3.試験勉強
しばらくして頭の痛みは消えていった。
ふらふらと机に座ると、参考書に視線を落とす。
な、なんだ??
さっきまで何が書いてあるのか半分も分からなかった解説が、すんなりと頭に入っていく。それも超高速で……
なんなんだ、この感覚。
き、気持ちいい。
ページを一瞬見るだけで、すべて暗記ができちまうのだ。
なんか、聞いたことがある。
これって、噂に名高いカメラアイとかいう瞬間記憶能力なのか??
『イノウエよ。脳を開放したばかりなので、あまり学習速度を上げるでない。明日、脳が筋肉痛になるぞ……と忠告しようと思ったが、筋肉痛になり再び回復すれば更に脳が強化される。それは非常に良いことだ。明日の試験は激しい頭痛が伴うが、まぁ、この程度の試験内容なら問題はなかろう』
お、おい。
あんた、そういう事は早く言えよ。
『イノウエは法律のライセンスを取得しようとしていたのだな。つまり、イノウエは法律家――行政書士にクラスチェンジをしようとしていたのか。ククク、なかなか良い心がけだ。この世界を支配するためにはこの世界における法を熟知しておく必要があるからな』
ねぇよ!
『そろそろ全部暗記できただろう。早く寝て脳を休ませた方が良いぞ』
それもそうだと思い、俺は布団にもぐった。
だが邪神との出会いが強烈過ぎて、なかなか寝つかれなかった。
だってさ。
考えてみたら、俺のミッションが終わったら、今度は奴のミッションとやらを手伝わされてしまうようなのだ。
世界征服ってやつ。
冗談じゃねぇ。
捕まっちまうじゃねぇか。
『ほう。イノウエはこの世界の憲兵を恐れているのか? 確かにイノウエのレベルは1。今のイノウエでは太刀打ちできないであろう。だから予が鍛えてやる。圧倒的な邪悪な力でな。ククク。アハハハハ』
うるせぇよ!
『すまぬ。明日は大事な試験だったな。悪かった。お詫びに、邪悪なる睡眠呪文を唱えてやる。ねーむれー♪ ねーむれー♪』
邪神は子守唄を唄った。
不思議と、色々とあった不安や悩み、雑念はすべてかき消され、安らかな気持ちになり、そのまま意識が遠のいていった。