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初等部編22


「家の経済的な事情もあるし、レーン様の婚約者候補になれなかったのは仕方がないとは思ってるんだけどね……」

 カトリーナが浮かない顔でその後を濁していれば、イザベラは隣で「分かるわ」という顔をしている。

 しかし、残念ながら私にはさっぱり分からない。説明して!とイザベラに視線を向ければ「仕方ないわね」とでも言いたげな溜め息を吐かれてしまった。


「問題はエラ・ヴィダーさんよ。彼女の婚約者候補は私が把握してるだけでも既に変わったのが3回目ね」


「えっ!そんなに!?」

 でも、そんなにコロコロ変わるんじゃ評判は悪くなるし、相手の家からも恨まれるんじゃ……。


「ヴィダー家が婚約者候補を変える時は、前の候補の家よりも爵位が高かったり裕福だったりする場合なのよ。しかも、男性の方が別の女性と仲が良かったとか大切にしていた物を壊されたとか、手紙を送っても返事を貰ったことがないとか……そういうことを理由にして相手が悪いみたいな言い方なのよね。

 普通はトラブルになりそうだけど彼女の場合は婚約者候補よりもその両親と仲良くするのが上手くてね。今まで全て相手側が悪いことになってるの。

 それでもあまり評判は良くないのだけれど、医療系に特化した家系でしょう?何かあった時のために誰も強くは出れないのよ。それに、権力もあるからすり寄る人も多いのが現状ね」


「エラ・ヴィダーさんはそのことについて何か言ってるの?」


「本人は自分のことだけを愛してくれる裕福なイケメンなら誰でも良いと言ってるわ。好みはフランチェスコ様みたいだけれど想いを寄せているわけではなさそうね……」


 うわぁ、引くわー。そんな家に生まれなくて良かった。エラ・ヴィダーさんは全く気にしてないみたいだけど人格形成に絶対影響出るって。

 それにしても、何で今さらリェーフ家なんだろう?元々は断ってたみたいだし。


「誰でも良いなら、人の想い人を婚約者候補にしなくてもいいんじゃない?何でリェーフ家なの?」


「それは……」

 今度はイザベラ言い淀むとカトリーナが続きを話始めた。


「私の想い人だからよ」


 え?それってどういうこと?


「レーンさんは上手くいきそうなカップルを壊すのが好きみたいなのよ。毎回婚約者候補に選ばれる人には想い合ってる人がいるの。

 私の場合はレーン様が想ってくれているなんて知らなかったけど、エラさんが婚約者候補にしたってことはそういうことだと思うわ。

 それに……」


「「それに?」」


「レーン様が結婚するのは私としか考えられないから少し待ってて欲しいって。必ずエラさんのことはどうにかするって言ってくれたの」


「「キャーーーー!!」」


 レーンったらイッケメーン。

 カトリーナも嬉しそうに頬を染めてるし、イザベラは目をキラキラさせている。

 でも、カトリーナの表情はみるみる曇っていく。


「私は高校を卒業するまでは猶予があるはずだから、いつまでもは無理でも待つつもりでいたのだけど、私の婚約者候補がもうすぐ決定しそうなの」


 このことはイザベラも知らなかったようで「いつそのようなお話になったの!?」と驚きを隠せずにいる。


「カトリーナの家って高校卒業時までにお父様のお眼鏡に叶う男性と両思いになれて相手のお家の許可がおりれば好きな人と結婚できるんじゃ……」


 カトリーナの瞳は今にも決壊しそうな程、涙が溜まっていく。


「ここ数年、他国からも食料を輸入するようになったからうちの領の作物も価格が下がっていて経済状況が良くないのよ。

 そんな中で3週間前に私の婚約者候補の打診があったの。婚約すれば相手の家が支援してくれるしとても良いお話だったわ。お父様も領民のために婚約して欲しいと私に頼まれたわ。滅多に頭を下げないお父様に頭まで下げられて嫌だとは言えなかった。

 「民のお陰で私達の生活は支えられている。だから私達貴族は民のために尽くさなければならない」これがお父様から最初に教わったことだもの。相手は私より7つ歳上だからその方が学園の高等部卒業と同時に私は婚約することになるわ。そして私が卒業したらすぐにでも結婚よ」


 そう言って瞳を閉じたカトリーナの目からは大粒の涙が流れ落ちた。



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