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初等部編34


 それから少しの間お父様とレオのやり取りが行われた。そして遂にシュタインボックス家も話題に上がる。


「スコルピウス領は果実の栽培は少なかったはずだが、どこと手を組むつもりかな?」

「ハハハ、王子様ももう気が付いてらっしゃるでしょう?シュタインボックス領に決まってるじゃないですか。そうでなければ、態々シュタインボックス夫人をお呼びしたりしませんよ」


 ニコニコニコニコ……

 表情だけは笑顔をキープしながら話す二人の会話からそっと目を反らせば、更に黒い笑みを浮かべているパトリシア様が目に飛び込んできた。


「我が領はまだ了承しておりませんが?デニス、あなたはいつからそんなに人の意見も聞けない傲慢な人間になったのかしら。それとも、カトレアに何か頼まれたのかしらねぇ」

 パトリシア様は頬に手を当てて困ったように微笑んではいるものの目は鋭い眼光を放ちお母様を見る。すると、お母様はさっと扇子で顔を隠した。

「あぁ、カトリーナの可能性もあるわね」

 今度はそう言ってカトリーナに視線をやればカトリーナは然り気無く半歩下がり私を盾に視線を遮っている。

「まぁ、どちらでも良いんですけどねぇ」

 ついっと視線をお父様へと戻すと笑みを更に深めた。変わらず目だけは全く笑っていない。


 こっわーーーー!!

 パトリシア様めちゃめちゃ怖いんだけど。物凄く怒ってるし、これじゃあシュタインボックス領との商談なんて無理なんじゃ……。


 だが、お父様とジンスは全く気にした様子はない。レオだって苦笑いを浮かべているのに、二人はまるでこうなることを見越していたかのように微笑んでいる。


「まぁ、そう怒るな。パトリシアには大きな借りがあるからそろそろ清算したいと思っていたんだよ」

「あの時のことは気にしなくても結構よ。お陰さまで今の愛する主人と出会えましたもの」

「そちらは気にしていなくても私が気になるんだよ。勝手に恩を返すつもりでいるだけだから気にしなくてもいいんだよ?

 それに、可愛い子に望んでもいない契約なんてさせたくないだろう?」


 お父様の言葉にパトリシア様は何も返さなかった。いや、返せなかったのだろう。そんなパトリシア様にお父様は困ったように笑いかける。


「パトリシア、君は昔からの私の大切な友人であり、カトレアにとっては姉のような存在だ。

 友が困っていたら力になりたいと思うのは当然だろ。君だって私とカトレアが婚約できるよう尽力してくれたじゃないか。だから、どうか君の力にならせて欲しい」


 お父様が頭を下げた。それに続いてお母様も。二人を見てパトリシア様は困ったように笑った。その笑みは先程までと違いとても柔らかいものだ。


「ありがとう、デニス、カトレア。まさか、あなたがそこまで考えてくれているなんて思わなかったわ。私ったらすっかり偏屈になってしまっていたみたいね。

 …………お願いできるかしら」


 お父様とお母様はにこやかに頷いた。

 穏やかな空気が流れる。そんな空気をジンスはあっさりと崩した。


「シュタインボックス夫人、私はジンス・フォックスと申します。大変感動的なところ申し訳ありませんが、こちらに目を通して同意を頂けましたらサインをお願いできますか?」

 その手には何かの契約書のようなものが握られている。


 ジンス、もう少し空気読みなよ。…………いや、あれは(わざ)とかな。気が変わらないうちにさっさとサインをさせる気だ。


 しかし、パトリシア様がサインをしようとしたところでレオから止められた。


「その契約書の中に優先的に王城へ商品を売るって内容を付け加えられない?」

 余程さっきのパンケーキが気に入ったのかさらりと自身の希望も織り込もうとしている。




これからは週3回(火・木・土)の更新を考えています。余裕があれば、日曜と祝日もアップします。

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