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初等部編29


 そんなこんなで無事に?カトリーナのお母さんとの婚約を白紙に戻せたのは良いものの、お母様の心は射止めてないどころか心証はマイナス評価。


 お父様は毎日熱心にラブレターを送り、カトリーナのお母さんにも婚約がなしになった旨の手紙を書いてもらいどうにか婚約者の一候補として見てもらえるよう努力を重ねた。

 卒業後は時間を作りお母様の元へとたった数日しか居られないのに往復で一週間もかかる距離を年に何回も通った。実際は移動に魔術を使っていたので半日で着いたらしいが、その頃のお母様はそんな事は知らないので公務に支障が出ていないのか本気で心配したそうだ。


 3年近くもその状況が続き、お母様は遂に折れた。本当はもっと早くに好きになったのだが公爵家に嫁ぐのには身分差が大きすぎて踏み切れなかったのだ。

 そしてそんなお母様の背中を押したのがカトリーナのお母さん。


 婚約がなしになった件の最初の手紙以降、カトリーナのお母さんからちょくちょく手紙が来るようになり、気が付けば二人は文通仲間となっていた。


 カトリーナのお母さんは学園卒業後すぐにシュタインボックス家の長男と婚約をし、年内には結婚。更にその翌年には女の子を出産していた。

 手紙で『今の幸せがあるのはカトレアのおかげよ。あなたがデニスに出会ってくれなかったら私はこんなに穏やかな結婚生活は送れなかったわ。本当にありがとう』と何度も感謝をされて徐々に気まずさはなくなっていった。だからこそ、お父様とのことを元婚約者候補のカトリーナのお母さんに相談ができたのだ。


 お父様との交際をするにしろ、婚約者となるにしろ、男爵家以上のものが求められるようになる。そこでカトリーナのお母さんに良い講師となる人を(つて)で紹介してもらえないか頼むと、何とカトリーナのお母さんが直々に教えてくれることになったのだ。

 文通は数年に渡ってしていたもののそこで初めてカトリーナのお母さんと会い、シュタインボックス家のお屋敷で様々なことを教えてもらったお母様。

 12星座の令嬢に匹敵する程の立派な令嬢になり、見た目の美しさも相まってすぐに社交界の花となった。名乗らなければ誰も男爵家の令嬢だとは思わないほどに優雅で気品溢れるお母様へのやっかみは酷く、嫌がらせをされることも多かった。けれど、味方になってくれる人も多く一生涯の友人に出会えたのだから悪いことばかりではなかったとお母様は朗らかに笑った。


 アマ・デトワール学園へ編入もして人脈も広がったが、カトリーナのお母さんとの文通はずっと続いた。婚約しても結婚しても私が生まれた後も。


 知らなかった……。お母様にとってカトリーナのお母さんは姉のように慕っている存在だったんだ。



「お手紙にね、カトリーナさんのことも書いてあったのよ。このままでは自分で婚約相手を探す猶予もなくなってしまうって……。領地のためにはシュツェ家に嫁いでもらわなければならない。けれど、娘一人にその負担をかけても良いのかって悩んでいたわ」


「お母様ったら、私には一言もそんなこと……」

 カトリーナは今にも消えそうな声で呟いた。




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