5.褒美
試験が終わると急いで自宅へ帰った。
朝っぱら、とんでもない頭痛と倦怠感と戦っていたからだ。
一刻も早く寝たい。
明日もハードな社畜の一日が待っているのだから。
行政書士合格はほぼ決定しているのだが、合格発表があり、その後の手続きをしないと晴れて先生を名乗れない。
それまで食いつなぐ必要がある為、軽々に今の職をやめる訳にはいかないのだ。
自室に入ると、すぐさま布団にもぐった。
『イノウエよ。貴様の仕事を手伝ったのだ。今度は予の仕事を手伝わぬか?』
世界征服ってやつだろ?
『無論、そうだ』
しんどいわ!
『まぁ良いか。貴様はレベル1にしては、良く頑張った。イノウエは、見事、脳の力を解放させ、脳全体の許容量も若干だが向上させた。これは世界征服のために必要な道のりでもある。特別、褒美をやろう。イノウエに休暇を授ける。今日はありがたく休むがよい』
そりゃ、どうも。
なんか上から目線過ぎてムカつきもするが、こいつのお陰で資格試験を乗り越えることができたのは事実のようだ。
その点だけは感謝すべきか、それとも……
だって、その代償があまりにも大きすぎる。
まぁ、世界征服なんて小市民の俺なんかに無理だし……。
どーせ邪神は知らないだろう。
この世界の軍事力がとんでもないハイレベルだってことに。
なんか、こいつ、剣と魔法の世界の住人ぽいみたいだけど、俺がちょっと魔法や剣術をかじったくらいで、ステレス性の戦闘機に勝てる訳ねぇーし……
だがそんなハイスペックな軍事戦闘機とバトルになったら、俺はいったいどうなっちまうんだ?
超音速ミサイルとか、どうやって避けたらいいんだよ?
『ちょうおんそくみさいる?? それが何かまでは現時点で特定できぬが、そのような小細工、かわすまでもない。圧倒的邪悪なエネルギーをもって木っ端みじんに粉砕すれば良いのだ。ククク。アハハハ!』
粉砕したら、多分、大爆発するよ?
勘弁してくれよ、マジで……。
膨大に悩みが増えたが、耐えがたい倦怠感に負け、すぐさま俺の意識は遠のいていった。