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マニアックガール・前編(狂子)

「どうしてこうなったぁ!」


 丘にそびえる、石塔のてっぺんで、叫ぶ少女の声は……

今や火蓋を切られんとする戦場のこえにのみこまれ消える。


 眼下に広がる平原の向こうから近づく敵軍。

短剣を抜き、指示を出し率いている黒髪の女将は……かつての親友


「やる気満々ですか、全く、どうしてこうなったんだろうね、あたし達……大好きだよ千世」

 ため息交じりにつぶやくなり飛び降りた彼女は、宙返りをし勢いをころし着地……迷い無き表情で前を見る。


「さあ始めようか、あたしの、あたし達の全身全霊をかけた大ばくちを」


『かつての親友同士が、戦場で切り結ばんとする』とは書くありたいもの……さあ戦いのゆくえはいかに⁈



…………と突然! まぶしい光にが、全てを包み! 世界を白一色に消滅させた!





 ゆっくり昇る朝日に照らされ……今日も町がうごきだす。


 カーテンの隙間からさし込む光と、庭に咲く桜の木で鳴いている鳥のさえずりが、ベッドでまどろむ少女を優しく起こ……少女を、しょう……居ない。


 もう起きたのか?

しかし寝息いびきは聞こえる、いったいどこから……居た!


 茶髪ショートヘアー(ウルフヘアー)の少女が、スウェットズボンに上は肌着姿で、L字型の座椅子に背中を預け、あぐらを掻き涎を垂らし眠っている……まさに自堕落を絵にかいたような。


 すると……ドア向こう、一階の階段から女性の声が

狂子きょうこ起きなさい、今日から学校でしょ、いつまで寝てるの!」


 少々いらだちのこもった声に、眠っている少女こと狂子きょうこの体が驚いたように

ピクリと揺れるが

「……もうちょっとだけ」

定番の寝言を口にして寝返りをうとうとする狂子へたたみかける様に

「いい加減に起きなさい……本気で怒るわよ!」

 怒声にも似た大声が追い打ちをかけ、瞬間的に彼女の目を覚まさせた。


「ママごめん!」



(目、覚ましたから……ここからはあたしの出番ね)

視点描写を、狂子にバトンタッチします。



 慌て周囲を見渡すあたしの手には、テレビゲームのコントローラー

目の前の画面には、操作キャラクターと思われる男の戦士が、壁にぶつかった状態でなお前進足踏みをしている。


「あ……あたし、また」


 これを見てくれている皆も、一度は経験したことは有るよね?

徹夜でとか、疲れた状態で長時間、ゲームをしている途中……いきなり、睡魔に襲われて、不覚似もそのまま眠ってしまう現象……そう、俗に言う『寝おち』。


「うう……眠い」

(変な夢みちゃったな……あたしと千世ちゃんが敵同士になって、戦うなんて……でも、千世ちゃんの忍者みたいなコスチューム可愛かったな……いや、あたしの女戦士コスチュームの方がかっこいいんだけど)

猫の様に、手の甲で涎をぬぐい目を擦り『ぼー』としていると……再びママの声が。


「狂子!」

そろそろ怒り、堪忍袋の限界さえ感じさせる程に叫ぶママに

「は~い、今着替えてるとこ、すぐ降りてくから!」

と、あたしも大きな声で応える。

「早くしなさい!」


 そして事なきを得たあたしは……急いで制服ブレザーに着替えて、適当に寝癖を直す

(癖っ髪でホント良かったと思うよ)

普通の人ならそのままの勢いでゲームの電源を切るだろうけど……あたしは違う……馬鹿正直に急いでゲームの電源を切らずに、しっかり『二重セーブ』し部屋を出て……さも急いでいたかのように、わざとドアを強く閉め、足音を立て階段を駆け降り、そのままリビングキッチンに駆け込み、一呼吸。


笑みを浮かべ、元気に挨拶。

「おはようパパ、ママ」

「おはよう」

「おはようって、今日から中学生なんだから、いい加減自分で起きなさい……あなたの事だから、また遅くまでゲームしてたんでしょ? 違う?」


(流石ママ)

 図星を突かれたあたしは、顔をこわばらせながらも

「えっ? 何の事? 分からないわ」

必死にとぼけようとするあまり、普段使わない女言葉が出た……それを見逃さなかったママは、すかさずカマをかける。

「だったら、その頬についてる、十字や丸いくぼみはどういう事かしらね?」


「え!?」

 あたしはその言葉に見事ひっかかり、慌て両手で頬をなでる

(異常なし、なんだよかった)気付く

「……あ」

「やっぱりね……もうあなたも年頃の女の子で、夜更かしは美容と健康に悪いんだから、気をつけなさいよ」

 と、諦めにも似たため息と共に、肩を落とし、お説教モード入ろうとするママに、あたしは、頭を掻きながら反論


「女の子、女の子って……だったらあたしの名前、どうにかしてよ!」

部屋の入り口にある電話台前の壁に掛けてる『連絡用ホワイトボード』に書いてあるあたしの名前を指し示しながら

「『きょうこ』て名前、ひびきは良いけど、漢字で書くと……狂子……狂うって何?ママの言うとおり一応あたしは女の子なんだから、普通つけるならこうでしょ」

と自分の名前の下に『今日子』と書いて抗議してみた。


『一理ある』黙るママに(勝った)と笑みを浮かべると……椅子に座っているパパが、読んでいた新聞をたたみ……むこようしならでは、ばつが悪そうに頬を掻きながらあたしに

「ごめん狂子。その漢字……何か一つでも良いから『狂うほど頑張る子』になってほしいという願いを込めて、僕がつけたんだ」

と言い辛そうに説明してくれた。



初めて明かされる命名の理由!


 その言葉にあたしは、むしろチャンスを得たとばかり、にやりと笑いながら

「よかった、だったらあたし願いどおりの子になってるよね……楽しむ事に一生懸命……それに、美人なママの遺伝し受け継いで、まだ若いんだから夜更かしは美容と健康に悪いなんて迷信関係ないもんね~」


「もう、ああ言えばこう言う!」

 美人と言われまんざらではないのか、気分を良くしたママは軽く頭を掻いてる。


 一件落着と愛想笑いをしながら、あたしはリビングを見渡す

「ヘヘ、そう言えば、お爺ちゃんは?」

「は~、不真面目なあなたと違って今朝も早くから、はなれの道場で『ナギナタの一人稽古』してるわよ……て、今日は入学式でしょ早く食べて学校に行きなさい、本当に遅刻するわよ……私達も後から行くから」


 せかすママの言葉で時計を見ると、七時半をきっている『入学式は十時開始だが新入生は八時十分までに登校』つまり(ヤバいじゃん)


「は~い」

 テーブルの上に用意されてる朝食のトースト以外を、口いっぱいにほおばり、牛乳で流し込み一息つくあたしに

「トーストは要らないの?」

と、あきれ顔のママに

「咥え……食べながら登校するから置いといて」

即答しながらリビングを出たあたしは、洗面所に向かいカラスの行水よろしく洗顔し……二階の自室に駆け上がるなり『赤いかばん?』を背負い……リビングに駆け下りては……テーブルの上に残っているトーストを手に取り、早口に


「行って来ます」

と挨拶もそこそこに、出て行こうと回れ右をする。


「待ちなさい!」

慌てた口調でママがあたしを呼び止めた!


「何? 急いでるんだけど」

「トーストを咥え、食べながら登校するのは良しとして」

「うん……これ咥えて遅刻遅刻って言いながら走ってると、良い人に会えるんだって『おまじない』この前読んだ雑誌(漫画)に書いてた!」

「だから良しとしてって言ってるでしょ…………私が言いたいのは……あなたが背負ってる、その『ランドセル』!」

怪訝そうな顔でランドセルを指差すママに、あたしは少し不思議そうな顔で言葉をかえす

「何、おかしい? まだ使えるんだし、あたし気に入ってるんだから、べつに良いじゃない……じゃ、そろそろ行くね……行って来ます!」



(あちこち傷んでるけど、このランドセルは今は居ない、おばあちゃんが買ってくれた、あたしのお気に入り……それにランドセルは小学校までなんて誰が決めたの⁈)

 あたしは、制止しようとするママに、心で文句を言いながらリビングを……玄関の扉を開け飛び出した。

門まで続く十メートルほどの石畳……と道場の戸が開き中から、手ぬぐいで額の汗をぬぐいながらお爺ちゃんが出てきた。


「お爺ちゃん、お早う、行って来ま~す」

「ああ、おはよう、行ってらっしゃい……車には気を付けるんじゃぞ」

「うん!」


 元気に返事をし『鬼道道場』と看板のかかった門を出たあたしは……今日から通う『花園中学校』へ希望を胸に、トーストを口に咥え、ダッシュで駆けて行く……。



……そして、五分後(後編に続く)……。

読んでいただき、ありがとうございます。

『オタク系女子中学生が異世界転移⁈ 狂子のお気楽ファンタジー』

第一部『マニアックガール(狂子)』

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とてもうれしく、励みとなります。よろしくお願いします。


by.メガネ君(作者)

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