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デートのち戦い

寝起き早々、寒気がしたが春のせいだし仕方ない、そう思うことにした。

結局断るわけにもいかず、いや断れるはずもなく雅人はデートに付き合うことにした。

初めて霞からメールを貰ってから四日後、つまり霞がデートに指定した日を迎えた。デートの誘いを受けてから、時間と場所を決め、雅人はその場所で指定時間よりも三十分前に着いて、左手首につけた腕時計を見つめていた。


「あら?源くん。そういうシチュエーションが好きなのね?」

「いや…決して『ごめん、待った♡?』『いや、俺も今来たとこだよ…ハニー(イケボ)』がやりたい訳じゃないですから!」

「――周りの視線が痛いから、行きましょう」

気づくと老若男女問わず、そこにいる八割の人たちが雅人へと視線が集まっていた。

「は、はい。行きましょう!」

最後の方は声が裏返ってしまい、余計、羞恥に晒された雅人であった。

新築のデパートに着き、雅人は大事なことを聞いていなかった。

「あの、霞先輩。今日は何しにココに来たんですか?」

「先輩を長いのが嫌という理由で名前で呼んでいる人が何か言ったかしら?」

「す、すすすすいませんッ!今日はとことん付き合いますよ!さあ!どこ行きましょうか⁉︎」


「…………」

「源くん。こういう時は、あなたの方から話のテーマを提示するのよ?」

二人はデパートの中にあるカフェで向かい合っていた

「…いや、だって先輩、僕が投げたテーマすぐ蹴るじゃん…」

「あなたの投げるボールが酷すぎるのよ。何よ『昨晩のご飯は何でしたか?』って。そんなのよりも、まだ好きな食べ物聞いてくれた方がマシよ」

ここで雅人は言っていない最高の一言を思いついた。

「先輩、今日の服装とても似合ってますね!(満面の笑み)」

「そう、ありがとう(無)」

今回のキャチボールも失敗してしまったようだ。

思いつきで言ったものの、よく見てみると霞の姿に既視感を感じた。

「霞先輩、すみません。その格好って……」

そう、霞の格好は白色のジップパーカー、黒色のショートパンツ。

「何かしら?あなた女性の私服姿にもイチャモンつける気?デ◯モンの世界じゃあなたの名前はイチャモンね」

コーヒーカップを右手で持ち、危ない台詞を言う霞を目の前にそうじゃない、そうじゃないと雅人は頭で思うも上手く言葉にできない。

――だって…その姿は……

「キャーーーーーーッ!」

「逃げろーーーっ!殺人だぁあああああっ!」

一階から数々の悲鳴の声が聞こえてくる。そしてカフェ内はおろか二階、そして三階と悲鳴が増えていった。

「にっ、逃げろーーーー!」

その声と同時にカフェからもダッシュで逃げ出す者、泣き出す者もいた。

「源くん。今すぐここから逃げなさい」

さっきまでの表情とは裏腹で眉間にしわを寄せ、雅人を逃がそうとする。

「先輩も逃げましょう!警察に任せて!」

「私はココにいる人達も連れて必ず行くからッ」

「じゃあ僕もっ!」

「早く行きなさい!」

聞いたこともない霞の怒号に雅人は怯み、それに逆らうことができなかった。

「分かりました」

蒼色の瞳を見つめ、そう答える。

——————————————————————————


——源くんをこの場から立ち退かせたのは良いけれど、ここの人たちをどうしたものか

エレベーター、エスカレーターと共に人が混み合っていて、避難させるには間に合いそうもなかった。

ぐっと噛み締め

「仕方ない…か」

ボソッと呟くように一つの決断をし、霞は怯えている人達へ声を掛けた。

「良いですか!ここから動かずに静かにしていてください!」

「あんた何言ってんだ!俺たちに死ねって言ってんのか!」

「違います!私が犯人を警察の目の届くか所まで誘導します。ですから、それまでここにいて下さい!」

「そうやって自分だけ助かろうとしやがって!」

「そうではありません!私を信じてください」

声を荒げる人の方を見て、雅人を言い聞かせた同じ言葉を口にする。

「――!わ、分かった…」

――また、またあの目だ。私に対する恐怖の目。

「それでは、よろしくお願いします」

そう一言言い残すと、霞は一階の声がした方へと走り出す。それと同時に霞は雅人へと一通のメールを送る。


差出人 : 北条霞

宛先 : 源雅人

件名 : お願い

今から私が殺人犯を警察の近くまで誘導するから、モールの中の人を静かにさせてちょうだい。お願い


雅人はメールが届くとバイブで通知が入るように設定してある。霞はメールに気づくと踏んだ。

ジャンプして一階へ降り、犯人を探しているとピコンと一通のメールが入る。開くとそこには『分かりました』という一つの返事が表記されていた。

これで少しは安心と思った直後、後ろから何者かの殺気に気づいた。

「――!」

左に身体を少し動かし、ナイフの牙突を避ける。

「あなたですか…殺人犯っていうのは」

「ふひひひひひひひヒ」

背丈はおよそ二メートル後半、体格は筋骨隆々。顔はピエロのようなメイクが施してあり、赤のロングコートを裸の上に羽織り、黒のズボンで裸足といった容姿である。

「良ク、避けたものだダ」

「あんなに殺気をこぼしていたら、誰でも気づきます」

辺りは避難したのか人の気配は無かった。

「ふぅーーー」

深く息を吸い込み、そして吐き出す。

そして、白のパーカーのフードを被り、空いていたファスナーを胸元まで上げる。

「オ!何ダ。随分やる気だナ」

「ええ、これ以上被害を増やさないために…」

その言葉を言い終えると同時に拳と拳がぶつかり合う。続いて霞がナイフを持った左手へと左回転の右足で蹴る。休む間も与えず、相手の懐へ潜り込み、鳩尾へ思い切り再び右拳。しかし、殺人犯は何一つ苦しむ様子もなく右脚で蹴り上げる。霞は見事に八メートルほど飛び背中を打ち付ける。

「やはり…」

そう呟き、今度は殺人犯へと言葉を投げかける。

「最初あなたと拳を合わせた時といい、今の鳩尾といい、あまりに手応えが無さすぎですね。そして、手を蹴った時、人間なら腕の骨は折れていた。そう…人間なら、ね?」

「ほほウ?気付いたカ!」

そう、相手はアンドロイド。

「何故人を襲そったのですか!何の目的があって、人を殺した」

「意味なんてあると思うカ!きゃははははははハ!」

その言葉を聞いたと同時に霞は地面蹴り十メートルの距離を一瞬で縮め、右脚で相手の左の脇腹へと深く蹴りを入れる。

「痛みは与えれずとも、その器さえ無くなってしまえば、あなたの存在は無くなる」

蹴った部分は、抉られ、中身の機械が露出していた。

「無くなル?無くなる訳ねえだロ?このご時世どこでもネットは繋がる。つまりいざとなりゃあ…」

「そんな事、私がさせるとお思いですか…?」

霞も殺気を殺人犯へと向けていた。

「名乗っておこうかカ。俺の名前はパジャッソ」

「名など知りません…」

聞く耳を持たず、霞は先と同様に蹴り飛ばされたパジャッソの元へと距離を詰め、右拳を握る。それに対抗するようにパジャッソも右拳をニヤリと笑いながら力を込める。

二度目の拳と拳がぶつかり合い、今度はぶつかり力が辺り一面に爆散し、お互いが踏み込んだ地面は周りより二十センチほど大きく円を描き凹んだ。次いで霞はサイドエアリエルで二発蹴りを入れるも、両腕をクロスさせガードしているパジャッソには効いていないようだった。即座にブレイクダンスの一つにあるナインティの要領で何度も蹴りを入れるもガードは固く、パジャッソにダメージを与えることはできなかった。

「効かないネーーー。お前人間。俺、機械」

そういうと、今度はパジャッソが何度もパンチを繰り出す。

「――!」

最初は避けれていたものの、徐々にパンチがヒットしだす。

「オラアッ!」

最後のパンチは、見事に霞の鳩尾(みぞおち)へと入った。

息苦しさが霞を襲う。それと共に又数メートル飛ばされる。

気がつくと辺りは、さっきとは違い、とある工事現場へと足を踏み込んでいた。

数秒で呼吸も元どおりになり、息苦しさも無くなった。

脱げたフードを再び深くかぶる。

「ちっ…糞人形(アンドロイド)が…」

——————————————————————————



「今、警察がこっちに向かってますので、皆さんこのまま待っていましょう!」

モール内に居た人たちを一つの場所へ集め、雅人は指示をしていた。

霞を信じていたから。雅人は霞を信じているからこそ一つの場所に集めた。

「じゃあ、よろしく頼む!僕はまだ避難しそびれた人がいないか確かめてくる」

丁度居合わせた友達にその場を任せ、雅人は霞を探しに出た。

分かっていた。もうここには避難しそびれた人がいない事を。だからこそ、霞を心配していた。

モールを出た雅人は片っ端から人気のないところを探そうと外へ出てみると、モール周りには、警察と共に仕事をしているアンドロイドが数体立っていた。

「はぁ、はぁ、中に人がいるから介抱して下さい!」

そうアンドロイド達へ告げると一気に中へと入って行った。

「はあ、はぁ、先輩……」

どこから探そうかと考えていると、一つの爆発音が耳に届いた。

「――!あそこか!」

距離は四百メートル程の距離。

三分ほど走ったところで、大きな音がした所へとたどり着いた。

「どこだ…?どこ行った……」

ふと地面を見やると、三十センチ程の足跡がコンクリートについていた。

「こっちか!」

三十メートル先の角を左へ、そして真っ直ぐ抜けたところにいた。

「―――!霞…先輩」

何かに恐れを覚え、見つけたものの雅人は何も出来ず、むしろ物陰に隠れるほどだった。

「――、―――」

霞は何かを呟いたが何を言ったか分からなかった。でも雅人には一つ分かることがあった。

普段の霞と何かが違うという事に。

霞と対峙している大男。

「何なんだ…あの男は……」

雅人は瞬きをする。

―――!

気づくと霞と大男の間にあった十メートルの距離は一瞬で縮待り、大男の体がくの字になっていた。

霞は腹筋に掌で突いていた。

「なっ―――」

その感想は大男も同じように驚いているようだった。

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