幼少期6
うーん、うーんと作戦を練っていると、コンコンと控えめに扉を叩く音がした。
返事をすると、扉からぴょこっと天使が顔を覗かせた。
「ノア!!」
可愛い弟の姿に笑顔になる。
「アリアちゃん、大丈夫?痛いの?」
「大丈夫、もう痛くないよ。こっちにおいで」
今にも泣き出しそうな顔をしていたノアは、その言葉を聞いた瞬間、駆け寄ってきた。ベッドによじ登りギュッと抱きついてくる。
「心配かけてごめんね」
優しく頭を撫でながら抱きしめる。
「あのね、アリアちゃんが落っこっちゃった時、死んじゃうんじゃないかって怖かったの。アリアちゃん死なないで」
ノアは私が階段から落ちたのが余程怖かったらしい。私にしがみついたまま、わんわん泣いている。
まだ4歳だが、しっかり者のノアはほとんど泣かない。泣くのは大概私が怪我をしたり、落ち込んでいる時だ。
……あれ?
これって、すでにノアの魔術師フラグ立ってる?
ノアは大好きな姉のために復讐しようと魔術師に………
もしかして、私がノアと仲良くするとノアが危険になるんじゃ…。
気付いてしまった、薄々そうじゃないかなーって思ってたけど、気付きたくなかった。
世界で一番可愛い、大好きなノア。アリアちゃんって抱きついてきてくれる私の天使。仲良くすることでノアを不幸にするだなんて…。
仲良くなりすぎてはいけない。大好きだけど、大好きだからこそ心を鬼にしなくては!!
よしよしとノアの頭を撫でながら、脳をフル回転させながら考える。
少しずつ距離を置くためにも、まずは一緒に寝るのをやめてみようかな…。
すっかり仲良し姉弟になっていた私たちは毎晩私がノアに絵本を読んであげた後に手を繋いで寝るのが習慣になっていた。
私ももうすぐ初等部に入るからやめる理由もある。
決心した私は泣く泣くノアに切り出した。
「ねぇ、ノア? ノアももう4歳でしょう?今日からは一人で寝てみようか」
「やだ」
しかし、間髪いれずに断られた。鼻をぐずぐずさせながら、更に力を込めてギュッと抱きついてくる。
「でも、私ももうすぐ初等部に入学するから、今より早起きになるの。ノアもゆっくり眠れなくなっちゃうよ?
それに、一人で寝れたらかっこいいよ」
優しく傷つけないように声をかける。
それを聞いたノアは少し考えると思ってもみなかった返事をした。
「アリアちゃんは僕と寝るのがイヤなの?
僕のこと嫌いになっちゃった?」
仲良くなりすぎては駄目だけれど、嫌われたくない。本当は一緒に寝たい。甘やかしたい。大好きなんだもん。
「そんなことないけど」
困ってしまい、なんとも素っ気ない返事をしてしまう。
けれど、それを聞いたノアはパッと表情を明るくし
「じゃぁ、今日も一緒に寝ようね!!」
と満面の笑みを見せた。
私はノアとの距離を置く作戦を見事に失敗してしまった。
私自身ノアが大好きだし、ノアも私のことが好きなのだから、この作戦事態に無理があったのかもしれない。
ノアとの仲はこのままでいいことにして、他の作戦を実行しよう…意思の弱い私はすぐにこの作戦を諦めたのだった。
ノアが4歳にして、腹黒い感じになってしまいました。今と前世合わせて22年生きたアリアですが、ノアの方が上手です。