フードを被ったモノ
一年前——
ある日雅人の学年は社会の授業でテーマは決めないから好きにレポートを来週の水曜日までに提出しろという課題もとい難題が出された。
特に社会に興味もなかった雅人だったが翌日に事件は起きた。
学校の帰り買い物をしようと一つのコンビニへと立ち寄った。オレンジのカゴを手に下げ、商品物色しているとレジの方から野太い大きな声が聞こえた。
「おい!このカバンに金を詰めろ!」
右手には黒の自動拳銃が力強く握られており、店員は言われた通り黒の革の鞄にレジにあるお金を詰め始めた。
この時、雅人には一つの考えが思い浮かんだ。『ここで僕が、あの強盗を抑圧させれば、僕が主題の記事が書かれ、レポートが書ける』と。
そこで雅人がとった行動は、コンビニから出る、という事だった。『僕が此処から逃げれば、アイツは僕が警察の元へ行くと勘違いをする。そして、そのコンビニからも逃げる事もできる。相手は子供、絶対に捕まえれる』と雅人は全てを考慮し行動に移した。そしてコンビニから出ることもできた。本題はここからだ!と意気込んだ時だった。強盗は雅人の足を狙撃した。
バンッ!という音が聞こえたと同時に左のふくらはぎには一つの穴が開いていた。
いつのまにか雅人がやられる側へと変わっていた。ビルとビルの暗い場所へと逃げたものの、自分で自分の退路を絶ってしまったのだ。
「へへへへへ、またな」
そして自動拳銃でも音が鳴らない様に加工されたサプレッサーを取り付け雅人の頭へと銃口を向ける。
――その時だった
上から何かが降りて来た。否、飛び降りて来た。
フードを被り、黒のハーフパンツを履き、手はフードのポケットに入れたままの人?アンドロイド?は八階と六階のビルの狭間にいる雅人の前に着地し、強盗と面と向かっている。
「―――!」
何かを察した強盗は何かに怯えるようにビルの狭間の奥へと逃げ出した。
それを追うフードを被ったモノ。
夕方だった為か奥の様子は見えず男の悲鳴だけが反響していた。雅人はいつのまにか強盗が逃げた方へと駆け出していた。
雅人の頭には既に強盗のことなどなく、フードを被ったモノだけが気になっていた。
「――!」
強盗は外見に傷は見当たらず、ゴミ捨て場のような所で虚空を仰いで、尻餅をついていた。
「何が―――いや、そもそも、あいつは……」
その後――強盗は警察に捕まえられ、雅人は自宅へ帰っていた。
「あのフードの奴は、何だったんだ…?」
声には出ているものの、誰にも聞こえないであろう声で自問していた。
翌日には、普段よりも早く家を出て、昨日の街へと赴き、人々にフードのモノについて聞き回り時間が来ては学校へ行く。そして放課後再び街へ、を約一ヶ月を迎える日であった。
「だ、誰か!そいつを止めてくれー‼︎」
一人の男性が全身真っ黒の人物に窃盗されていた。窃盗犯は自分の元へと向かってくる。
「退けーーーー!」
「!」
勢いに押され、不意に避けてしまった。
――アイツを追いかければ、フードの奴に会えるんじゃ
「くっ」
前を走る窃盗犯の後ろを懸命に、見失わないように追いかける。
数分後、追いかけているうちに最寄りの住宅街の中へと駆けていた。
「くそっ!しつこいぞ!くそガキがあ——ッ!」
「はあ、はあ、くそッ!」
お互い疲れ果てているにも関わらず諦めなかった。
「!」
ちょっとした凹みにつまづいてしまい、窃盗犯の背中が遠のいていき、遂には見えなくなってしまった。
「…はあ、はあ………くそ!」
さっきと同じ台詞を吐き、アスファルトの地面を右拳で殴る。
息が整うのを、道の端に避け腰を下ろしていると、窃盗犯が見えなくなってしまった方から
「ぅゎぁぁぁぁぁぁああああああ!」
悲鳴が聞こえてきた——
雅人には一瞬で一つの考えに思い至った。
「奴か!ようやく現れたか!」
口元に笑みを浮かばせながら、声のした方へと再び駆け出した。
迷うことなく、数分前に見た姿を目の当たりにしていた。何故かって?理由は簡単。人目のつかないところなどではなく、走り出す前、雅人が座っていた道を真っ直ぐ行ったところに男が窃盗犯が、一ヶ月前の強盗犯と同じように虚空を仰いでいたからだ。
「また―――」
辺りを見回すと、一人の女性の後ろ姿が目に入った。距離は雅人から五十メートルほど。何か見ていたかもしれないという考えに思い至り駆ける。
「あの、すみません。えーっと…その……」
何も考えもせず駆けた為頭の中は空っぽに近かった。次に発すべき言葉を探し、いや選んでいた。
「何かしら?私、急いでいるのだけれど――」
振り向いた女性は、まるで人形のような容姿で雅人の思考を余計に重くさせた。
「えーっと、この辺りで、白のフードを被ったのを見ませんでしたか…?」
目の前の女性のサファイア色の瞳をじっと見つめ、雅人知っている容姿を説明し問うた。
「いいえ、そんな人見なかったわね…」
「そ、そうですか…すいません、呼び止めちゃって」
また振り出しに戻ったな、そんな事を思いつつ窃盗犯の元へ戻り警察へと電話をかけた。
数十分後には警察は、住宅街に到着した。しかし犯人の虚空を眺め何かに怯える感じは無くならなかった。