初等部編24
「よし!景気付けに乾杯しよう!!」
「乾杯って紅茶でやりますの?」
「え?ダメ?」
「ダメじゃないけど雰囲気が出ないと言うか……」
「それなら……」
ミモルを手招きしてあるものを頼む。首を傾げてはいたが直ぐにコックラから貰ってきてくれた。
皆にどれにするか聞いて適当にグラスの中に入れていく。
絞りたて果汁にハチミツを入れて最後に炭酸水を注げば。
「じゃっじゃーん!完成でーす!!」
曖昧な記憶だから自信はないけど、不味いってことはないはず。味が薄ければ果汁を足したりハチミツを足せばいいもんね。
カトリーナとイザベラにりんごとラズベリーの炭酸ジュースを渡す。私はレモンなので蜂蜜を多めにした。
「それじゃ、カンパーイ!!」
3人でグラスをカチンっと合わせて飲む。
うん!おいしい。フレッシュ果汁は最強だね。二人のも成功だったかな?
……あれ?固まってる?炭酸苦手だったのかな。
「かっかっかっかかか革命ですわーーーー!!」
革命って……。ただの炭酸ジュースですよ、イザベラさん。
「アリア、この果物ってもしかして……」
「あぁ!カトリーナのところのだよ。よく気づいたね。
あれ?絞っちゃだめだった?」
最後まで言い切るか切らないかのところですぐ傍に歩いてきたカトリーナにガシッと両肩を掴まれる。
「やりましょう!」
「へ?」
「是非、うちの領と商品開発をしましょう!!」
興奮したカトリーナにぐわんぐわんに揺さぶられる。
「わっ分かったから……手を離してーーー!!」
「あらやだ!ごめんね、アリア大丈夫?」
慌ててカトリーナは手を離すが時既に遅し。
目の前がグラグラするー。
「これはシュタインボックス領の経済状況が改善するわね。
それに……これでレーン様を諦めなくて済むじゃない」
「えぇ、本当に!……………………っ!!」
驚きを隠せずにカトリーナはイザベラを見ればイザベラはにんまりと人の悪い笑みを浮かべた。
「やっぱりね。あなたのことだからそんなことだろうと思ったわ。
アリアは騙せても私は騙されなくってよ!!」
「ちょーっと待ったー!私は騙せてもってどういうこと!?」
全く状況についていけない。説明プリーズ!!
「だってこの子、レーン様を諦めるって一言も言わなかったのよ。見送る覚悟がないとしか。未練たらたらじゃないの!
あの時は私達を納得させるために言ったのでしょう?それに私知ってるのよ!
カトリーナ、あなたが兵法を学んでるって!!」
えっ!マジで!?
ってか、何でイザベラがそんなこと知ってるのよ。
そう思ったのは私だけではないようで……
「イザベラ、何であなたがそのこと知っているのよ」
「ふふん!私の情報網を甘く見ないでくださる?おーほほほほほほ……」
ってことは、カトリーナは見送るつもりはないってのは本当だけど……。
「イザベラ、あなたの言うとおりよ。私は見送る気なんて更々ないわ。軍師として着いていけるまでになるつもりだったのよ。
けれど、領民を見捨てるなんてできない。私はシュタインボックス家の娘ですもの。爵位ばかりが高い貧乏領でも矜持くらいあるわ。民を守るのは貴族の役目よ。
だから、シュツェ家に嫁ぐつもりだった。迷いは無くなったと思ったのに……」
領が立て直せそうなものが見つかり、シュツェ家の支援が無くても大丈夫かもしれないってなれば迷うよね。駄目だった時のことも考えるだろうし……。
私にはカトリーナの考えは分からなかったけれど、望む方へ行く手助けならできるかもしれない。
「それって、今すぐ決めなきゃ駄目なの?
カトリーナの領の果実も野菜も美味しい。ゼリーとベジタブルチップスもシュタインボックス領と提携して商品化できないかお父様に聞いてみるわ。
傷がついた果物でもジュースやゼリーにして出荷するには使えるし、形の悪い野菜だって味が美味しければベジタブルチップスにしちゃえば良いのよ!
成功の種はたくさんあるわ。今すぐシュツェ家の話を受けなくてもいいんじゃない?せめて何回かお相手に会ってから考えればいいと私は思うわ。
支援を受ける側としてではなく、一人の婚約者候補の候補として会うの」
「婚約者候補の候補……」
「アリアもたまには良いこと言うわね。良いじゃない、婚約者候補の候補!変な言い回しだけれどそれが適切な言い方よね。カトリーナにだって候補を選ぶ権利があるわ。
見極めて来なさいよ。あなたを幸せにしてくれる相手かどうか」
「私が決めても良いのかな……」
「それはこれからのシュタインボックス領の頑張り次第じゃないかしら?こんなに売れそうな商品開発を提携してくれるのに失敗なんかしたら貴女達社交界の笑い者よ」
「ついさっきの私の覚悟ってなんだったのかしらね」
「それは、この炭酸ジュースに出会うためのものよ!!」
私達の笑い声が部屋中に響き渡る。
課題は山積みだけれど、私達なら何とかできるだろう。まずはお父様の許可を取らないとね。
「ねぇ、夕飯の時にでもお父様の説得を皆でしてみない?」
「それなら、試飲してもらうのが一番ね。最高の割合を見つけましょう!!」
お茶会だったはずなのに私達はティーカップではなく計量カップ片手に美味しい炭酸ジュースの割合を探し始める。
シェフ達も夕食を作る最低限の人数を残して私達に駆り出され夕食までに納得のいく炭酸りんごジュースが出来上がったのだった。
カトリーナは待つなんてしません。自力で着いて行けるように頑張る逞しい子です。




