初等部編 ジンスside5
郊外学習のグループ決めの日から俺は王子達と随分打ち解けた。お昼は王子達と食べるようになり、休み時間にも一緒にいることが増えた。
ついにボッチから脱出である。
まぁ、一人でいるのも好きだから、あれはあれで良かったんだけど。
王子は相も変わらずアリアのこと以外にはあまり興味がなさそうだが、それでも友人であるフランチェスコとプリオスに対しては感情が動くことは多い。そして、今は俺に対しても。
俺はそのことが嬉しくて、ついついからかいすぎて機嫌を損ねることも多いので、いつもフランチェスコに怒られている。
「ジンス、ステーキを食べに行こう」
フランチェスコに誘われ食堂へと向かう。毎日昼食にステーキを食べているそうで、最近では「いつもの」で通じるようになったと嬉しそうに言っていた。
アリアの話ではフランチェスコもゲームの攻略キャラらしい。確かに女性への接し方はスマートでジェントルマンのお手本って感じだ。王子に対しても友人兼側近って感じだし卒がない。縁の下の力持ちって言葉がピッタリなのだが、ステーキへの愛が強すぎて他のことへの印象が薄くなるんだよな。
そんなことを考えながら歩いていれば食堂へとついた。
凄まじく広い学園だが校舎から食堂やサロン、講堂へ行くには建物間に通路があり歩いていける。
しかし、図書館や寮、ダンスホール等へは距離があるため学園の馬車を使用することが多い。俺の場合は時間さえあれば運動がてら走ったり歩いたりするのだが、そういったことをする人を俺以外には見たことがないので特殊例になるのだろう。
食堂は今日も多くの生徒が利用しているがテーブルごとの空間が広くとられており、食堂というよりは高級レストランのようなイメージだ。前世でも高級レストランには行ったことがなかったからこの表現が正しいかは微妙だが、多分間違っていないと思う。
目当ての席まで行き許可をとり、
「おーい、王子!ここ良いって!良かったなー」
手を上げて王子を呼べばアリアはぎょっとした顔をしたが、こういうのは時間が開けば決心が鈍ることもあるので早いうちに話してしまった方が良い。
王子はそんな俺を周囲にばれないように一瞬睨んだが、何も言わずにアリアの横に座る。
「何でジンスは僕を王子って呼ぶんだよ。レオナルドって呼んでって言ってるのに」
一番言いたいことはそれではないのだろうが、今は聞けないもんなぁ……。ニヤニヤしていれば、左隣に座ったフランチェスコに脇を小突かれる。
はい、すみません。
一見完璧プリンスだけど、やっぱり中身は子どもだし機嫌とるの大変だもんね。
フランチェスコは今日も苦労しているようだ。主に俺のせいで。
それでも止められないんだよなぁ。あぁ楽しい。みんな可愛いなー。フランチェスコごめんな。
フォークを投げられたり、脛を蹴られたりとお貴族様らしからぬ行動をされながらも楽しく食事をする。フランチェスコにもお米の販売ができそうだし、こちらも順調だ。
アリアのことをどう思っているか聞かれた時には少し焦ったが、妹ってことで誤魔化せた。だって同郷の仲間とも言えないし、もう上客だなんて言葉じゃ王子は誤魔化されないだろ?
態々、恋愛対象にならないか聞かれたけれど、そんなこと俺にだってわからない。
確かに今は可愛い妹みたいなアリアでも成長していけば俺が骨抜きにされる可能性だって0じゃないんだから。
それに、俺のところに来れば良いって思ってるのも本当だしな……。
アリアがそうしたいと思わないように王子には頑張ってもらわないとね。アリアが王子を選ぶのならだけど。
「食べ終わったし先に戻ってる。のんびりしてると午後の授業遅れるぞ」
先に席を立ち教室へと向かう。追求から逃れるためでもあり、カトリーナをどう思うか聞かれる前に戦略的脱出だ。『裏ボス』なんて言ったら後が怖いし、嘘を言ったらバレそうだから何も言わないに限る。
触らぬ神に祟りなしってね。
この後、教室に戻ってきたフランチェスコにやっぱり俺は怒られたのだった。
ジンスside終了です。
中身は大人でもからかうのが大好きなのでフランチェスコは苦労しています。
 




