ありがとう
7月5日午前6時27分
「陽太〜ちょっとテレビ付けて〜」
「は〜い」ピッ
「付けたよ〜」
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今日の東京の天気は、晴れのち曇りでしょう。
降水確率は30%ですから、折り畳み傘をもって行くと安心です。
次のニュースです。
東京都内六本木の○○デパートから18歳の少…ピッ
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「今日は晴れみたいね」
「うん」
「最近交通事故が、多いらしいから気を付けてね」
「分かってるって、きっと母さんはこの後忘れ物と身だしなみチェックまでするんだから」
「よく分かってるじゃない」
「伊達に15年間一緒に暮らしてないよ」
「フフフ…ところで何時に行くの?」
「7時には行くよ。」
「母さんは何時に行くんだっけ?」
「お母さんは…9時かな?」
「分かった…そろそろ行くよ。」
「そっか…ゴメンねこんな何もしてあげられないダメなお母さんで。」
「…」ガチャ…バタン
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7月5日午前7時45分
キーンコーンカーンコーン
「始めるぞー」
「起立…礼…着席」
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7月5日午後5時35分
「起立…礼」
「さようならー」
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7月5日午後8時43分
「ただいま」
「おかえり、学校どうだった?」
「いつもと同じ、つまんないよ」
「そっか…」
「眠いの?」
「うん、ゴメンね…」
「ううん、おやすみなさい」
「スースー」カチャ…パタン
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8月16日午前5時57分
「おはよう」
「スースー」
「本買ってきたから、後で読んで見てね。母さんの好きなサルビアの栞にしたからね」
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8月23日午後11時16分
「陽太君!今すぐ病院に来て!お母さんの状態が不安定なの。」
病室には酷く衰弱している母さんと無機質な母さんの残りの命を表す音とドクターがいた。
バンッ
「母さん!」ピッ…ピッ…ピッ…ピッ…
「ゲホッゴホッ…ゼーハー…フューフュー」
「落ち着いて下さい。」
「先生、母さんは大丈夫なんですか!?」
「ハッキリと申し上げますが…今日が峠です。」
「そ、そんな…母さん…母さん.......」
「お気持ちはお察し致しますが、今日は一緒にいてあげて下さい。」
「はい.......もちろんです。」
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8月23日午後11時48分
やっと落ち着いた用で眠っている。―
「スースー」ピッ…ピッ…ピッ…
「母さんもっと一緒にいたいよ。
母さんと一緒に花の写真撮りに行くって言ってたじゃんか…なんでこんな事に…俺病気になる前の母さんが、大好きだったのに…」
「ひな、た…」ピッ…ピッ…ピッ…
「母さん!起きたの?」
「ゴメン、ね何もでき、ないダメ、なお母さんで。」
「ホントだよ…母さんがいなくなったら俺どうして行けばいいんだよ…置いてかないでよ!」
「ゴメ、ンね、がんば、ってね」ピッ……ピッ……
「母さん…母さん…」
ピーーーー
鳴った、鳴ってしまった聞きたくない雑音が。
「う、嘘だろ母さん、なぁ母さん、なぁってば!」
母さんはピクリともしなかった、まだ暖かかったが、手は既に冷たくなり始めていた。
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9月7日午前8時12分
母さんの荷物の中に俺の買ってきた本があった、栞は最後のページに挟まっていた。
裏に「面白かったよありがとう」って書いてあった。
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7月3日午後3時06分
「ゴメンな、母さん遅くなって怒ってるかな?」
「でも言い訳を聞いてよ。昨日やっと咲いたんだよ」
「母さんの好きなサルビアが」
父親の設定作るべきだったなーと今更少しの後悔
次の作品は父親出そうかな?