第0話『天使が飛び去った日』
身長169センチ
体重80キロ
それが、
俺こと神鷹悠太の現在の身長と体重である。
まあ一言で言ってしまえば『肥満体型』だ。
二言でいってしまうのなら『デブ』だろう。
もともと運動も好きというわけではない。だが、前からからこんな膨よかな体型をしていたわけでもない。
原因は一年前。
俺は彼女にフラれたのだ。
一年前。
このときの体重は60キロ。標準値が63くらいと思うからそれよりも-3キロは痩せていたので、この頃は身長に対しての理想体重の範囲だったと思う。
俺は学校の帰りによく立ち寄る店がある。
それはどこにでもあるごく普通のお店だ。
そしていつものように店内を見て回っていた自分の足がふと止まった。
それは一瞬だった。まさに電撃が脳を直撃するような。
店頭で初めて会ったとき、
俺は彼女と目があった。
これが、恋というものだと初めて知った。
その瞬間に、もう一目惚れしていた。俺好みのキュートなロリフェイスに浮かぶ愛らしい笑顔。
そして設定は高校生の自分と同い年くらいだと思う。
パッケージごしにこちらを見つめてくるその眼差しはまさに『天使』
背中に白い羽が見えるので、実際に天使設定のキャラなんだと思う。
それが造りものの存在だと分かっていても、頭ではなく自分の心が彼女に惹かれた。
俺は速攻でそのゲームを買った。発売して間もなかったためにまだ攻略サイトも立ち上がっていない。だが、今回は最初からそんなズルをしてしまうようなプレイはしない気でいた。
なぜなら、表紙の女の子を自力で攻略することにこそ意味があると思っていたからだ。
それも一発で。初見プレイで絶対に攻略してみせる!
そう思いプレイしていた。そして出来事も後半戦に差し掛かったとき運命の分岐ルートが訪れた。俺はマナに慕いの気持ちをすべて打ち明けた。彼女も俺の手をとろうとしてくれた。けれどーー
『ごめんなさい。やっぱり私は一緒にはいられない』
そう寂しげに言い残したマナは天空に向かって帰っていった。
俺は涙を流しながら二度目のプレイなどする気もおきず、そのままPCのコンセント思いっきり引っこ抜いた。
その所為でパソコンの中のデータはほとんど消えてしまい、それはただの大きな検索用の箱となった。