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絆の音

次の練習が始まった。仁菜はギターをかき鳴らし、礼奈は少し照れくさそうに歌い始めた。初めての練習で不安があった礼奈も、少しずつ自分のペースを見つけてきたようだ。


「いい感じだよ、礼奈!」

仁菜は思わず微笑みながら言った。礼奈は照れくさそうに笑い返す。


「ありがとう…でもまだまだだよね。」

礼奈は控えめに言うが、仁菜はその反応に満足していた。少しずつではあるが、礼奈もこのバンドに馴染んできた証拠だ。


「いや、初めてでこれだけできるなら十分だよ!」

仁菜は力強く言うと、他のメンバーも頷きながら彼女を励ます。


「うん、前よりずっとよくなったよ!」

真義が、明るい笑顔で礼奈を励ます。真義は、仁菜が一生懸命にバンドを引っ張っている姿に感動し、全力でサポートしようと決めていた。もちろん、他のメンバーの気持ちも大切にしているが、今はまず仁菜を支えることが最優先だった。


「礼奈、少し音程が安定してきたよ。次はリズムに合わせてもっと歌おう!」

知佳が真剣な顔でアドバイスをすると、礼奈は頷き、もう一度歌い始める。


信乃はドラムを叩きながら、バンドの音を感じ取っていた。誰よりも冷静で、バンドが一つにまとまる瞬間を待っている。


「お前ら、ちょっと音合わせてみて。俺が合わせるから。」

信乃は淡々とした声で言うと、軽くドラムを叩いてリズムを合わせていく。みんながそのリズムに合わせて動き出すと、少しずつバンドの音が一体感を持ち始めた。


---


練習が終わった後、みんなで近くのカフェに寄った。今日は少し長い練習だったため、みんなが疲れていた。そんな中で、仁菜はふと、バンドが一つにまとまった感覚を覚えていた。


「なんか、少しずつ楽しくなってきたね。」

仁菜は嬉しそうに言うと、他のメンバーも頷いた。


「うん、最初は緊張したけど、みんながいるから頑張れるね。」

知佳が少し笑顔を見せながら言う。


「私はドラムが楽しいな。」

信乃が静かに言うと、真義も微笑んだ。


「私も、みんなと一緒にいると楽しいよ。」

真義は少し照れくさそうに言った。


礼奈は少し考えてから、やっと言葉を口にした。

「私、最初はただのお願いだと思ってたんだけど…やっぱり、みんなと一緒にやるのが楽しいね。」


仁菜はその言葉に胸が高鳴った。礼奈が少しずつ、このバンドに心を開き始めているのが分かった。それだけで、仁菜の中に温かな気持ちが広がった。


「礼奈、ありがとう!本当に感謝してる。」

仁菜は素直に感謝の気持ちを伝えると、礼奈は少し驚いた顔をしてから、微笑んだ。


「うん、こちらこそ…ありがとう。」

礼奈も少し照れくさそうに言った。


---


その日の練習が終わった後、仁菜は少しだけ気になることがあった。礼奈がバンドに参加し始めてから、何かが少しずつ変わり始めた気がする。しかし、仁菜の気持ちはまだはっきりと形になっていなかった。自分の気持ちがただの友情なのか、それとももっと深いものなのか、分からなかった。


でも、今はまだバンドが一つになることが最優先だと思っていた。みんなが少しずつ成長しているのを感じる。自分がこのバンドを引っ張っていくという使命感も強く、だからこそ、礼奈への気持ちをどう扱うべきか迷っていた。


次の練習の予定を立てながら、仁菜はふと思った。礼奈は本当にこのバンドを続ける気があるのだろうか。そして、もしそうだとしても、自分が抱いている気持ちがいつかバンドにどう影響するのだろうか。


その答えを見つけるためには、もっと時間が必要だ。


---


次回に続く。


---



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