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初等部編45



 私達は今、再来週に迫ってきている試験の勉強をしている。


「その問題、間違ってるわよ」

「あら、どこかしら」

「イザベラ、こことここも違う」

「えっ!?そこもなの」


 最近になって知ったのだが、イザベラは勉強が苦手のようだ。ダンスや礼儀作法は完璧なのだが、どうも座学になると急にやる気が起きなくなるらしい。気持ちは分かるが、筆頭貴族としてそれはまずい。

 本人も自覚があるようで試験まであと2週間というところでカトリーナに泣きついていた。プリオスも勉強はできる筈だから教えてもらわないのか聞いたところ「人には向き不向きがあるのはご存知?」と遠い目をしていた。



 イザベラが泣きついた翌日から学校のサロンを利用して始まった勉強会。仲間外れは寂しいので私も参加中だ。分からないところがあったらカトリーナにすぐに聞けるのは私も助かる。

 それに、郊外学習の日からどことなくカトリーナの様子がおかしいのでなるべく傍に居たい。


 あの日、カトリーナはレーンと楽しそうにお話をしながら戻ってきた。上手くいったのかな?と胸を撫で下ろしたのだが、カトリーナが別れ際に「さようなら」と言い、レーンは何か言いたげにカトリーナのことを見詰めていたことが気になったのだ。

 イザベラも同じように思ったようだったが、カトリーナが明らかにレーンの話を避けているため敢えて聞かないでいる。私達はカトリーナが自分から話してくれるのを待つことにしたのだ。本当は無理にでも聞いた方が良いのかもしれない。けれど、ここ最近のカトリーナは無理にいつも通りに振る舞っているようで痛々しくて、力になりたいと思うが今はそっとしておいた方が良い気がした。



「夏休みにスクラート様とお会いすることになったわ」

 突如静かに告げられた。会うとは言っていたがこんなに早いとは思わなかった。やはり、レーンとは上手くいかなかったのだろうか。


「そのことはレーン様にはお伝えしたの?」


「…………レーン様には私の心をお渡して受け取って頂けたわ」


 私の問いに微笑みながら一言そう答えるとこの話は終わりだとでも言うように、カトリーナは勉強道具を片し始めた。


「そろそろ夕方になるし、今日はこのくらいにしましょう。イザベラは私の作ってきたこの問題を明日までに解いてきてね」

 今までの会話すらなかったかのようにイザベラにお手製のプリントを手渡す。


 受け取ったイザベラはお礼を言った後に何かを言おうとしたが、視線で制されてしまっている。


「私、先生に用事があるから二人とも先に帰っててちょうだい。明日は歴史をやるからそのつもりでね。

 それじゃあ、またあしたね。ごきげんよう」

 カトリーナは短く別れの挨拶をして先にサロンから出ていってしまった。


「「…………………………」」


 私とイザベラは二人で顔を見合わせた。思っていることは一緒だろう。


「絶対に何かあったでしょうね。話し合いは上手くいかなかったのかしら」

「でも、心をお渡ししたって言ってたから両思いにはなったはずだよね?」


 嫌な予感がする。シュツェ侯爵家との婚約候補の件を受け入れてしまったのだろうか。だから、急に会うことにした?


「分からないけれど、レーン・リェーフ様とのことには触れられたくない様子だったわね。振られたってことはレーン様のご様子からも考えにくそうだけれど……」


 確かにどちらかと言えばレーン様が振られたって感じだったと思う。何か言いたそうだったし。でも、カトリーナは告白をしたって言ってたよね……。


「とりあえず、試験が終わったら直に夏休みに入るし、その前にカトリーナに話を聞きましょう。今は毎日のように顔を会わせているけれど、それもできなくなるわ」

 イザベラの話に大きく頷いて同意を伝える。


「そうだね。まだ話したくなさそうだからもう少しだけ待とう。今回みたいに一人で悩まれるのはもう嫌だもの。私達の気持ちもしっかり伝えないとね。

 まぁでも、イザベラはクラスが同じになれるようにまずは勉強がんばって」


 イザベラは真顔で頷くのを横目で見ながら私達はサロンを後にした。








 


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