11話 回復薬(ポーション)
森に生息している魔物に対抗するために、攻撃に使える魔法の実験をした。
上手く成功したのだが、かなりの威力に戸惑ってしまう。
こんな威力が果たして必要なのだろうか?
この世界のことはなにも解らないので、どうやって使っていいのか悩む。
やはり実践をして経験値を積むしかないってことだろう。
今のところ相手は魔物を想定しているのだが、これが悪意のある人間になったら、私はどうすればいいのか?
人を殺めることに手を染めなければならないのだろうか?
魔法が上手くいったので、今度は回復薬だ。
幸い、先輩が残してくれた本に製造法が載っており、ここに材料も揃っているようだ。
私は、材料の薬草を揃えると、本棚の奥に隠されている階段から地下に降りた。
地下は真っ暗なので、魔法のランプを灯す。
「よし!」
気合を入れてまずは掃除だな。
魔法を使う。
「洗浄!」
地下室に青い光が舞うと、棚や机に積もっているほこりが滑るように落ちていく。
やはり汚れがへばりつくのを妨害する魔法のようだ。
それにしても、地下で締め切っているのに、ほこりが積もるんだよねぇ……。
このほこりはどこからやってくるのだろう。
完全密封していれば、ほこりなどは入ってこないだろうが、やはり隙間があるとこうなるんだろうね。
床に溜まった埃をチリトリに集めて、ガラスの入れ物の中に入れた。
本を開いて回復薬の作り方をおさらいする。
まずは水。
水石を入れて一晩置いた水に、5種類の薬草を入れてコンロで加熱する――と、書いてあるのだが、どのぐらいの分量の水と薬草がいるのか、さっぱりと解らない。
地下室には上皿天秤もあったのだが、正確な分量が書いていないのだ。
ここらへんは、経験を積んで目分量で決めるしかないらしい。
ちょっと大雑把だが、本にはこうも書いてある――「薬草は補助的なもので、重要なのは魔力の質である」
そうなのか。
「う~ん?」
さて、困った。
そうはいっても、どのぐらいの分量を作ればいいのだろうか?
「にゃー」
「あ、ねぇねぇ、回復薬って、どういう容れものに入っているの?」
「にゃ」
彼が肩に乗せろというので乗せてやると、棚の上のほうを指している。
「これ?」
棚の上には木の箱があった。
それを降ろしてみると、中には蓋がついたガラスの小瓶が入っていた。
数は5本で、真ん中が膨らんだ香水が入っているような形をした瓶だ。
この瓶だけでも結構な値段がしそうである。
「それじゃ、これに5本分を量って水を入れればいいのね」
台所にある瓶には水石がはいっており、井戸から汲んだ水が入っている。
それが使えるだろう。
魔法で綺麗にした瓶を1本持って上に行くと、5本の水を量って鍋に入れる。
次は薬草だ。
天井にぶら下がっているものから4種類を探すと、お目当てのものを見つけた。
残っている材料は、乾燥した薬草ではなくて、生の実なのだが……。
どうやら丸い赤い実らしい。
私は図鑑を持って庭に出た。
たいていの薬草は庭に植えているようだから、最後に残った1つもここにあるのではないか?
庭の中を探す探す探す――見つけた。
家の隣に大きな木があるのだが、その木陰に生えていた。
蘭なども、こういう場所に育つので、この木は植物の環境を整えるために植えられているものなのだろう。
私が探している薬草の他にも色々な草花が育っている。
さながら小さな植物園だ。
これだけの薬草を採取して栽培方法を見つけるなんて、先輩はさぞかし苦労したに違いない。
「ありがとうございます」
先輩に感謝して、赤い実を摘む。
もっと大きなものを想像していたのだが、思いの外小さかったので、5つほど摘んだ。
1瓶に実が1個という計算だ。
薬草は補助的とは書かれているが、投入する分量はメモして試行錯誤が必要だろう。
目分量とか適当とか、ちょっとモヤモヤするんだよねぇ。
水がなんmlに対して、薬草がなんmg――とかさ、そういう感じじゃないと。
どの比率が1番効果を発揮するとか、そういうのがあるじゃない。
日本人なら、ちょっと気になるよね?
人に教えるときにも、便利だしさぁ……。
まぁ、下には秤もあったようだし、それはおいおい考えることにしよう。
とりあえず材料が揃ったので、地下に降りて魔法で動くコンロの上に水が入った鍋を置いた。
その中に5種類の薬草を投入すると、ことことと煮込む。
「あ、煮込むと蒸発して、水が少なくなるじゃない!」
その分も計算しておかないとだめか。
上の瓶から水を少し持ってきて、鍋に足す。
どうにもアバウトなのでモヤモヤするが、あまり神経質になっても仕方ない。
今回は、お試しなのだ。
「煮汁が濃い茶色になったら、人肌まで冷ます――か」
これまた人肌ってのは36℃なのか37℃なのか。
温度計がほしいのだが見当たらない。
地下室で待っていられないので、鍋ごと上に持ってきた。
台所に置いて冷めるのを待つ。
その間、私は図鑑でお勉強しつつ、たまに鍋に指を入れるが、この行為がなにか問題になりそうで困る。
悩みつつも、10分ほどで人肌になった。
「なになに――ここからが大切。魔力を煮汁に注ぎ込み、赤く変色したら完成」
ちなみに、赤は鮮やかなほうができがいいということになるらしい。
それはさておき、人肌の温度という指定があるので、悩んでいると温度が下がってしまう。
私は鍋に手をかざし、魔力とやらを注ぎ始めた。
その前に、鍋が黒いので赤くなっているのかどうなのかが解らない。
少しやっては、ガラスの入れ物で掬ってみる。
「まだね……むぅぅ」
中々色が変わらないので、盛大に魔力をぶち込んでみた。
青い光がどんどん鍋の中に入っていく。
「ふう……こんなもんじゃない?」
ガラスの入れ物で掬うと、中には鮮やかな赤い液体が溜まっていた。
「やったぁ! どうよ?!」
テーブルの下にいたヤミに見せてドヤ顔をする。
「にゃー」
「そうなの?」
どうやら、彼が見たことがない色になっているらしいのだが、失敗なのだろうか?
「じゃぁ失敗なの?」
「にゃ」
色の具合はともかく、赤くなれば回復薬としては一定の効果は望めるらしい。
「それじゃ成功なのね?」
「にゃ」
「おっと!」
できあがった回復薬は、空気にふれるとどんどん劣化する。
早めにガラス瓶に入れて保存をしなければならない。
魔法の袋に入れておけば、その点でも安心だ。
ガラス瓶を用意して、漏斗を差し込む。
布をフィルター代わりにして、できあがった液体を注ぎ込んでいく。
透明なガラスが鮮やかな赤に染まる。
「綺麗……」
なにやら、キラキラと光っているのだが、ゴミが入ってしまったのだろうか?
「にゃ」
「これでも大丈夫なのね?」
「にゃ」
鍋の中には薬草の出し殻が残ったので、そいつを絞ってみた。
スプーンに1杯ぐらいの赤い液体が残る。
「う~ん、ものは試しだ。飲んでみようか」
回復薬ってのは、いったいどういう効果があるのか、身を持って知っておく必要がある。
しばらくスプーンの赤い液体を見つめていたが、意を決してそれを口に入れた。
「ゴク!」
味は――ほんのり甘い。
枯れた薬草が甘いわけじゃないだろうし、小さな赤い実の甘みだろうか?
飲んだ直後は別段変化はなかったのだが、すぐに身体が軽くなるような感じに襲われる。
「う~ん、病気や怪我をしているわけじゃないから、いまいち効き目が解らないなぁ」
これで本当に治るのだろうか?
「にゃー」
治るらしい。
「でも、これって――私が注ぎ込んだ魔力を自分に戻しているだけのような……」
「にゃ」
似たようなものに魔石がある。
魔力を蓄えた魔石で他の人に魔力を渡せるのだが、それだと普通の人は使えない。
回復薬の形にすることで、魔法を使えない人でも魔力の恩恵を受けることができるのだという。
「それじゃ聖女って人は、回復薬も介さずに直接人を治すことができるのね?」
「にゃ」
「でも、私の怪我と君の怪我が治ったのは?」
「にゃ」
解らないらしい。
「ここの人たちが知らないだけで、魔法で直接治す方法もあるんじゃないの?」
「にゃー」
魔導師の間で、そういう研究もされているようだが、上手くいっていないようだ。
「はぁ、なるほどねぇ」
それはいいとして、とりあえず回復薬を5本ゲットできた。
1本5万円とすると5本で25万円――こちらの貨幣で約金貨1枚。
1日5本量産できたら、150本で月収750万円よ! すごすぎる!
まぁ、1本5万円の薬がポンポン売れるはずがないが……。
それに原料の問題もある。
「にゃー」
「普通は、こんなに一気に回復薬を作ったりできないの?」
「にゃ」
先輩は数日かけて、1本作るのがやっとだったらしい。
そういうのを売って、お金を貯めて、道具やら色々と揃えたんだろうなぁ。
すごく貴重なものとか、私がもらっちゃっていいものなのだろうか。
大切に使わせていただきます、先輩!
できあがった回復薬は、魔法の袋に詰めた。
この薬は劣化するらしいが、袋に入れておけば賞味期限を延ばすことができるだろう。
「さて! 魔法も覚えたし薬も作ったから、いよいよ街へと繰り出すときがきたようね?」
どんな街なのか気になるのだが、そろそろ昼だ。
街に行くのは、明日の朝一にしようと思う。
なにせ、ここには交通機関がないので、すべて自分の脚で歩かなくてはいけないのだ。
「ねぇ、街までどのぐらいの距離があるの?」
「にゃー」
「ニャルラトの村と同じぐらいか……それじゃ歩いて1時間半ぐらいね……」
結構遠いかな?
人間の歩く速さって時速3kmぐらいだと思ったから、4.5~5kmぐらいね。
せめて自転車でもあれば楽なのに。
多分、街では馬や馬車を使っているのに違いない。
さすがに蒸気機関はないだろうと思うし……。
回復薬をもっと作りたいのだが、空瓶がない。
街に行ったら、空瓶も買う必要があるだろう。
忘れないようにしないと。
パン種もまだできないし、時間があるので追加で普通の薬を作ろう。
1包み売れば銅貨3枚――3000円の収入だ。
原価はゼロに近いし、税金もないだろうしねぇ。
元世界では、源泉徴収やら社会保険やらでめちゃ金を取られたけど、それもないし。
まぁ、その税金で社会のインフラを整備しているのだから、払わないわけにはいかないんだけどねぇ。
この世界でそういう税金がないってことは、社会保障やらインフラが整備されてないってことになるわけだし。
夕方には食事をして、夜は植物の勉強をして寝た。
明日は、いよいよ街に行ってみるつもり。
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――回復薬の作製に成功した次の日。
昨日の夕食の残り物で食事を摂る。
栄養をつけたところで、腰には短剣と魔法の袋を装備した。
ローブを被って出発だ。
どうしよう――ちょっとワクワクが止まらない。
差別的だったらどうしようとか意地の悪い連中ばっかりだったらどうしようとか、少々不安もあるのだが、それよりも期待のほうが大きい。
いったいどういう街なのか?
ニャルラトの話では、3階建てや4階建ての建物がある結構大きな街らしいのだが――。
まぁ、案ずるより産むが易しって言うじゃない。
「ヤミ、あなたはどうするの? お留守番?」
「にゃー」
「はいはい」
しゃがむと彼が、私の肩に乗ってきた。
完全に乗り物扱いだ。
下僕なのでしょうがないが。
ヤミと一緒に家を出た。
鍵がないのは少々不安だが、大事なものは魔法の袋の中に入っているし、家じたいも魔法で隠されているらしいので心配いらないだろう。
「そういえば――家を隠す魔法ってどのぐらい保つの?」
「にゃー」
「まだ大丈夫なんだ。魔法ってそんなに長く維持できるものなの?」
「にゃ」
「え? 君が保守してたの?!」
彼に案内されて庭の片隅にやってきた。
そこにおもちゃみたいな祠があり、中にちょっと大きめの黒い石がある。
「これは、魔石ってやつね」
「にゃ」
毎日毎日、彼がここに魔力を少しずつ注ぎ込んで、家の周りの結界を保守していたらしい。
「ありがとう、先輩の意志を守ってくれて」
「にゃー」
「それってツンデレ、ツンデレね?」
「にゃぁぁぁ!」
彼は恥ずかしがっているが、こんな小さな身体では魔力も少ないのではあるまいか。
それを毎日毎日――かなり大変だと思う。
「それじゃ、君も魔法が使えるの?」
「にゃ」
どうやら簡単な魔法は使えるらしい――猫なのに。
私に家が見えるのも彼のおかげのようだ。
「じゃあ、私が魔力を入れれば魔法が切れる心配がないから、それでいい?」
彼もそれでいいというので、指を伸ばすと黒い石に触れる。
力を注ぎ込むと、黒い石の中が青く光り始めた。
「にゃー」
「これでしばらく大丈夫ってわけね」
「にゃ」
ヤミと一緒に庭を出ると、街へ続く道に向かう。
もう、方角はおおよそ解っているので、そちらに向かえばいい。
帰りには家の方向を示す魔導具っていう便利なものがあるし。
願わくば、この前に遭遇した黒い狼みたいな魔物に遭うことがありませんように。
攻撃の魔法の練習もしたが、できることなら遭遇したくはない。
辺りを警戒しつつ、道を目指す。
「この前は、いつの間にか囲まれていたけど、においとか音で解らなかったの?」
「にゃー」
風下から回り込まれたので、気づくのが遅れたらしい。
「君も狩人だけど、黒狼のほうが一枚上手だったわけね」
「……」
バツが悪いのか、彼が黙っている。
彼と話しているうちに道に出た。
ニャルラトたちがいるあの村に訪れる人はあまりいないようで、人通りはゼロ。
道もあまり整備されているとはいい難い。
どこか大きな都市に向かう途中にある村ならば、交通量も多いのだろうが、道はあの村が終着点だ。
「さて、1時間半か……頑張って歩かなくちゃ」
この世界にやってきた初日も思ったが、履いているのがブーツでよかった。
パンプスやヒールじゃ、こんな所歩けないからね。
新しい靴を買うにしても、合皮なんてないから多分高価なものだと思うし。
故郷のお婆ちゃんの話じゃ、昔は革モノは一生モノとか言ってたしね。
てくてくと歩きながら街が近づいてくると、木々は一切なくなり広大な畑が広がっている。
青々とした麦も多いようだが、別の場所では畑一面に白い花が咲く。
「これは――芋かな?」
トータルすると、麦より芋のほうが多い感じ。
ここの人たちの主食になっているのだろう。
そりゃ麦より芋のほうが栄養あるし、栽培も簡単でたくさん採れるしね~。
確か、昔ヨーロッパもそんな感じじゃなかったかな?
南米から芋が入ってきたおかげで、餓死者が減ったとかそんな感じだったと思う。
歩いていくと農作業をしている人たちの姿なども増えてきた。
農家の人たちは、あまり裕福ではないようで、ボロボロの服を着て鍬などを振っている。
機械などは一切見ないので、やはり機械化されていないようだ。
たまに牛や馬などに鋤を牽かせている姿が見える。
「はぁ~、日本でも昭和の初期なんかは、こんな感じだったんだろうなぁ……」
とても長閑だが、生活は苦しいはずだ。
獲物が獲れる分、森の中の生活のほうが豊かなのではあるまいか?
「にゃー」
「ああ、確かに怖い動物に襲われる可能性はあるねぇ。それはちょっと恐ろしいかなぁ……」
獣人の大人たちは、みんな筋肉ムキムキマッチョマンで強そうだったし。
ニャルラトも脚が速そうで、木登りも簡単にやってた。
たまに、魔法の袋から方向を見る魔道具を出してみる。
順調に動いており、ちゃんと家の方角を指し示す。
絶対に迷うことなく家に帰れるってのは、なんと心強いのだろうか。
安心感をしまうように、袋に魔道具を戻した。
そういえば、袋には私たちを襲ってきた魔物が入ったままだ。
「ねぇ、私が仕留めた黒いのって売れるの?」
「にゃ」
肉屋に売れるらしい。
そういうのを生業にしている人たちもいるのね。
「肉を食べるための専門の家畜を養ったりする人っているの?」
「にゃー」
牧畜専門の農家というのはいないらしい。
さっき見た農作業などで使っていた家畜が市場に流れたりするのが普通のようだ。
そうなると――ちょっと犬みたいな生き物を食べるのは抵抗があるが、この世界じゃ肉は貴重ってことになるし……。
やっぱり食わねばならないか。
話しているうちに、街へと続く街道に出た。
その途端に交通量がすごい。
荷物を背中にしょって歩いている人。
沢山の物資を積んで駆けていく馬車。
見ていると、元世界と同じ左側通行らしい。
ずっと森の中で1人だったので、沢山の人が見られて嬉しい。
あそこにずっといると、世界には私とヤミしかいないのではないか? という錯覚すらする。
沢山の交通量に感心してしまったのだが、高価とはいえ魔法の袋なんて便利なものがあるなら、荷物が少ない人がいてもいいはずだが……。
「にゃー」
ヤミの話では、魔法の袋は高価なために狙われることが多いらしい。
荷物が少ない商人がいる。あいつは魔法の袋を持っているに違いないってことか。
そのために、魔法の袋を持っている人でも空荷を運んでいることが多いという。
「はぁ~、魔法の袋は見せないほうがいいってことね」
「にゃ」
本当に知らないことばかりだ。
そりゃ、元世界でもこんな便利なものがあったら、世の中が変わってしまうに違いない。
そのぐらいすごい代物だ。
人と馬車の流れと一緒に街に近づくと、堀に囲まれた巨大な街が見えてきた。
人口は10万人ほどらしい。
元世界の地方都市ぐらいの規模だろうか。
街の入り口には橋が掛かっており、入れるのはここを含めて東西南北の四箇所だけ。
戦争に備えるためでもあるらしい。
街から溢れた住民の住居が、堀の外まで並んでいる。
「すご~い!」
そのまま街の中に入る。
道は石畳になり、大きな石造りの建物が連なっている。
場所が限られているので、建物が上に伸びているらしい。
耐震性はまったくないように見えるから、地震などがない国なのだろう。
「ねぇ、地面が揺れたりすることはある?」
「にゃ?」
質問の意味じたいが解らないようだ。
そういう現象に遭遇したことがないのだろう。
見事な街並みを見て思う――建設機械もないのに、こんな街を作るには数十年、いや数百年単位でかかるに違いない。
異世界の建築技術のことを考えていると、建築中の建物が見えてきた。
大きな木造のクレーンがあり、沢山の人たちが群がる。
すべて人力でロープや滑車を操っているようだ。
「へぇ~、クレーンとかあるんだぁ」
工事現場には、様々な柄をした沢山の獣人たちが働いている。
彼らには悪いのだが、やっぱり猫が働いているようにしか見えなくて可愛い。
「にゃ」
「やっぱり、筋肉ムキムキマッチョマンなので、肉体労働が得意なのね」
街中の人たちを見回す。
やはり色鮮やかな、綺麗な衣装の人が多いようだ。
女性たちは、皆がロングスカートを穿いているので、こりゃミニスカのままで来たらやばかった。
ただの変態になるところだ。
そりゃ金髪の美少年も呆れるはずだよ。
それはいいのだが、脚は見せちゃだめなのに、胸もとと背中は見せてもいいのかぁ。
これが文化の違いってやつね。
私は建築現場と、街行く女性たちのファッションをチェックしながら、ヤミの勧めで市場に向かうことにした。
どんなものがあるのだろうか?
今から楽しみである。