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69話 びしょ濡れ


 エルフと揉めた。

 エルフは、ハーピーたちと仲が悪いらしい。

 お城にいるモモちゃんをどうにかしろというのだが、そんなことをできるはずがない。

 エルフとハーピーどっちを選ぶかと言われたら、ハーピーを選ぶし。


 エルフとの揉めごとのあと、ヴェスタの所を訪問してみるが――突然襲われた。

 もちろん未遂だが、彼は精神的に不安定になっているようだ。

 騒ぎを起こしたということで、なんらかの処分を告げられる前に辞職して、私の専属騎士になりたいと言う。


 彼もかなり悩んでいたようだが、自分なりの結論を出して進路を決めたようだ。

 いままでとは違う道を選ぶことにした彼だが、簡単に進路変更――とはいかない。

 ティアーズ騎士団の仲間や団長、領主様の期待を背負って王都までやって来たというのに、それを全部放り投げてしまったのだ。

 簡単にいえば面子を潰してしまったわけだが、すでに団長と領主様には謝罪の手紙を送っているらしい。


 いきなりとんでもない選択した彼に、2人とも怒っていないという。

 なんとなく、こうなるんじゃないかと察していたのかもしれない。

 仕事を辞めるとなるとパワハラかましてくるようなクズ上司ではなく、ティアーズ領は人格者揃いでよかったと思う。

 丸く収まった感じはするが、ジュン様の内心は複雑だろう。

 ヴェスタを近衛に入れて経験を積ませ、後々はティアーズ騎士団の団長にするつもりだったのだから。

 また人選から始めなくてはならないだろう。


 ああ、けどそうなると、あのグレルが次期の団長ってことになったり?

 彼も腕は確かみたいなんだけど……。

 そもそも、騎士団のトップが素行不良とかやっぱり問題にならない?

 他を見渡しても、ヴェスタに次ぐ人材は見当たらない気がする。

 もっといい人材が入ってくれればいいのだけど。

 今後に期待だろうか?


 ヴェスタに迷いはないらしいし、すでに覚悟を決めてしまったように思える。

 私は彼の願いを受け入れた。

 彼は、私を主として仕える騎士になったわけだ。


 色々とありすぎてパニックになりそうだが、やることはある。

 ドラゴンの鱗を使った回復薬ポーションの製作だ。

 間に揉めごとを挟んでしまったが、無事に完成。

 今までになかった紫色の薬である。

 怪しすぎる。

 怪しすぎるが、試してみなくてはならない。

 この世界じゃ奴隷を使って人体実験をすることもあるようだが、もちろんそんなことはできない。

 自らの身体を使って実験するしかない。


 眼の前に、瓶に入った紫色の薬がある。

 少々怪しい色ではあるが、中々綺麗な色だと思う。

 持ち上げて窓から入ってくる光にかざすと、キラキラと光る。

 いや、見ているだけでは駄目なのだが。


 覚悟を決めて飲むことにした。

 まずは一口。

 どんな効き目があるか解らないのに、全部飲み干すわけにはいかない。

 味は、漢方薬ぽい薄いスープの味。

 作るときにいれた海藻の粉末のせいだろう。


 ――飲んでから1時間ほどたった。

 身体に異常は――少しぽかぽかするぐらいだろうか。

 身体が暖かくなるということは、新陳代謝がアップしているということかもしれない。

 魔物の鱗を少々入れるだけで、こんな違う結果が出てくるなんて。


 問題ないようなので、瓶の1/3ほどを飲んでみた。

 すると、身体から汗が滝のように流れ出す。


「あちあちあち!」

 風邪などで高熱が出て、ぐったり状態とは少々違う。

 辛いものを食べて汗が出ているときとよく似ている感じ。

 メイドからタオルをもらい、拭いても拭いても肌の上を汗が流れて滴り落ちる。


「聖女様! 大丈夫なのですか?」「聖女様、大変」

「だ、大丈夫よ。それよりもドレスを脱がせて、シーツを身体に巻きたいから」

「かしこまりました」

 2人に手伝ってもらいドレスを脱ぐと、予備のシーツを身体に巻いた。

 これなら多少汚しても平気だし。


「にゃー」

「大丈夫だから」

 珍しくヤミが心配している。

 汗をかいているだけで、他に身体に異常はない。

 逆にハツラツとしているぐらいだ。

 身体もかなり軽いから、身体能力向上作用もある感じ。

 汗だくで髪までずぶ濡れだけど。


 脱いだドレスは魔法で洗浄して、ついでに身体も綺麗にした。


「それと、大量の飲み水と塩をお願い」

「すぐにお持ちいたします」

 こんなに汗が出るんじゃ脱水症になるし。

 身体にシーツを巻いたまま椅子に腰かけた。

 とてもじゃないが、人に見せられる格好じゃない。


回復薬ポーションの効き目はあるのかもしれないけど、こんなに汗が出るんじゃ病人やけが人には使えないわね」

「にゃー」

 病人への点滴などがないこの世界じゃ、逆効果になりかねない。


「大量に汗は出るけど、身体能力も上がるみたいだし、そっちの方面で使えないかな」

「にゃー」

 彼の言う通り、脱水症ですぐにぶっ倒れそうだが。

 アルルが水と塩を持ってきてくれたので、白い粒を口に放り込み、がぶ飲みする。

 とても聖女様とは思えない有様だ。

 ヴェスタが見たら卒倒ものだろうか。


「聖女様、なぜ人は塩が必要なのですか?」

 アリスが、私の舐めている塩を見て質問してきた。


「汗をかいたら身体の塩分も抜けるから――という質問かしら?」

「いいえ、そもそもなぜ塩が身体に必要なのかという点です」

 そっちかぁ。


「う~ん、難しいわねぇ。なんと言って説明すればいいのか……人間って頭でものを考えるじゃない?」

「はい」

「頭で考えて――たとえば手を動かすときに、それを伝えるのに塩を使っているのよ」

「塩ですか?」

「そうなの。そんなわけで、動物は塩がないと死んじゃうのよねぇ」

「そういえば、森にいる動物や魔物も岩塩を舐めたりすることがあるようです」

「肉食の動物は、他の動物を食べることで塩を補給しているわけね」

「家畜の牛や馬にも塩をやることがある」

 クロミが家畜にも塩を与えていることを説明してくれた。


「砂糖がなくても大丈夫だけど、塩は絶対に必要だから」

 王都は海の近くなので、塩に困ることはないでしょうけど。


「それで古来から塩は戦略物資とされてきたんですね」

「私の国では、塩がなくて困っている敵軍に塩を送ったとかいう話があってね……」

「敵にですか? なぜ?」

「そりゃ、等しい条件で正々堂々と戦おうという意思表示を示す――と、いうことだと思うけど」

「敵が困っているなら戦いを優位に運ぶことができるじゃありませんか。理解できません……」

 やはり文化の違いなのだろうか。

 話す相手が騎士なら理解できるかな?


 それはいいのだが――。


「あちー! もう我慢できない!」

 私は椅子から立ち上がった。


「聖女様、なにをなされるおつもりですか?」

 私の奇行につきあわされるメイドたちも大変だろうけど、もう無理。


「お風呂よ!」

「あいにく、浴場は準備に時間がかかりますゆえ」

「水はあるでしょ?」

「ございますが……」

「水浴びよ! 案内して」

 メイドが2人で顔を見合わせた。


「……かしこまりました」

 さすがにシーツを巻いたまま外を歩けないので、メイドに頭からかぶるローブを探してきてもらった。

 中は全裸で行きたいのだけど、さすがにマズいと思ったので、寝巻き用の黒いミニスカを着た。


「あ、あの……聖女様、その格好は……」「すごく破廉恥……」

 アリスは顔を赤くしていて、クロミにはなぜか受けている。


「ローブで見えないから大丈夫よ」

 ローブを頭からかぶると、メイドのあとをついていく。

 お城の中だから近衛の護衛は要らないと言ったのだが、仕事なのでついてくるようだ。

 護衛という名の監視の仕事もあるのだろうけど。


 廊下を歩いていると、私の部屋から少し離れた場所にある扉からアルルが顔を出した。


「聖女様、お出かけですか? 我々もご一緒に」

「浴場に行くだけだから」

 彼女には待機を命じると、ヴェスタも顔を出した。

 2人ともここの部屋に控えているのだ。


 私の部屋の前には警備の近衛騎士たちがいるが、そこから離れた場所に小さな部屋を貸してもらった。

 元々物置だったようだが、掃除道具が少々入っていただけで使っていなかった。

 そこを私の従者たちの詰め所にしたわけだ。

 小さな机と椅子が置かれた部屋にヴェスタとアルルが一緒にいる。

 ルクスは基本、外で情報収集中だ。

 私が移動すると、かなり離れて2人も影のようについてくるのだが、浴場に行くだけなら近衛の護衛だけで十分だろう。


 色々あって私の直属となったヴェスタだが、このお城では食客扱い。

 少々肩身の狭い状態になってしまった。

 そりゃねぇ、騒ぎを起こして退団した騎士が、ずっとお城に残っているわけだから、冷たい目に晒されることになる。

 お世話してくれる人もいないから、全て自分でやらなくてはならないし。

 雇う人が増えてしまった私も大変だ。

 彼らが暮らせるだけのお金を稼がなくてはならない。


 聖女の力を使ってお城で治療をしているわけだが、幸い相手はお金もちの貴族ばかり。

 謝礼は沢山もらえるので、しばらく資金的に困ることはないだろう。

 私が雇っている人たちには、定期的にまとまったお金を渡すことにしている。

 経理をやってくれる人もいればいいのだけど……。

 そうなると、本格的に会社組織みたいになるしねぇ。


 私――聖女に雇われている人たちの住処は、お城の敷地内にある使っていない宿舎。

 木造の古い平屋であるが、まだ十分に使えるので、そこを借りている。

 アルルやルクスもそこを清掃&リフォームして寝床にしているので、ヴェスタもそこに加わることになる。

 ルクスによると裏に厩舎を作りたいという話。

 私もその資金を出してあげるつもりだ。

 その前に、治療にやってくる貴族たちに話して、大工などを斡旋してもらえないだろうか?

 せっかく治療という行為から人脈を構築できるのだから、大いに使うべきよね。


 株式会社聖女の運営を考えていると目的地に到着した。

 やって来たのは、聖女のお披露目のときに身体を清めるために使った浴場。

 護衛の騎士を外に待たせて、私は中に入った。

 さっきアリスが言ったとおりに、準備ができていないので、がらんとしていてお湯も当然張られていない。

 まるで倉庫みたいな感じ。


 そんなのはどうでもよく、水を浴びられればいいのだ。

 部屋の一角に水が溜まっている場所がある。

 外にある風車で地下水を汲み上げているのだ。

 風車は風があると動いているので、ずっと新しい地下水が供給されている。


 私はローブと黒いワンピースを脱いで裸になると、桶で水をかぶった。

 あまりに暑かったので、勢いよくいってしまったのだが……。


「にゃぁぁぁ!」

 冷水を頭から被った私は飛び上がった。


「聖女様!」

「つ、冷たい!」

 考えてみれば、地下水なので冷たいのは当たり前。


「聖女様!」

 外から騎士の声がする。


「だ、大丈夫です! 水が冷たかったもので、おほほ」

「承知いたしました」

 自分でもびっくりしたが、冷水を被って身体の火照りはかなり落ち着いた。

 再び桶に水を汲んで、脚を入れる。


「はぁ~いい気持ち」

 考えれば――あの薬を飲めば、サウナがなくてもサウナ気分に浸れる。

 でも、一歩間違うと危険な薬だ。


 汗をかきまくるという副作用はあるけど、回復薬ポーションは使えると解った。

 これじゃ普通の病人やけが人には使えないけどね。

 そのあと、腹が減りまくって倒れそうになった。

 新陳代謝が爆上げするせいで、カロリーを消費しまくるらしい。


 災い転じて福となす――それを利用して、ダイエット薬として売り出せないだろうか?

 そもそも、この世界は贅沢している人が少ないせいか、太っている人があまりいないのだけど。

 ダイエット薬の需要がありそうなのは、貴族の女性ぐらいなものか。


 元世界なら絶対に売れるのになぁ。


 ------◇◇◇------


 ――ドラゴンの鱗を入れた秘薬を作った次の日。

 お城にやって来た貴族たちの治療などをしていると、突然国王から呼び出された。

 どうやら、エルフたちから再び連絡が入ったらしい。

 相当慌てているらしい。

 緊急だ。


 慌ててメイドと護衛を引き連れて一緒に移動する。

 行き先は、通信施設がある地下の部屋だ。

 エルフたちから新しい要求でもあったのだろうか?


 部屋に入ると、ほぼ前と同じメンバーが揃っていたのだが、エルフの大使が私の顔を見ると掴みかかってきた。


「我々に対する愛を忘れたのかぁ?!」

「きゃぁ! なんなの?!」

 国王が間に入ってくれてなんとか助かった。

 エルフの顔色が変わっている、いったいなんだというのか。


 私の心配をよそに、部屋が暗くなり、通信の魔法が始まった。

 以前と同じように、暗闇にエルフの姿が浮かび上がったのだが――。


「我々に対する愛を忘れたのかぁぁぁ?!」

 エルフの長が開口一番そう叫んだ。


「え? なに?!」

 なんだろうと思っていると、向こう――つまりエルフの里側がずいぶんと騒がしい。

 沢山の人たちの声が聞こえてくるようだ。


「サシャラ殿、いったいどうしたというのですかな?」

「とぼけるな! そこにいる聖女の差し金だろうがぁ!」

 エルフの偉い人が私を指した。

 差し金って言うんだ。


「はぁ?!」

 まったく意味がわからないと戸惑っていると、エルフの後ろになにかが落ちてきて床に食い込んだ。

 ホコリがもうもうと舞い上がり、キラキラと綺麗な光の筋が浮き上がる。

 上から日差しが入り込んでいるので、おそらく天井が抜けたものと思われた。

 部屋の中にいたエルフたちが慌てふためき右往左往――パニック状態だ。


「エルフの里が、クソ鳥どもの襲撃を受けているのだ!」

 突然、モモちゃんが出ていってしまったので、私はピンときた。


「あ~、それは――お城にいるハーピーを排除しようとしたので、エルフそのものが敵認定されてしまったのでは……」

「このままでは、里が全滅するだろうがぁ!」

 そんなの知らんがな。

 石ははるか上空から降ってくる。

 魔法や武器があったとしても、上空数百メートルまで届かないだろう。

 元世界にあったような近代兵器でもあれば別だが。


「それでは、ハーピーたちと聖女には干渉しないと宣言してください」

「ぐ! ぐぬぬ……」

 美しい顔が怒りで歪みまくっている。


「一旦そうなってしまうと……おそらく、エルフがどこに行ってもハーピーたちに追いかけられますよ」

 空から見れば、エルフがどこに移動しようが一目瞭然。


「認識阻害の結界があるというのに……」

 エルフの長がなにやらブツブツ言っているのだが、その間にも大きな石が建物を破壊した。

 私がハーピーたちに魔法の袋をあげてしまったので、建物を破壊できるような石も持ち運ぶことができるようになってしまったのだろう。


「どうしましょう?」

「クソ忌々しい魔女め!」

 もう、また魔女って言われた。

 ええ? これって私が悪いの?

 どうでもいいけど、エルフって口悪いよねぇ。

 めちゃ美人さん揃いなのに……。


 しばらく悩んだ末、エルフたちは両手を挙げて降参したようだ。

 ハーピーの排除も取り消してくれた。


 通信が終了したあと、里のエルフのほとんどが集まり降伏。

 ハーピーの攻撃部隊と交渉をしたらしいと――顛末を国王から教えてもらった。

 お互い嫌いなんだから、双方不可侵という取り決めになったという。

 幸い、エルフたちに怪我人は出ていない。

 これで犠牲者が出たりしたら、さらに禍根を残すことになってしまっただろう。


「にゃー」

 ヤミの話でも、エルフがこういう形で完全敗北を認めるのは、中々ないことだという。

 なんかねぇ――謝罪したら死んじゃうみたいな人が多そうだし。

 揉めている2種族は深い森の中で休戦状態になっているのだが、今回の騒ぎの発端となったエルフたちに反省の色が見られているのかといえば――まったくそんな感じはない。

 反省の二文字がない生きものなのかもしれないし。


 エルフの大使もしょんぼりしていたので、しばらくは大人しくなるだろう。

 よかった。


 そうそう――エルフとのごたごたですっかりと忘れていたが、ヴェスタの近衛退団、私の専属になる件は国王から了承された。

 処分なしというわけにはいかなかったので、国王もどうしようか悩んでいたらしい。

 私の提案は渡りに船だったようだ。

 私はそれでいいのだが、ヴェスタはそれで問題ないのだろうか?

 聖女の専属になるとはいえ、お城での立場はかなり下になると思われるのだが……。


 色々と揉め事も一応片付き、あとは近衛同士の模擬戦だけなのだが――普通に考えたら、地方の精鋭を集めた青い騎士団が貴族のボンボンたちに負けるはずがない……。


 最近、その近衛騎士団の団長さんの元気がない。

 いったいどうしたのだろう?

 光が斜めから差し込むお城の廊下で会った彼に話しかけてみた。


「あの、カイル様――ずいぶんとお疲れのようですけど」

「いや――聖女様、なにも問題ありません……」

 どうみても、問題ないようには見えない。

 いつも元気な吠えるライオンみたいな騎士が、目の下にクマを作っているのだから。

 元気がなくなったのが原因なのか、彼の言葉使いはいつもより丁寧になっている。

 面白い――いや、面白がっちゃいけないか。

 それよりも、話を聞いてみなくては……。


「お困りになっていることがあるのでしたら、ご相談に乗りますよ?」

「いや、聖女様にご心配をかけるわけには……」

「それでは、陛下に……」

「そ、それは待っていただきたい!」

「陛下に呼び出されて『なにがあった?』と聞かれて嘘を言ったら、忠義を問われますよね?」

「うう……」

 無理やり聞き出す必要もないのだが、こういう真面目な人は抱え込んだりするし……。

 そう、豪快だけどすごく真面目な人なのだ。

 私の護衛をしている近衛騎士も、心配な顔をしている。


「団長! ご心配ごとがあるなら、青の騎士団全員で解決いたしましょう?!」

 部下の励ましにも彼の言葉は少ない。


「いや、ただの私事だからな」

 人に聞かれたくないようなので、ひそひそ話をする。


「誰にも話しませんから」

「……」

 解ってくれたのか、私には話してくれるつもりになったようだ。

 誰かに話すだけでも楽になることもある。


 人払いをして、2人で庭の一角にある場所にやって来た。

 垣根に囲まれた白い屋根がついた小さなスペースがあって、白いテーブルと椅子が置いてある。


 ああ、こういう場所見たことがあるなぁ。

 王侯貴族のお嬢様がお茶会をしてキャッキャウフフしたり、陰謀や策略を巡らす悪巧みを話し合ったりする場所ね。


 そこに2人で座ると、なにがあったのか話を聞いてみることにした。

 彼の表情を見る限り、ただごとではない気がするのよねぇ。



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