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エンドロールに君の名を

作者: 喜悦楽壊

3年前になりますか、僕が撮っていることを聞きつけてオンボロバイクに僅かな荷物を括って来たのは。

頼むから参加させてくれ。金はいらない。何でもする。

それだけ言って真夏日の木陰もないロケ地で土下座した君の素早さを思い出すと今でもクスッときます。

渋った僕達を四日間かけて落とした根性は撮影中も発揮していました。

四方八方駆け回り三面六臂の大活躍、いや、そこまでではなかったか。

とにかくよく働いてくれました。

機材の運搬、俳優達が少しでも動きやすい様に細かな気配りで現場を整えてくれた。 いや、見事な働きぶりでした。

俳優達にもスタッフ達にも気に入られて直ぐに打ち解け、仲間と呼べる間柄になりました。


そして、クランクアップの前日に黙って置き手紙を1枚。

「ありがとうございました。 この一夏は僕の最高の宝物です。」

それだけで僕らは別れてしまいました。

それ以降スタッフの誰一人として道端ですれ違ったことすらありません。

打ち上げの席も君がどんな人間だったか、可笑しな話ですが話題の中心は映画ではなく君でした。



そういえば君の名前を聞いていませんでした。

エンドロールに君の名前を載せられずに今日まで来てしまいました。

身長170cm程、恐らく40代で少々メタボ気味。

髪は短めの天然パーマ、服は変なのが好きだった。

まぁね、僕みたいな変人の映画に協力しようとするやつだから変に決まってるんですよ。うん。

でもね、赤地に紫文字で惑星直列の周期表は僕でも着ませんよ。

しかも色違いで5着持ってるのは君だけだ。


長々と話してしまいましたこんちくしょう。

猫被ってやってらんねぇから言うぞ。

いい加減にてめぇの名前を教えろや。

じゃねえと完成しねぇんだ、こいつは。

誰が欠けても作れなかった。

多くても駄目だった。

最高の馬鹿共が最高の演技と技術で作って出来たのがこいつだ。

それでも、それでもだ。

お前がいなきゃ意味が無い。

わざと空けたスタッフロールの所。

あそこがお前の席だ。

さっさと席に着け。

この馬鹿が、なんで勝手にいなくなって勝手に逝くんだ。

見ず知らずの嫁さんに手紙送られたこっちの身にもなれボケ。

なにが満足だったでしょうだ。

なにがありがとうございましただ。

過去形にすんじゃねぇ。

お前をスタッフに次の作品をどうするか決めてあんだよ。

お蔵入りだぞこんちくしょうが。


馬鹿野郎が、覚えてろ。

そっちいったらこき使ってやっからな。

嬉嬉として出迎えに来やがれ。

報酬はラリアットからのブレーンバスターだ有難く思え馬鹿野郎。

最後にこんな試写会に来てくれてありがとうよ、お前らは俺が死んだ後も生きろよ馬鹿野郎共!

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