表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/98

53話 上空からの爆撃


 この世界は足の速い獣人たちによる飛脚網が整備されている。

 急ぎ王都に向かわなければならなくなったので、私はその飛脚たちに目をつけた。

 彼らに背負ってもらえば、すごい速さで移動できるってわけだ。

 体感では時速60kmほどで巡航できている。

 このまま順調に行けば、夕方ごろには王都に到着できるはず。

 珍しい女性の飛脚に背負ってもらい、次の街であるメデスレイという所に向かっている。


 順調に進んでいたと思ったら、向こうから慌てて馬車が走ってくる。

 一言しか言葉を交わさなかったのだが、野盗がいるらしい。

 野盗――すなわち強盗やら追い剥ぎの類だ。

 こっちは急いでいるのに。


「もう! ねぇ、そいつらが見える場所まで行ってくれない?」

「ええ? マジで?!」

 三毛がこちらを見た。


「危なくなったら、あなたたちの脚なら逃げられるんでしょう?」

「そりゃ、そうだが……」

 三毛と黒白も乗り気じゃないらしい。


「それじゃ、特別料金で金貨1枚!」

「え?! マジで?!」

 三毛が首をひねってこちらを見た。


「本当よ。別に至近まで近づけとは言わないわ」

「よし、解ったぜ!」

 私たちについてきているモモちゃんには、上空に退避してもらう。


「ノバラ、大丈夫か?!」

「大丈夫よ」

「ノバラ強いしな!」

 モモちゃんが上空に舞い上がった。


「にゃー」

「こんな所で足踏みしてられないから」

「それじゃ、行くぜぇ」

 三毛は完全にやる気モードだ。


「無理はしなくてもいいからね」

「おいおい、本当に行くのか?」

 どうやら黒白は乗り気じゃないみたい。


「別についてきてとは言わないから、安全な所にいるか、ホープレスに戻ってもいいわよ」

「じょ、冗談じゃねぇ。飛脚が野盗にビビって逃げたとか笑い者よ」

「そうやって強がるから、痛い目に遭うんだよ」

「うるせぇ!」

 三毛の茶化しに黒白が反応する。

 喧嘩をしている場合ではない。

 とりあえず、現場に行ってみないことには。

 そこでやっつけるか、助けるか、突破するか、それとも引き返すか――判断しなくては。

 急ぐ旅ではあるので可能な限り前に進みたい。

 一旦、降ろしてもらう。


「とりあえず――いざというときのために、半分ほど飲んで」

 私は三毛に回復薬ポーションを渡した。


「回復薬か? いいのか、こんな高価なもの」

「私が作ったものだから」

「そうなんだ、あんたすげーな!」

 そう言って彼女は、薬を半分飲んだ。

 あの虎柄の感じからすると、全部を飲むとやっぱり効きすぎるみたいだし。


「あなたも飲んどく?」

 黒白にも聞いてみる。


「もらえるんなら、ありがてぇが……」

「いいわよ、半分だけね」

「ありがてぇ!」

 袋からカップを出すと、そこに三毛からもらった薬を開けた。

 間接キスは嫌だろうし。


「おっしゃ、こいつで百人力だぜ!」

「よっしゃ、それじゃいくぜ!」

 彼女が気合を入れると、私を担ぎ直した。


「にゃー」

「無理をするつもりはないけどね」

 私を背負った三毛は、猛スピードで走り始めた。

 このままの勢いで一気に突破できそうではあるが……。

 少し木が生い茂った部分に差しかかると、大きな馬車が止まっていた。

 その周りに10人ほどの男たちがいる。

 ボロいTシャツに黒めのズボン、頭に被り物をしていたり、いかにも盗賊みたいな格好。

 剣を持って武装している。


「やっぱり野盗だ!」

「止まって!」

「おう!」

「む~! 光弾よ! 我が敵を撃て!(マジックミサイル)

 私の周りに顕現した10本ほどの光の矢が次々と発射されて、男どもに命中した。


「げっ!」「ぐぇ!」「ぎゃ!」

 5人ほど倒れたのだが、半分が残っている。

 命中率は50%――あまり高くない。

 もうちょっと近づけば、もっと当たると思うのだが。


「なんだ?! ねぇさん、すげー魔法だな!」

 三毛が私の魔法に驚いているのだが、それは敵も一緒だ。

 突然の攻撃に、明らかにうろたえている。


「うわ!」「なんだぁ?!」「魔法だぁ?!」

 周りを警戒していた悪党どもが、こちらに気がついたようだ。


「魔法を撃ったのはあいつらだ」「なんだ? 獣人だぞ?!」「いや、背中に女をしょってるぜ!」

 男たちがこちらに向かってくる。


「距離を取って!」

「任せろ!」

 機動力では、獣人たちには敵うまい。

 素早く距離を取ると、再び光の矢がを放とうとしたのだが――。


「おい待てや! おげ!」

 迫ってきた男の1人がいきなり倒れた。

 倒れるというか、大きな力で押しつぶされて崩れ落ちた感じ。

 地面に人間の頭ぐらいの石がゴロゴロと転がっている。

 思うに上から大きな石が降ってきて、そいつが直撃したようだ。

 倒れた男が地面と頭を真っ赤にして地面で痙攣している。


「うわぁ……」

 ちょっとグロいものを見てしまった。

 空から降ってきたようなので、上を見るとハーピーが飛んでいるのが見える。

 モモちゃんだ。

 彼が魔法の袋から出した石を落としたに違いない。

 前に私が考えていたことを、彼が実行したのだと思われる。

 彼ができるということは、他のハーピーたちも当然できるだろう。


「なんだ?! 石?!」「どこから飛んできた?!」

 突然のできごとに、野盗たちがビビって辺りを見回しているが、そんな所にいるはずがない。

 石を落とした主は空高くを飛んでいるのだ。


「チャンス!」

 私が再び魔法の矢を放つと、バタバタと男たちが倒れた。


「く、くそ! なんでこんな所に魔導師がいるんだ!」「やべぇぞ! かなりの手練だ!」

 最後に残った2人は、魔法には敵わないと思ったのか、背中を向けて逃げ始めた。

 ガサガサと草むらの中に入っていく。


「追っかけて!」

「おう!」

 獣人のスピードであっという間に追いつくと魔法を放った。


「ぐぇ!」

 背中に光の矢が命中した悪党がもんどり打って草むらに倒れ込んだが、1人逃してしまったか?

 どうしようかと迷っていると、白い翼が降りてきて草むらの中に突っ込んだ。


「ぎゃぁ! なんだ!? ぎゃぁぁ!」

 男の叫び声が聞こえたあと、長い草をかき分けてモモちゃんが出てきた。

 脚の先が血だらけだ。


「モモちゃん!」

「男は目を潰した。逃げられない」

「あ、ありがとう……」

 軽く言われてしまったのだが、これが彼らの攻撃なのだろう。


「ノバラ!」

 彼がいきなり、爪を向けてこっちに飛んできた。


「なんだぁ?!」

 私を背負っている三毛が驚いて飛び退くと、そこに矢がかすめる。

 どこかに弓を持った敵が隠れていたのであろう。


「あそこ!」

 モモちゃんが翼で指す方向に敵がいるらしい。

 あそこと言われても私の目では解らないが、敵は木の上のようだ

 隠れていそうな所に、十数本の魔法の矢をまとめて撃ち込む。


「……」

 なにかが木から落ちてきて、地面で大きな音を立てた。


「ふう……これで全部かな?」

「多分!」

「にゃー」

 モモちゃんとヤミによれば、気配はないみたい。

 気配って解るものなのかな?


 それよりも怪我人はいるだろうか。

 襲われていた馬車の所に行ってみると、ちょっと小太りの中年が車輪にもたれかかって倒れていた。

 少々上等で派手な服を着ているので、おそらく商人であろう。

 悪党だって馬鹿じゃない。

 金がありそうな馬車を選んで狙ったに違いない。


「うう……」

 倒れている男の隣に、白いワンピースを着た金髪の女性がいる。

 従業員という感じではなさそうだし、髪を後ろでまとめているので奥さんだろうか。


「怪我を見せて」

「野盗どもに左腕を切られて」

 女性が答えたとおり、男の左下腕に切り傷があり、引き裂かれた服は真っ赤に染まっている。


「傷はかなり深いみたいだけど、骨折はないみたいね」

「うぐ……」

 回復薬ポーションで治るだろうか。

 かなり深く切れているし、やっぱりすぐに治したほうがいいかもしれない。


「まずは消毒ね――洗浄クリーン!」

 青い光が舞うと、服の染みなどが綺麗になるが、すぐに傷口から赤いものが溢れ出てくる。


「にゃー」

「モモちゃん、私の力を使うから守って」

「解った! 俺に任せろ!」

「ひ?! は、ハーピー?!」

 女性の顔がひきつる。


「大丈夫よ。私の友だちだから」

 そんなことより治療だが、軽く祈って血を止めるだけでいいだろうか。

 とりあえず、やってみることにした。

 神様に祈る――。


「ノバラ!」

 モモちゃんの声で我に返った。

 多分、私がフリーズしていた時間は数十秒ではなかろうか。

 男の腕を見ると血は止まっているようだ。

 上手くいったので、私は自分の袋から回復薬ポーションを取り出した。


「薬です。飲んでください」

「あ、あのおいくらですか?」

「いつもなら銀貨1枚だけど……」

 彼女が、銀貨を手渡してよこした。

 やはり奥さんっぽい。


「主人の傷は治ったのでしょうか?」

「とりあえず血を止めただけ。魔法でくっつけただけだから動かさないでね」

 本当は奇跡だが、聖女ってことはまだ内緒なので魔法ということにしておく。


「ノバラ、すごい!」

 モモちゃんが傷口をじっと見ている。

 奇跡で治るのが不思議なのかもしれない。


「あ、ありがとうございます」

 男のほうもお礼をしてきた。


「多分、その薬を飲めば大丈夫だと思うけど、しばらく安静にしててね」

「……はい」

 怪我人の治療を終えて私が振り向くと、剣を持った三毛が悪党を引きずって道端に並べていた。

 ちょっと異様な光景に私はたじろいでしまった。


「え? なに?」

「はは、ちゃんと全員の止めを刺しておいたぜぇ」

「ええ?!」

 私の魔法では、死んでいなかったはずだが……。


「あれ? もしかして止めを刺したかった? ねぇさん、いい所のお嬢様みたいだったから、多分こういうのをやったことねぇんだろうなぁ――と思ってたんだけど」

「あ、あの――は、はい。ありがとうございます」

「やっぱり、やってもよかったんだ。あたいは傭兵もやってたことがあるからさ。任せておいてよ」

「はい」

 そう返事をするしかない。

 一緒に黒白も手伝っているのだが、驚いた節もなく淡々とやっている。

 まるでそれが日常かのように。

 確かに悪党どもを逃しては、また悪事を働くだろうし。

 役人に突き出すにしても、これだけの人数を街まで運ぶ手段がない。

 ――そうなると、やはり殺すしかないのだろうけど……。

 彼らは普通にやっているし、襲われた商人たちもなにも言わない。

 これがこの世界の常識ってやつなのだろう。


 誰も周りにいなかったら、私がやることになるし。

 そのときがきてもいいように覚悟は決めておかなければ……。

 見れば、ハーピーの投石によって頭を割られた男や、目を潰された死体もある。

 ヤミが転がった男たちをクンカクンカしている。


「ノバラ!」

 ハーピーが飛んで私に抱きついてきた。


「モモちゃん、助けてくれてありがとう」

「ノバラ、俺を助けた! 俺も、ノバラを助ける!」

 そう、ここは元世界とは違う。

 悪党に情けなどかければ命取りになる世界なのだ。


「ここに並べて、それからどうするの?」

「そこの商人たちに、街で報告してもらうのが手っ取り早いね。実際に、襲われたわけだし」

 三毛に説明してもらう。

 そのあとは、街から回収屋が来るらしい。

 適切な処置をしないで放置すると、アンデッドになってしまうらしいし。


「魔導師がここまできて処置をすれば、ここに埋めてもいいんでしょ?」

「はは、奴らがここまで来ればな」

「ねぇさんは、死体の処置はできねぇのかい?」

 黒白の疑問は、すごい魔法が使えるなら死体の処置もできるんじゃないかということだろう。

 もしかして、聖女の力を使えばできるかもしれないが……。

 一応、聖女ってことは秘密だし。


「私は魔女だからね。正式な魔導師の魔法は知らないのよ。勝手にそんなことしたら魔導師に睨まれるだろうし」

「まぁな、普段から奴らは魔女を目の敵にしているからなぁ」

 黒白もそういう事例を見ているようだ。

 魔導師でも、悪事を働いて資格を取り上げられて魔女に落とされる者もいる。

 そういう連中は死体の処理もできるのだろうが、見つかったら大変だ。


「ねぇさん、ほい!」

 三毛が私に袋を投げてよこした。


「これは?」

「野盗の親玉っぽいやつが持ってた袋だよ」

 つまり、死体から剥ぎ取ったものだろう。


「私がもらってもいいの?」

「ええ? だってほとんどねぇさんがやったんだぞ? そのハーピーが仕留めたのもあるが……」

「俺はいらない」

「あなたたちに分前は?」

「動かないやつらに止め刺しただけだしねぇ。本当に分前を貰えるなら、この剣をもらってもいいかい?」

 彼女の手には、野盗たちの止めを刺すために使った剣が握られている。

 おそらく悪党の誰かが落としたものだろう。


「もちろん、いいけど……」

「本当かい? これなら売れば、銀貨2枚(10万円)にはなりそうだぜ。儲けたぜぇ!」

「ほんじゃ俺は、この短剣をもらってもいいかい?」

 黒白の手にも短剣が2本握られていた。

 こういう武器も、他の者たちから奪ったものなのかもしれない。


「いいわよ」

「やったぜ! いやぁ、金貨はもらうし。野盗討伐して分前をもらうし」

「本当はあたいたちが街まで運んで、こいつらに賞金がかかっていれば、それももらえるんだけど」

「ごめんね。急ぐんで、そんなことをしている暇がないの」

「おっと、そうだった! 久々に面白いことがあったので、すっかりと仕事のことを忘れていたぜ、あはは!」

 獣人たちは、奪った剣や短剣を自分の袋にしまった。

 店から借りているものらしいが、私物も入っているのだろう。


 商人たちの所に行く。


「私たちは急ぐから行くけど、大丈夫?」

「は、はい、ありがとうございました」

 腕を切られた男も、回復薬ポーションが効いたのか、顔色がよくなってきた。


「それじゃ」

「あ、あのお名前は?!」

 女性が私の名前を知りたいようだ。


「ティアーズ領の森に住んでいる魔女のノバラよ」

「ありがとうございました」

 2人が再び頭を下げた。


「モモちゃんも、ありがとうね」

「おう! 悪いやつがノバラに近づかないように空から見ているからな!」

「あはは、ありがとう」

 モモちゃんは、ずっとついてくるのだろうか。

 あまり無理をする必要はないのだが。

 私はゲットした魔法の袋を自分の袋に入れた。


 道端に並んでいる野盗たちの亡骸を見る。

 この男たちも――まさか自分の人生がここで終わるなんて思ってもみなかっただろう。

 前世の行いが悪かったのかなぁ。

 ふと思ったのだが、気になるので聞いてみた。


「2人は、生まれ変わりって信じているの?」

「あん? 教団の奴らは、普段からよい行いをしていれば、次に生まれ変わったときに金持ちになれるなんて言ってるけどなぁ」

 突然の私の変な質問に、2人が怪訝な顔をしているが、一応そういう教義はあるらしい。


「あたいは信じてないよ」

「変なことを聞いて、ごめんなさい」

 出発の前に、皆を並べて魔法の洗浄を使う。

 トラブルに首を突っ込んだせいで、色々と汚れてしまったせいだ。


「魔法が使い放題なのは、ありがてぇ! 血が毛皮につくと、カピカピになって取れなくてさぁ!」

 綺麗になった毛並みに、三毛が喜んでいる。


「そうだよなぁ、こんなに魔法を使いまくったらいったいいくら取られることか……」

 脚が血だらけだったモモちゃんも綺麗になった。


「ノバラ、好きー!」

 彼が私に抱きついてくる。

 人がいるところで、あんまり好き好きアピールは勘弁してほしいのだが。


「ねぇさん、ハーピーなんて遭うだけでも難しいのに、どうやってそんなに仲良くなったんだい?」

「彼らがワイバーンに襲われているところを助けてあげたのよ」

 魔物の名前を聞いた三毛が尻尾を太くした。


「ワイバーン?! 嘘だろ?」

「本当よ。私だけじゃなくてティアーズの騎士団もいたけど」

「本当だぞ! ノバラ、ワイバーン2匹倒した! ノバラ強い!」

「2匹?! マジで?!」「本当かよ?!」

「本当なのよねぇ。信じられないかもしれないけど……」

「「……」」

 獣人たちの、私を見る目が変わった気がするが――気のせいだろうか?

 いや、こんなことをしている場合ではない。

 片付いたなら、早々に出発しなければ。


「それじゃ出発してもいい?」

「あ、ああ」

 三毛が、ちょっとおどおどしている。


「にゃー」

「それじゃなノバラ! また来るぞ!」

 モモちゃんが道をダッシュして、空に舞い上がった。


「それじゃ、お嬢様……」

 そう言って、三毛がしゃがんだ。


「え? なにそれ? 私、お嬢様じゃないから」

「だって、ワイバーンを倒して騎士団とかとも知り合いなんだろ?」

 彼女がしゃがんだまま、こちらを向いた。


「まぁ、確かに知り合いだけど」

「それは間違いないぞ! 俺が手紙を届けたとき、ティアーズの領主様と騎士団が一緒にいたからな」

 黒白がフォローを入れてくれたのだが、顧客の情報を漏らしてコンプライアンスは大丈夫なのだろうか?


「それじゃ、領主様の関係者じゃねぇか!」

「いやまぁ、関係者っていえば、そうなんだけど……」

「悪い――あたいは礼儀とかあんまり知らないから……」

 彼女がしょんぼりして、耳を伏せている。

 ちょっと可愛い。


「いいのよ。私は街の魔女だし」

「「……」」

 獣人たちが、「そんなわけねぇだろ」みたいな視線で、こちらをじ~っと見ている。

 耳がイカ耳になっているけど、こういうところがネコにそっくりなのよね。

 彼らは警戒しているようだが、私は嘘を言ってないし。


「まぁ、礼儀とかどうでもいいので、次の街――メデスレイだっけ? そこまで運んでくれればいいから」

「あの~その件なんだけどさぁ。あたいが、ねぇさんを王都まで運んだらいけないかい?」

「え? いいけど、身体は大丈夫?」

「任せてくれ! このぐらいじゃびくともしねぇ。それにさっきの回復薬ポーションもまだあるんだろ?」

「ええ」

「それじゃ決まりだな!」

「まぁ、私もそっちのほうが、ありがたいからいいけど」

 2人に金貨を1枚渡す。

 悪党の所に行ってくれたら渡すと、最初に約束をしていたからね。


「いいのかい?」

「もちろん、危ない目に遭わせちゃったし」

「全然、危なくなかったんだけど……」

「ほら、手伝ってくれたし……」

 私は、道端に並んでいる死体に目をやった。


「それじゃ、ありがたくちょうだいしておく。よっしゃ! それじゃ乗ってくれ!」

「解ったわ」

「にゃー」

 馬車の人たちに、再度別れを告げる。


「私たちは急ぐので、ごめんなさい」

「いいえ、ありがとうございました。ご恩は一生忘れません」

 奥さんと思われる女性が礼をした。


「こいつらに賞金とかかかっていたら、あなたたちが受け取っていいから。怪我はしたし、慰謝料としてもらっておいて」

「ありがとうございます」

 出発だ。


「いくぜ!」

「にゃ」

 三毛が私を背負って走り始めた。

 彼女はこのまま王都まで向かうつもりなのだが、大丈夫であろうか。

 少々心配であるが、実際に走っている彼女が大丈夫だというのだから、いけるという判断なのだろう。


「王都までって大丈夫なの?」

「はは、大丈夫大丈夫!」

「なんで王都まで行こうと思ったの? もちろん、お金は払うけど……」

「いやぁ……ねぇさん、すごい人なんだろ? いや、絶対にそうだし! そういう人とお城まで行ってみたいじゃん」

 子爵からの返事を持った黒白もお城まで行くのだが、どうやって手紙を渡すのだろう。

 彼に聞いてみた。


「門まで行くと手紙の係がやって来てくれるんで、そいつに渡すだけですぜ」

「そうなんだ」


 私と獣人2人、ネコ1匹で、王都にあるお城まで行くことになった。

 空にはモモちゃんもいるみたいなのだが、彼も王都までついてくるのだろうか。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124fgnn52i5e8u8x3skwgjssjkm6_5lf_dw_a3_2
スクウェア・エニックス様より刊行の月刊「Gファンタジー」にてアラフォー男の異世界通販生活コミカライズ連載中! 角川書店様より刊行の月刊「コンプティーク」にて、黒い魔女と白い聖女の狭間で ~アラサー魔女、聖女になる!~のコミカライズ連載中! 異世界で目指せ発明王(笑)のコミカライズ、電子書籍が全7巻発売中~!
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ