も発生する。同い年で同性で同じクラスという共通項だけを担保に、クラスメイト全員と友達になれるほど、大人ではない。とはいえ、誰かを表立って糾弾して迫害するのがださいと感じられる程度には、子供でもなくなっている。

 隣の席が親友だとフツーにハッピーだし、近くに彼氏の元カノが座るのはかなり萎えるよね、というどこまでもシンプルな理由で、席替えのくじ引きは形骸化する。

 「だって最近、私たち最後列ばっかり手に入れてたじゃん」ランチを食べ終わった綾乃が、鞄からチョコレートを取り出して私たちに配りながら言う。「たまには損な役回りも担わないと。それが社会ってやつだよ」

 「政治力で負けたんだ?」私は赤い丸眼鏡を上げながら、おどけて笑って見せる。

 「波風を立てない方法を選んだの」

 百合谷が意味深な笑みを口元に浮かべ、最後列で机を合わせて談話する集団に視線を送る。彼女たちは近くのコンビニで買ったサラダを片手に、手鏡で化粧の崩れを直しながら、机に置いたスマホを片手間で器用に操作する。 

 異性の話題と教師への愚痴で盛り上がり、手を叩いて大声で笑っている彼女たち。傍から見れば、私たちもきっと同じように見えている。

 「私が一番、割りを食ってる」

 頬杖をついて、最前列の中央の席から教卓に視線を向ける。あまりの近さにため息が漏れる。

 「死人に口なし。サボり魔に発言権なし」

 上機嫌に笑う唯は、「忘れるところだった」と机に手を入れ、くしゃくしゃのプリントを引っ張り出した。

 「文化祭の役割分担も、時間があったから一昨日決めたのよ」

 百合谷が長く艶のある黒髪を耳にかけ、チョコレートを頬張りながら補足する。

現代の学生の方は、授業中に何をして過ごすのでしょうか。

私はよく居眠りをしていました。

今になると、眠らずにちゃんと勉強しておくべきだったと強く思います。

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