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マニアックガール・後編(狂子)

 いくらあたしが道場の娘で、どれだけ運動神経や体力に自信が有ったとしても……二キロ以上はあろうかという自宅から学校までの距離を、トーストを咥えがむしゃらにダッシュ出来るはずもなく………さすがにトーストが湿ってきた。


 あたしは、日ごろの稽古トレーニングを怠けていた事を反省し、湿ったトーストを手に、かるく肩で息をしながらながら……桜の花びら舞う歩道のある大通りへと通じる、細い路地の右側をブロック塀にそって、ゆっくりと歩いている。

「ほんと……日々の積み重ねって、大切……反省、反省」

(自ら反省の言葉を口にするなんて、らしくないな)

 苦笑いするあたしの耳に、大通りの方から足音が聞こえ……それは次第に近づいて来る!


『キターー!』お約束のシチュエーション!


 あたしは近づく足音に胸をときめかせ、トーストを咥え直し……相手とぶつかるように、己が勘を頼りに「遅刻遅刻」と言いながら、大通りへと飛び出した!


ドン!

「きゃっ!」

 衝突音と、可愛らしい叫び声が、一瞬、大通りに響き………二人の少女がほぼ同時に、尻もちをつく!


 無論わざとぶつかったあたしは、すかさず『柔道の後ろ受身』をとり、自分へのダメージを軽減する事に成功した……ように思えたが、彼女の日本人女性らしいつつましいい胸では、衝突時初期の衝撃を和らげる事が出来ず……予想以上の勢いで尻もちをつき……その痛みに、あたしは一瞬顔を歪ませた。


「どこ見て歩いてやがんだ、この野郎!」思わず口から出る男言葉

「ゴメンナサイ、ゴメンナサイ、ゴメンナサイ!」涙ぐみ、拝み倒すよう必死に謝罪の言葉を連呼する相手


(あれ?この声は、もしかして……)

聞き覚えのある声の主に、あたしは『はっ』と我にかえり、相手を見る……。


 長く艶のある黒髪……細い手足に華奢な体、そしてあたしとは対照的な、十二歳とは思えない豊かな胸!

間違いない、幼稚園からのあたしの親友『千世』(ちよ)だ。


「大丈夫もう怒ってないから、そんなに謝らないで、でないと、こっちが悪いみたいじゃない」


 現にそうじゃないかという言葉が聞こえてきそうだけど……ここでは気にせず話を進めよう。




 そう言ってあたしは、さっき叫んだ時に落とした食べかけのトーストを、渋い顔でつまみ上げ

(道路にポイ捨てはいけない)

とランドセルの開きポケットに、ビニール袋に入れ詰め込み、立ち上がり……。

いまだ「ゴメンナサイ」を連呼する千世ちよちゃんの前にしゃがみ


「あたしは大丈夫だから、そんなに謝らないで」

そう言いながら彼女の前髪を整え、彼女のあごに手を沿え、視線を自分に向け……「ね、ちいちゃん(千世)」と優しく名前を呼ぶ


「きょうちゃん(狂子)?」


 まだ怯え気味な口調であたしの名前を呼ぶ千世

「うん、お早う、ちいちゃん……ほら立って」

 とかるく微笑み頷き立ち上がり、手を差し伸べると、彼女は安心したのか『ほっ』と胸をなで下ろし

「お早う、きょうちゃん……ありがとう」

 微笑みを返すと、あたしの手にそっと自分の手をかさね……それを見るなりあたしは「ふん」と一息に彼女を引っ張り起こし……勢い余って再びぶつかる彼女の体を全身で受け止める。

(身長はあたしと同じくらい、でも相変わらずの柔らかい体に、良い匂いがするさらさらの黒髪……まさに『ザ・ヒロイン』て感じ)と、両肩を掴み彼女の足から頭まで見渡しチェックしたあたしは

「よかった、怪我はしてないみたいだね」

と笑顔で彼女の肩をかるく叩き

「一緒に行こう」

と彼女の手を力強く引っ張り歩き出した。


 そして学校までの道中……


「市内に中学校が一つしか無いから、家が離れていても、同じ学校に通えるなんて、あたし達って、ついてるね……それにまた同じクラスになれたら良いね」

「はい」

 あたしは、新しい学校(環境)に不安そうに少しうつむき加減に歩く千世を元気付けるようにひときわ明るく話続けた。


 しかし……学校が近づくにつれ、千世の足取りは次第に重くなり……とうとう校門前で彼女の足は止まってしまった……その時


校舎屋上のスピーカーからチャイムが!

千世の体がビクリと震え、彼女は少し怯えた表情で固まり……あたしは、後ずさろうとする彼女の手をぎゅっと握りしめ、優しく話しかける


「まだ……まだ学校が……他人が怖い?」


頷く彼女にあたしは、その背中に回り肩に腕をのせ、そっと抱き寄せ、耳元でささやく

「大丈夫、あなたにはいつでもあたしがついてる……例えあちこちで言われてるあなたの家系にまつわる悪い噂が本当だとしても、あたしはそんなの信じない……だってあなたは」

「宿題見せてくれるから?」

「身も蓋もない事言わない……だってあなたは心の優しい、あたしの大切な親友だから」


 その言葉に彼女は安堵のため息をつき、あたしの腕にそっと手をそえ

「きょうちゃん……ありがとう」とささやき返した。


「うん……て、このままじゃ校門前に立ったまま遅刻、なんて事にちゃう……行こう!」

「はい!」



 そして彼女達は手を取り合いともに歩き出した……校門を越え、新しい学校へ……そう……まだ見ぬ未来へと…………。


「いいね~~」


 良い言葉でかっこよく第一部分を締めくくりたいのに……電柱の影から、遠ざかって行く彼女達の背中を観察するようにじっと見て、ほくそ笑むメガネをかけた怪しい人影の勝手な台詞で台無しだ!

あ~誰だろね~ってことで第二部分おわり、おわり!

読んでいただき、ありがとうございます。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第一部『マニアックガール(狂子)』

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by.メガネ君(作者)

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