枯れた花の代わりに
きっと、彼はもう私のことが好きじゃないんだ。ラインの返信は1日に5回くらい。デートの回数も前より明らかに減った。
もう捨てられちゃったのかな。
不安に一度なったら、もう止められない。
気持ちのままに私は手紙を書いた。今度会う約束を取り付ける旨に、元気な赤いオシロイバナを添えた。
オシロイバナの花言葉は、恋の疑い。
振られる前に振る。その方がきっと楽だから。
次の日、手紙が届いたのだろうか、彼からラインで予定が合うから会おうと返信が来た。
約束の日。私は、お気に入りの白いワンピースを着て、髪をセットして出かける。
そういえば、あやかのサラサラの黒髪って、その服と合うよな、って褒められたこともあったっけ。
やめやめ。今日別れるん......だから。
集合場所はお台場のレインボーブリッジが見えるとこ。
彼はすでに待っていた。私はいつもオシャレをしているのに彼はTシャツとかのカジュアルな着こなし。ちょっとボサついた髪も。そこがいいんだよなぁ......
「あやか、やほ」
「たかし、あのね」
「ちょいまち」
たかしに遮られた。
「これ、枯らしちゃった」
そう言ってポケットから無造作にオシロイバナを取り出す。しなしなになって、鮮やかだった赤色もくすんでいる。
「でさ、代わりに、これ。スイセンノウ」
渡されたのは小ぶりなピンク色の花。聞いたことのない名前の花だけど綺麗だ。
「あの、これ」
話しかけようとするとまた遮られる。
「スイセンノウ、花言葉は、私の愛は不変」
ぶっきらぼうに、たかしは言うが、顔はスイセンノウのように染まっている。
思わず私は泣いてしまった。止めようとしても止まらない。
「ごめんな、不安にさせちまって」
泣いていてうまく話せない。視界もぐちゃぐちゃだ。
「これ」
うつむいて泣いている私の視界に入るように、何かが差し出される。
「その、こういうことだから、許して」
なんだよ、そう思いながら涙を拭うと、目の前には指輪。
「喜んで......!」
私は涙ぐみながら、そう答えた。私の涙で濡れたスイセンノウはどういうわけか、イキイキして見えた。