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初等部編21


 ピスケス家はかなりの美食家のようでかなり熱弁された。ただ頷くだけの私に不満そうにしながらも言いたいことを言ったのでスッキリした表情で冷めた紅茶で喉を潤している。


「それにしても、アリアさんには驚かされますわ。今回のスイーツのこともですけど、家畜の餌を食べたがったり、殿方を蹴ったりとかなり変わられてますわよね」


「そんなことありませんわ……」

 私からすればイザベラの方が変わっているのだが、これは言っちゃいけないやつ。私は空気の読める子だもの。だから、笑顔でやんわり否定するだけ。


 そんな私に少し表情を曇らせて

「アリアさんはいつになったら、私のことをイザベラと呼んでくださるの?敬語もいらないって言ってますのに……。カトリーナさんもですわよ。

 私もお二人のように仲良くなりたいですわ」

とイザベラは寂しそうに呟く。


 郊外学習のグループ決めの日、確かにイザベラは呼び捨てで呼んで欲しいと言っていた。しかし、その後タイミングを失った私達は以前と同じように話していたのだ。

 そのことがこんなにイザベラを傷つけていたなんて……。


「ごめんなさい、イザベラ。呼び捨てするのが気恥ずかしかっただけなのよ。私のこともカトリーナって呼んでね」


 カトリーナの言葉にうんうんと何度も頷いて私も同意の意思を示す。


「私もアリアって呼んで。もちろん敬語も要らないわ。お友達だもの!」


「アリア、カトリーナ、私嬉しいですわ!」

 嬉しさで瞳を潤ませながらイザベラは笑った。


「「イザベラ、敬語もなしよ」」


「そうですわね……ううん、そうよね!家族以外の方とこんなに気軽な言葉でお話ができるなんて私……私は幸せ者だわ!」

 一筋の涙が頬つたったが私達が見たなかで一番の笑顔をイザベラは見せた。




「私の悩みも解消できたことだし、そろそろカトリーナの話も聞かせてくれるかしら?」

 先程までとは打って変わって真剣な表情でイザベラはカトリーナを見る。


 自分から切り出すことができるイザベラはすごい。ずっと気になっていたけれど口には出せなかった私とは大違いだ。


 カトリーナは一度大きく深呼吸をした後、彼女の婚約事情について話始めた。


「私がレーン様に心を寄せているのは二人とも気が付いてるとは思うのだけど……」


 入学式前日、リェーフ家当主からカトリーナのお父様へ連絡が入った。内容は息子のレーンにカトリーナが親しくしないようにということだった。

 リェーフのご当主はレーンの婚約者にエラ・ヴィダーをと考えていたが、なかなかヴィダー家から良い返事が貰えなかったそうだ。なので息子がカトリーナと仲良くすることにも目を瞑っていたが、入学式直前になりヴィダー家より高校を卒業したらエラをレーンと婚約させても良いという話が来た。

 そうなるとレーンとカトリーナが想いを通じ合わせるのは非常に都合が悪くなるためシュタインボックス家へ牽制してきたのだ。


 基本的に貴族は政略結婚が普通だが、目の前で自分の婚約者候補が別の女性と仲良くしているのを見て良い気がしないのは当然のこと。

 折角、息子とヴィダー家の令嬢が婚姻関係を結べる可能性が出てきたのに、別の女性と仲が良いことを理由に断られでもしたら大変だと慌てて連絡をしたのだろうが失礼な話だ。


 私とイザベラがその話に怒っているとカトリーナは仕方がないのだと諦めたように笑った。家の繁栄を考えれば、シュタインボックス家よりヴィダー家と懇意にしたいのは当然だから……と。


 ヴィダー家とシュタインボックス家は家格は同じ侯爵家ではあるが、ヴィダー家は医療に特化した家系で侯爵家の中でも勢力があり栄えている。

 一方シュタインボックス家は農業や林業を広い領地で行い、国の食料確保へと大いに貢献しているのだがこれと言った特徴がなく、侯爵家と言えど伯爵家の方が裕福な家がいくつかあるくらいだ。

 

 だからと言って本人達の気持ちを無視するなんて!とも思うが、貴族である以上避けられない道なのかもしれない。



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