8.更なる改造
『例によって改造には痛みが伴う。だが安心しろ。イノウエの細胞パターンはほぼ覚えた。死んでも確実に蘇生できる……と思う』
お、おい!!
「ぐぉぉーーーー!!」
俺は作業場で叫んだまま転げまわり、みっともなくのたまわった。
「お、おい、ど、どうした。最下級社員。足でも打ったのか?」
や、やばい。部長だ。
髭ずらの強面のこの人こそ、悪の権化――榊原阿久男。
ちょっとでも仕事を遅らすと、無茶苦茶な恫喝をしてくる容赦ない鬼だ。
「例え足に鉄板が起きてきて大けがをしても、どんくさいお前には1秒たりとも休む時間などないのだぞ!! 早く立てぇ! 最下級社員」
怒鳴りながら悶絶している俺の顔を、足で蹴飛ばした。
くそぉ。
なんでこんな思いまでして俺は……
『改造終了だ。イノウエよ、よくぞ我慢した。ゆっくりと立ち上がれ』
あんたの改造より、部長の方が100倍嫌だったけどな。
部長は俺の前に置かれていた段ボールを、蹴っ飛ばした。
ネジは床に転げていく。
なんでそんなことまでするんだよ。
そんなことをされたら、とても今日中に終わらないじゃないか。
「最下級社員のクズ。わかっているだろうな。ちゃんとノルマを達成しなければ、減給だからな」
涙でネジがよく見えない。
これじゃぁ検査ができないじゃないか。
むっちゃつらい。
『ククク。イノウエよ。真の鑑定士は目だけに頼らない。体で感じるはずだ。そのものの価値そのものが』
散乱しているネジはぼやけて見える。
だけど、その上に数字が浮かんで見えるのだ。
『そうだ。イノウエは魔鑑定のスキルに目覚めたのだ。今見えている数字こそ、鑑定結果』
散らばっているネジの上には、4~15の数字が表記されている。
15の数字が表記されているネジを手に取ってよく見た。
傷一つない、完璧なネジだ。
数字が低くなるにつれ、粗悪品だった。
これなら簡単に仕分けができる!!
俺はネジを15と表記されたネジのみを、丁寧に拾い合格の箱に入れていき、最後にダメなネジを、不合格の箱に入れていった。
たったの10分かそこらで、本日与えられた業務が終了したのだ。
部長はポカンとした表情で俺を見ていた。
「最下級社員。お前はやけくそになって適当にやったんだろう?」と毒づくと、俺の仕訳けたネジを確認していく。
「な、なぜだ。どうしてこんなに早く、しかも正確に仕分けできるのだ!?」
ふと部長と目が合った。
魔鑑定スキルが発動した。
榊原阿久男。
鑑定結果、1。
このおっさんの価値は、何に使うかよくわからんちっこいネジ以下かよ。