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初等部編47


 あーでもない、こーでもないと男子達の話し合いは続く。


(うち)の絵師達にかかせたらどうかな?」

「いや、それだと単価が高すぎる。平民の中で絵が得意なものを募集したらどうだ?」

「ジンス、平民は絵を描かない。そもそも読み書きができない者の方が多い」

「マジ!?平民向けの学校ないの?」


 ジンスの驚きに対し、他の皆は不思議そうに首をかしげている。


「うちの領の報告書って上まで上がってないのか?」

「届いてはいるとは思うけど、上までは残念ながら……」

 前のめりで訴えるジンスに対して困ったようにレオが答えた。


「嘘だろ。毎年、平民向けの学校の取り組みと成果をまとめてた俺の努力って……。王都で優秀な人材育成をしておいてもらおうと他人を当てにしたのがいけなかったのか……」


 がっくりと肩を落としたジンスをプリオスが励ましている。励ましのおかげか何とか持ち直したジンスはレオの方をじろりと見た。


「王子、全面協力してもらうぞ」


 レオは苦笑しており何も言わないが、フランチェスコは流石にこの言い方は許容出来なかったらしい。ジンスを鋭い目で睨んでいる。

 そろそろジンスは不敬罪で捕まるのではないだろうか。


「ジンス、今の言い方は失礼だぞ。親しき仲にも礼儀ありという言葉もあるだろう?レオナルドが王族云々を置いておいたとしても、相手を敬う気持ちは常に持たなくては。モテないぞ」

 最後の一言は余計だが、プリオスの言葉でフランチェスコは少し溜飲が下がったらしく、目付きは変わらないものの殺気がなくなった。


「あぁ……そうだな。失礼な言い方をして悪かった。改めてお願いしたい。王都に学校を作るのを協力してもらえないだろうか?」


 変わらずふてぶてしい言い方ではあるが、レオは笑って謝罪を受け入れた。そもそも、レオは怒っていなかったのだろう。



「王都に学校を作ったとしても、人が集まらない可能性は高いよ。子供だって大事な労働力だから。大人達が出さないんじゃないかな?」


 レオナルドの言うことは最もで、ちょうど文字を学べる位の年齢になると家業の手伝いをしている子供が多い。


「普通に生徒を募集すればな。だから、金は取らない。逆に来たものには軽い食事を配る。

 フォックス領(うち)では昼と夜の2回やったんだが、結構人が集まったな。30分程の勉強をすれば、終わりの時間にはおにぎりとスープが貰えるって皆喜んでた。

 これだけだと赤字にしかならないから、きれいな文字が書けたり計算が得意な者にはやる気があれば仕事を与えて手紙の代筆や領の経理の手伝いを格安でしてもらったり、商人からの仕事を紹介して紹介料を商人から貰ったりしたな。

 一時的には利益がでないが将来を考えればした方が良い投資だろ?民が豊かなら、領地も豊かになるしな」


「なるほど。更にそこで絵が得意なものがいれば、この話の絵を描いてもらおうってことだな?」

 フランチェスコの質問にジンスは頷いた。


 王都だけではなく行く行くは国全体にこの制度が広がるだろう。学べる時間は少ない上にまだ先行きが不透明ではあるが、これを行ったら歴史に名を残す人物となる。それくらい革新的なことなのだ。


「ジンスさん、学校ができたら教師に我が領の者を派遣するわ。他にもできることがあったら何でもおっしゃって。…………それと、先程は悪かったわ。私にもその紙を見せてもらえないかしら?」

 イザベラの申し出に礼を言いつつ、ジンスは漫画を渡す。


「俺も大人気(おとなげ)ないことして悪かったな。……あと、フランも…………お前の主人を敬わない言い方をしてすまなかった。反省してる」


「あら?大人気ないもなにも、ジンスさんはまだ子供じゃないの」

 イザベラの言葉に笑い声が響く。


 まずは、試験をパスして、それからカトリーナに話を聞こう。学校のこともこれからレオとジンス中心に動き出すだろうし、お米のことや研究のことだってある。忙しい毎日になりそうだ。



次回、カトリーナsideです。スクラートに会う予定です。

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