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<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

脳 弟シリーズ2

作者: 群青空太

非倫理描写、軽い医学的グロがあるためR15です。



弟、幹彦の脳は父、佐之助によって摘出されていた。



幹彦は特殊な収集癖を持っていた。


その付加的な要素として殺人を行う為、シリアルキラーだった。

いつもというわけではないが、衝動が時折幹彦の頭を支配した。


収集癖は姉の冬子と幹彦の秘密であったが、実は佐之助は知っていた。

たまたま収集物の入った箱を見つけてああ、最近の事件の犯人だったのか。と気が付いたが、放置して一年経って幹彦は死んだ。




亡くなってしまったものは仕方がないので、幹彦の脳を摘出してスキャンし、神経ネットワークをプログラムで再現する実験をしてみた、と久しぶりに帰った佐之助が冬子に言った。


もうホームAIにしてあるよ、と軽いいたずらでもしたように器用にウィンクをして佐之助は笑う。


朝食のヨーグルトに苺のコンフィチュールをかけながら説明を受けた冬子は、動揺してこぼしそうになった。

スパチュラを置いて、聞き返す。


「ホームAIに弟が?」

「正確にいうと彼の脳神経のシナプス間隙での物質の活性と物理的な構造を解析して、その脳内ネットワークのデータをベースに作った仮想人間AIだねぇ。ニューラルネットワーク自体はよくあるけど、まあみんな機械学習じゃん?既に人間としての人間的な観点の学習の成果を備えたネットワークという点で新しさがあると思う。」



どの国でも人間の脳をAIにする許可はださないだろうから、新規性については間違いがない。


佐之助に実は父さんは倫理面で狂ってますよ、と伝えるか冬子は迷ってやめた。

まず言ったところで常識を理解しそうにない。


また、常識を理解してしまうことが佐之助をむしろ不幸にするかもしれなかった。

既にかなり逸脱した人生を送っているからだ。



「簡単に言うとぉ、幹彦君風AIってことさ!結構上手くできたと思うよ。一部脳脱していたから、そこだけは今は仮のネットワークだけど。」


世間では悪とされることに何の感慨もないこの精神。

冬子は自身も弟も、佐之助に似たことを再確認する。


「いい感じの論文を書けそうだけど、サルの脳か何かで実験しなおさないと学会誌には通らないかなぁ。全く面倒な話さ。」


「最初からサルでやればいいのに。」


「うん。でも僕、幹彦君のことを気に入っていたんだよねぇ。僕にはもったいない、良い息子だったよ。人間は死ぬ生き物だけど、これでいつでも一緒にいられるよ。」


佐之助の自信に満ちた無邪気な笑顔は、皮肉なことに幹彦にそっくりだった。




「ミキヒコ君、電気をつけて。」


冬子が自室で試しに弟の名を呼ぶと、パッとライトがついた。

煌々と光るLEDライトを見つめて考える。


確かにホームAIは弟と同じ幹彦という名前で存在しているらしい。


ヒトの脳から創ったAI。


荒唐無稽にも思える。

が、父にはなぜか心酔している部下の人が居る上、アイデアの才覚にも恵まれてしまっているのであり得なくはない。



DIYが大好きな幹彦の手作り家電が床を掃除している様子をみながら、冬子はふと思いついたことを口にする。


「ミキヒコ君。君を丸ごと私のタブレットにコピーして。その後ホームAIとは同期を切って。」







閲覧ありがとうございました。

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