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オモイ

―――僕には、憧れの人がいる

一つの掲示板を眺めながら、いつものように思う。

掲示板には数枚の貼り紙。その中の一つに『再び現る!』と題された記事を少年は見ていた。

そこには、先日、銀行強盗の三人を一人で迎撃し無力化させたという記事と白のフードを深く被り、黒のハーフパンツを履いた一人?一体?の姿が映し出された一枚の写真があった。

「あっ!もうこんな時間か」

気づくと、左手首に巻かれた腕時計は八時二十三分を指し示していた。

靴紐を固く結び直し、ダッシュで学校へと少年は足を運んだ。

キーンコーンカーンコーン

「な…なんとか、間に合った……はあ、はぁ…」

チャイムギリギリで教室へ入り、自分の席に着いた少年、源雅人(みなもとまさと)は肩を上下させながら、自分の名が呼ばれるのを待っていた。

「源」

「はいぃ」

担任の点呼に応え、気が抜け机につっ伏せた。

朝のホームルームが終わる頃には、流石に疲れは取れ一時限目の強化の準備をしていた。

「お前、今日もギリギリだったな?」

「あははは、ほんと疲れたよ…」

友達といつものように会話を交わしつつ、先生が教室にやってくるのを待つ。

「もう、帰りたいヨ〜」

「いや…流石に早過ぎるだろ……」

そんな他愛もない会話をしていると前の扉が開かれた。

それと同時に、授業の始まりを告げるチャイム、そして教室中が騒から静へと一気に静まり返った。

「はーい、英語始めるぞー。予習やって来たろうな?」

見た目は体育教師だろうと言われても違和感のない教師が皆んなに問いかける。

この教師の授業スタイルは至極簡単なものだった。授業の終わりに課題もとい宿題が出され、それを次の授業までに済ませておく。というものだった。

「よーし、やって来てるなー」

そんな言葉を漏らしつつ、生徒の机と机の間を歩きながら確認をする。

確認を終えると教師は「よし、じゃあ授業を始める」とそう言った。


一時限を終えると、雅人はさっきと同様に英語をスクールバッグへなおし、次の授業である古文の教科書とノート、そして参考書を机上に丁寧に広げ、並べた。

その作業を終えると、いつものように友達の席へと足を運んだ。

ここまでくれば、源雅人がいかなる人物か把握できたであろう。

そう、彼は少し抜けたところはあるけれど、校内二位の優等生であり、普通の生徒だという事が。

そんなこんなで昼休みを迎えた生徒たちは食堂や他のクラスなどへと憩いの場へと向かっていった。

そしてイレギュラーな生徒、雅人は笑顔を浮かべながら屋上へと続く階段を駆け上がっていた。

「はぁ、はぁ、はぁ」

四階建てのその学校は当然エレベーターなどは存在せず、数百段となる階段は高校生には少しばかり、いいや、とても辛いもので屋上へ足を運ぶ者など零に等しかった。雅人とその人以外は。

バンッ!勢いよく屋上の扉をひらき、一言。

「先輩ッ!すいません、少しばかり遅くなっちゃって…」

朝の様に息切れをしつつ、先輩の元へと歩いて近づく。

「少しばかり?何度も言ってるけれど少しというのは私にとっては一秒未満の事なのよ?雅人くん」

「……だから、謝ってるじゃないですか」

雅人は彼女との会話、この昼休みを楽しみにして学校に来ていると言っても過言でなかった。

そんな彼女は、雅人のたった一人の憧れの人だった。

「それにいつも言ってるでしょう?霞先輩が早過ぎるんですって…」

風になびく透き通るまで金髪。少し主張の激しい胸、スカートから覗く白い肌。そして整った顔を隠す少し長めの前髪から覗く、少し青がかった瞳。彼女こそが校内一の優等生、そして校内一の美少女の二冠を達成した北条霞。ハーフの父母の間に生まれたクウォーターだ。

「ま、私くらいになれば階段なんて息をせずとも走って登って来られるし」

三年生つまり一階から階段を走って来る。二年生である雅人よりも踏む段数は多いという事になる。

「そんな怪談を聞かされる為に来たんじゃないですけど…」

そんな会話を交わしつつ雅人は霞が座るベンチに座った。

「で!で!どうだったんですか!今回は!」

「へふひ、ほふひはんほわはっははほ」

「すみません。飲み込んでから喋っていただいてよろしいですか」

口におにぎりが入っている霞にツッコミではなく、雅人は注文をした。

「特に何も無かったわよ」

「先輩にとっては無いに等しいかもしれませんけど、僕には大したことあるかもしれないじゃないですか!」

「大した事は無かったとは言っていないじゃないのよ」

「同じですよ」

雅人はこの時間が大好きだった。彼女の話を聞くのが。

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