77話 ハーピーと交流
近衛騎士団同士のいざこざがあったりしたのだが全部解決。
私は聖女として本格的に稼働しはじめた。
とりあえずお布施が沢山あるので、それを使って色々とするつもり。
たとえば、貧しい人々に炊き出しをしたり、孤児院を作ったり、病院を作ったり――。
そういう業務はほとんどが教団が行っており、聖女の私とやることが被る。
それは解った上でやるのだが。
教団の連中は、病院の治療で貧しい人々から金を巻き上げたり、孤児院で集めた孤児を奴隷商に売っているなんて話もあるらしい。
神様を盾にしてそんなことをしているなんて許せないでしょ?
だいたいね、私の力は神様から授かっているってことになっているのだから、それを拒否する教団の連中って本当に神様を信じてるの?
なにか別なものを拝んだりしてない?
そんな風にしか思えないのだが。
ヤミを肩に乗せて、寄宿舎の裏に完成した厩舎を見学しに向かう。
聖女騎士団とかいう大層な名前のものができたが、城内での警護は相変わらず近衛騎士団が行っている。
そこら辺の仕事を取るつもりはない。
私が外に出たときなどは、聖女騎士団が護衛をするという具合に役割分担ができている。
近衛としては、王族を守るという本来の大事な仕事があるわけだし。
ボロボロだった寄宿舎は、すっかり整備されて綺麗になっている。
経理や事務に関することもここで行われており、事務方の部屋も作られた。
屋根も赤く綺麗に塗装されて、準備は整った。
ここで聖女に関わる一切合切が全部処理される。
私がやろうとしている炊き出しや、孤児院や病院の業務もだ。
騎士はまだ2人だが、魔導師もいるし戦力としては中々のものだろう。
事務方も聖女派であることが採用の条件なので、買収されたりする可能性は低いと思われる。
弱みを握られて――なんてことにならないように、家族が誘拐されたり、病人がいたりする場合はすぐに連絡しなさいと言ってある。
「可愛い」
寄宿舎の裏に行くと屋根付きの厩舎が並んでおり、馬が3頭並んでいる。
ルナホーク様と、ヴェスタ、そしてルクスの馬だ。
「聖女様」
「ルナホーク様、おつかれ様でございます」
「……」
彼が困った顔をしている。
「え? どうかなさいましたか?」
「いえ、あの――畏れ多くも、おつかれ様は少々――」
「だめでしょうか? こういう場合はどのように申し上げたらよいのでしょう?」
「聖女様が、挨拶をお作りになられては?」
「ええ~?」
「にゃー」
ヤミは面白そうとか言っているのだが、他人事だと思って。
まぁ、私もおつかれ様は少々おかしいと思っていたのだが。
「う~ん、それでは――ルナホーク様の日頃の善行に、神の祝福を」
「ありがとうございます」
確かに、こんなセリフにしたほうが聖女っぽい。
人間ってのは環境が作るのよねぇ。
聖女として扱われれば、普通の人でも聖女っぽくなっていく。
逆に独裁者として扱われれば、善人でも独裁者になるかもしれない。
実際、歴史上数々の独裁者がいたが、最初は善政を敷いていた人が多かったり。
ルナホーク様の後ろには、ヴェスタが控えている。
上級貴族様が騎士団の団長なら、彼は副団長だ。
事実、そのぐらいの実力があったのだが、色々とヘマをしてこんな立場になっている。
その彼の様子が、ここ数日変わってきた。
「ノバラ!」
空から私を呼ぶ声が聞こえてくる。
上を見ると、白い翼が周回しながら降りてくるのだが――。
「ええ?!」
その数が多い。
モモちゃんだけではない、他の子もいるようだ。
彼を入れて全部で6人。
数日前、モモちゃんの耳掃除をしてあげたら、突然窓から飛び出してそれっきりだったのだが、仲間の所に行っていたのだろうか。
「ノバラ」
「モモちゃん」
彼が私の所に飛び込んできた。
他の子たちも降りてきたのだが、見たことがない子たちばかりだ。
色も翼が茶色だったり、身体が黒かったり様々で、男の子が3人に女の子が2人。
前にいた――え~と、名前忘れちゃった、あの子たちはいない。
「ノバラ、耳掃除をしてくれ!」
「ええ? もしかして、そのためにここまでやって来たの?」
「ノバラの耳掃除がすごいと仲間に話したら、こいつらは一緒にやって来た」
ヴェスタが変わったというのは、こういう場面でも表情を見せなくなったことだ。
前は睨んだり苦々しい顔をしていたり、顔に表情が出まくりだったのだが、それがなくなった。
私のあげた特別なお礼のおかげで、自分が聖女の特別な存在だと自覚できたのだろうか?
そうだったらよいのだけど。
「それじゃ、皆で私の部屋の窓から来てくれない?」
「わかった!」
彼は私の腕から飛び降りると、仲間を連れて大空に飛び上がった。
聖女騎士団の事務方の人たちも、寄宿舎から出てきて騒いでいる。
ハーピーが珍しいせいだろう。
それが6人もいるのだから。
それよりも、急いで部屋に戻らないと。
「ルナホーク様、ありがとうございました」
「いいえ、聖女様の御役にたてて、光栄にございます」
慌てて自分の部屋に戻る。
走りたいのだが、走ると怒られるので、なるべく早足で向かう。
国が終わるような危機的状況じゃないと走っちゃダメらしい。
そういうの必要なの? ――って思っちゃうけど。
まぁ、郷に入っては郷に従えっていうから、従いますけど。
多分、こういう作法でも歴代の聖女たちは、衝突したのではないだろうか。
私は社会人ですから、一応この世界側の顔を立てますけど。
社会人がキ○タマグッバイするのかよ! ――とかそういうツッコミはなしで。
慌てても走らず、自分の部屋に帰ってきて窓を開けた。
「にゃ」
ヤミの言うとおり、お城の裏庭にはすでにモモちゃんたちが旋回している。
風車の羽に当たりそうで怖いのだが、実際に風力発電の風車には鳥たちが衝突するらしいし。
高い知能を持っている彼らなら心配ないとは思うのだが。
窓から手を振ると、モモちゃんが翼を振って答えてくれたので、彼らの着地に備えて退避する。
すぐに窓枠に彼が止まった。
「ノバラ!」
「いらっしゃい、モモちゃん!」
彼がピョンピョンと飛んで私の胸に飛び込んできた。
「他の子たちは、入って来られる? ぶつかったりしない?」
「ハーピーに、そんな間抜けはいない」
彼の言うとおり、次々とハーピーたちが窓から飛び込んできた。
狙った所に着地するなんて、彼らにとっては朝飯前なのだろう。
「アリス、彼らにクッキーでも用意してあげて」
「かしこまりました」
モモちゃんと一緒に入ってきたハーピーたちだが、初対面ということでちょっとおどおどしている。
まぁ、只人が怖いのかもしれなけど。
「私は、ノバラよ。みんなよろしくね」
「うん」「おう……」「……」
皆バラバラだ。
「大丈夫だ。ノバラは怖くないぞ? 怖くないけど、ワイバーンを2匹倒したぞ!」
「すごい」「すごい」「すげぇ」
皆が尊敬な眼差しで、ジリジリと近づいてきた。
その中に金髪のショートヘアの男の子がいるのだが、その子が好奇心満々だ。
さすが男の子。
モモちゃんを降ろしてその子に手を伸ばしたら、飛び込んできてくれた。
彼を抱いて、ベッドの縁に座る。
それはいいのだが、彼の頭を見るとせっかくの柔らかい金髪が虎刈りだ。
前にきた子たちも虎刈りだったので、自分たちで刈ったのだろう。
彼らは脚しか使えないので、髪を切るのは難しいはず。
刈って上げたい。
でも、まずは耳掃除ね。
「君の耳を見せてね」
「うん」
可愛い。
頭を横にしてもらって耳を見せてもらったが、やはりしっかりと詰まっていた。
「モモちゃん――」
話そうとすると、そこにクッキーがやってきた。
床で食べさせるわけにはいかないし、私のベッドの上で――と思ったら、アリスが手を挙げた。
「大きなテーブルがあります!」
「あるの?」
「はい」
隠し扉から、クロミと2人で大きな板を担いできた。
「手伝う?」
「いいえ! 聖女様にそんなことはさせられません!」
彼女たちが運んできたのは、組み立て式のテーブルらしい。
そのときドアがノックされた。
「はい、どうぞ~」
入ってきたのはヴェスタだ。
「なにかあった?」
「いいえ――ハーピーが沢山きたので様子を見てくるようにと、ルナホーク様に――」
「大丈夫よ、それよりアリスたちを手伝ってあげて」
「かしこまりました」
普段使っている椅子を端っこに寄せると、折りたたんだエックス型の脚を広げる。
その上に、ヴェスタが大きな天板を乗せた。
テーブルの完成である。
その上にクッキーを乗せると、ハーピーたちはそれを囲むようにぺたんと座った。
可愛いのだけど――脚を広げて座ると色々と丸見えなのだが……いいのだろうか。
毎度のことながら気になる。
クッキーを食べたことがあるモモちゃんが、皆に食べ方を教えている。
「モモちゃん、耳の話なんだけど――みんな、こんな感じになっているの?」
「もぐもぐ! なってない! もぐもぐ! ノバラに言われて、皆で確認した。詰まっているやつとそうでないやつがいる」
「いい子だから、食べながら喋らないでね」
そこら辺は私たちと一緒なのね。
平気な人は平気と――。
私に抱かれている子がクッキーを食べたそうなので、アリスから1枚持ってきてもらい彼に食べさせてあげた。
「甘くて美味い!」
「食べたら、耳そうじしようね」
「うん!」
食べ終わったので、ベッドの上で耳掃除をしてあげた。
椅子だと転げそうだったので、ベッドのほうがいいだろうという判断だ。
耳の掃除が終わるとよく聞こえるようになったのか、喜んでハーピーが窓の外から飛び出した。
やっぱり情報収集能力が向上するのだろうか?
あ、もしかして、モモちゃんがワイバーンに襲われたってのは、耳が詰まっていたせい?
掃除が終わったあとに、「すごくよく聞こえる!」って言っていたし。
他の子たちも耳掃除をしてあげていると――ドアが開いた。
ノックもしないで入ってくるのは――ファシネート殿下だ。
ふわふわの金髪が入ってきたのだが、入ってくるなりモモちゃんたちを見て固まった。
ハーピーが沢山いるので、驚いたのだろう。
彼らも、突然知らない人が入ってきたので驚いたのか、皆で飛び上がると私の後ろに隠れてしまった。
一応、モモちゃんは殿下と会ったことがあるのだが、それでも警戒している。
殿下が目をキラキラさせて私の所にやってくるのだが、こればっかりは彼らの意思を尊重しないと。
モモちゃんは、ヴェスタなどには普通に接しているし、やっぱり慣れだろうか。
私は、モモちゃんを抱き上げた。
「ファシネート様、なにか甘いもので釣るのですよ」
「!」
彼女の顔が明るくなり、一緒に来たメイドに耳打ちをしている。
ドアから出ていったメイドが、すぐに戻ってきた。
小さなトレイに白いものが載っている。
見ればケーキだ。
あれでモモちゃんを釣ろうというのだろうか?
メイドからケーキを受け取ったファシネート様が、それを彼の前に差し出した。
模様が入った青い皿に小さなスプーンと、生クリームのケーキが乗っている。
さすが、お城の厨房には生クリームを作る技術が普通にあるらしい。
「モモちゃん、白いのはケーキよ。とても美味しいわよ」
「本当か?」
「食べてみる?」
「……解った!」
ファシネート様から受け取ると、スプーンでケーキを切り取り、彼の口に運んだ。
「なんだこれ! すごく美味いぞ!」
「美味しいよねぇ」
私とモモちゃんの言葉に、他の子たちも前にやって来た。
やっぱり美味しいと言われると興味があるのだろう。
「モモちゃん、あの方がモモちゃんに触りたいみたいなんだけど、触らせてあげて?」
「……いいぞ!」
「!」
彼の言葉に、殿下の顔を明るくなる。
彼女がそ~っと手を伸ばして、モモちゃんの白い翼に触れた。
「すごい……天使の翼みたい」
小さく、そしてとても透き通る声でファシネート様が囁いた。
「すごく綺麗な声だな!」
「ありがとう」
モモちゃんがニコニコしており、彼女に対する緊張感は解けたように思える。
他の子たちもケーキを食べたそうなので、皆に一口ずつ分けてやった。
仲良しになったのはいいのだが、殿下がモモちゃんの股間を凝視している。
やっぱりそこが気になるらしい。
またメイドに目隠しされて、引き離されてしまった。
「ノバラ、只人はこんな美味しいものを食べているのか?」
「いいえ、こういうものを食べられるのは、このお城でも限られたほんの一部の人だけよ」
「やっぱり、そこら辺は俺たちと違うんだな」
ハーピーたちには身分がなくて、皆本当に平等。
ある意味、原始共産制みたいな感じね。
全ての食料は平等に配分されて、一部だけが独占するなんていうのはありえないらしい。
その代わりに政府もないし政治もないみたいだけど。
モモちゃんの話を聞いた殿下が、なにかをメイドに話している。
「今の話ですが、森の中に住んでいるエルフたちも似たような制度になっていると聞いたことがあります」
「え? そうなんだ」
エルフも原始共産制みたいな感じなのか。
「なんだ、エルフたちはハーピーを嫌っているけど、似ているところもあるんじゃない」
「俺たちは、エルフなんかと似てないぞ!」
話を聞いたモモちゃんが憤慨している。
説明するのが難しいわね。
両種族が似ていると言ったが、エルフたちには政府があった。
実際に、サルーラが大使としてお城に来ているし。
同じ原始共産制みたいだが、やはり違いがあるのか。
政治の話はさておき、ハーピーたちの耳掃除の続きをやってしまおう。
その様子をファシネート様が、羨ましそうに見ている。
こんなことを羨ましがられても……。
「聖女様、ハーピーたちは皆耳掃除ができないのですか?」
殿下のお付きのメイドからの質問だ。
「やはり手がないので、脚じゃ耳掃除は難しいみたいですね」
耳が詰まるのは半数だという説明をしてあげる。
掃除が終わったハーピーたちが、喜んで窓から飛び出す。
全部の子の耳掃除が終わった。
残っているのはモモちゃんだけだが、彼がピョンピョンと跳ねて、立っているヴェスタの所に行った。
「お前、嫉妬しなくなったな」
彼から見ても、ヴェスタが変わったのが解ったのだろうか。
モモちゃんはヴェスタのことを警戒していない。
私とヴェスタが仲がいいことを知っているので、そのつながりで信頼しているのだろうか。
「私が嫉妬を抑えられなかったのは、結局は聖女様を信じていなかったから――自分の弱さだと解ったからな」
「今は違うのか?」
「違う」
「そうか――ノバラ、また来る!」
モモちゃんが翼を広げると窓枠に掴まり――そのまま外に飛び出した。
ハーピーたちが出ていったあとは、彼らのお尻のあとがついた大きなテーブルを魔法で綺麗にして奥の部屋に収納。
翼が生えた可愛い子たちと交流できたファシネート様は、満足そうに自分の部屋に戻られた。
このままいけば、殿下とハーピーたちも仲良くなれるかもね。
彼らは商人たちが騙そうとしているとなんとなく解ると言っていたから、彼女がそういう人間じゃないと解ってくれるかもしれないし。
ハーピーたちの相手をした私は、なにか疲れた。
沢山の子どもたちを相手にした気分。
彼らは子どもではないのだが、聖女の力も精神的な疲れには効かないのが玉にキズだ。
------◇◇◇------
――沢山のハーピーたちが押しかけて来てから数日あと。
貴族同士の情報網なのか、水虫の患者が増えてきた。
マッチポンプのようなものだが、これで聖女派が増えてくれれば私の仕事もやりやすくなる。
味方が増えたら、魔導師協会や教団とのドンパチもやりやすくなるってものだし。
まぁ、本当にドンパチするわけないんだけどね。
教団や協会は魔導師が揃っているわけだし。
穏便に済めばそれにこしたことはないのよ。
向こうの出方次第ね。
ルクスの報告によれば、街の噂になっていたことは全部事実らしい。
教団が病気や怪我の治療で法外な金を請求したり、孤児院の子どもたちを奴隷商に売り飛ばすとか――そういうのだ。
ふと思う――病気や怪我の治療なら、街の魔女でも回復薬が作れる人がいるはずなのに……。
あ、もしかして――教団に足を向けさせるために、必要以上に魔女への憎悪を煽っているのではないのだろうか。
それが本当なら酷い話だ。
確かに、昔に不幸なできごとはあったみたいだけど、それをネタに使って私腹を肥やすなんて。
怒ったところで、私には捜査権限もやつらを裁く権限もない。
今は政治力がなくても、貴族の中に聖女派が増えれば潮目が変わるかもしれない。
とりあえず、街の住民からいただいたお布施を使って炊き出しと、孤児院と病院の設置を行う。
既得権益を邪魔されたやつらは、抗議をしてくるだろうか?
こちらとしては、「神様から与えられた力で、弱者救済をしているだけなのですが、なにか?」と言うだけ。
我慢できずに向こうが手を出してくれれば、こちらも反撃できるのだけどなぁ。
――聖女の力を使った午前の治療が終わる。
マッチポンプとはいえ、患者が増えるのはきつい。
家族でやってくる貴族たちも多いし。
まぁ、家族まで水虫が感染ってしまっては致し方ない。
お父さんが反聖女派ってだけで、家族に恨みなどはないのだが……。
申し訳ないけど、聖女のマッチポンプの材料になっていただきましょう。
自分で言うのもなんだけど、反省するつもりはない。
いつも言っているが、綺麗ごとだけでは片付かないわけだし。
勝てば官軍負ければ賊軍――要は勝てばいいのよ勝てば。
――といっても、非人道的なことをするつもりはないんだけどね。
孤児院や病院の設置は、ルナホーク様率いる株式会社聖女がやっているから、私に口出しできるところはない。
――ということで、街に行ってみようと思う。
学園に入学した、ククナがどうなったか会いに行ってみようかと思う。
お城の外に出るために準備をする。
前にやった男装をするためだ。
あの格好なら、どこから見ても私が聖女だとは思わないだろう。
闘技場でのお披露目で、背が高いエルフみたいな女だという認識が広まっているようなので、男装のほうが安全だと思う。
背の高い女は目立つし。
その前に、スカート穿いてても男だとか言われることもあるし!
「ねぇ、アリス。いきなり学園に行って、中に入れてもらえるかな?」
「そのままでは無理だと思いますが、紹介状があればよろしいかと」
「確実なのは陛下かな~でも、お忙しそうだし……。ここはルナホーク様かな」
彼も忙しいのは解っているし、私の都合で悪いのだけど……。
「伯爵家の紹介状なら、十分な効力を発揮すると思われますよ」
「ありがとうアリス」
私は、ルナホーク様に会うために、聖女騎士団の寄宿舎を訪ねた。





