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初等部編 ジンスside4


 アリアは俺の予想通り転生者だった。俺はこっちの世界で産まれた時から記憶持ちだったが、アリアは途中で思い出したらしい。

 しかも、自分が乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生したことに気が付いてしまった。自分のせいで弟が廃人になるかもしれないなんて考えただけで辛いだろうな。


 泣くのを我慢している姿を見て強がっていることなんてすぐに分かった。

「泣けばいいのに」

 思わず口からこぼれ出た。辛かったら我慢しなくてもいい、いっそ逃げ出してしまえば良いとすら思った。

 それでも彼女は立ち向かうのだろう。

 

 アリアは強い。逃げないのだから。前世の俺は逃げてばっかりだったからな……。


 何とか解決の糸口になるものはないかと考えていると、アリアが自殺を図ったことが気になった。

 もしかして……。

 確信はない。期待を持たせるだけになるかもしれない。それでも、何かあったら俺が守ればいいんだ。

 この強くて可愛い年下の女の子の心を守ろう。今度こそ、失敗しないように。



「アリアは弟が廃人になってしまうかもしれないから距離を置きたいみたいだけど……、弟が魔術師になったのって…………自殺しようとしたからじゃないのか?」


 アリアが少しでもこれ以上傷つかないよう言葉を選ぶ。


「俺もお前の家族も、きっとカトリーナとイザベラもアリアの味方だ。

 例えゲームのようにアリアが王子に恋をして、ヒロインが現れて嫌な思いはしても精神的におかしくなるようなことにはさせない。自殺なんか考えられなくしてやる。失恋なんて誰でもするんだ。例え恋に破れたって死にはしない。今の王子を見る限りそんな心配はいらなそうだけどな……。

 だから、安心して好きになっていいんだ。それが王子でも、他の相手でも。

 ……もし、どうしても誰とも結婚できなかったら、俺のところに来い。見る目のない男供のことなんてすぐに忘れるくらい幸せにしてやるよ。質素な生活になるけどな」


 俺の声は届いただろうか。どうか……どうか幸せになって欲しい。

 心から笑って欲しい。

 きっとそう願っているのは俺だけじゃない。

 アリア、お前はたくさんの人に愛されているよ。けれど、それは俺が言うことではないだろう。アリア本人が自分で気が付かないと。



「よしっ!!がんばるぞー!!」

 アリアが気合いをいれているのを聞きながら俺達はサロンを出た。男女二人きりでいるのを見られるのは良くないが、もう下校時間だ。誰かと会うこともないだろう。

 時間は大丈夫なのか聞けば、慌てて帰っていった。俺は寮なので門限さて守れれば平気だが、アリアはそうはいかないのだろう。

 俺に別れを告げて急いで帰る彼女の後ろ姿を眺めながら、前世の大切な人へと思いを馳せる。


 好きだった。大切だった。だけど、守れなかった。彼女が転校してから連絡が途絶えたままだったな……。

 「大丈夫」という彼女の言葉に甘えていた。SOSに気が付きながらも何もできなかった。あの頃の俺には何も力は無かったけれど、それでもできることはたくさんあったはずなのに。

 転校した後の彼女のことは母から聞いた。転校先で元気にやっていると。

 幸せになってくれてたらいいな……。今となってはそう願うことしかできないけれど。それでも、願わずにはいられなかった。








 

今回は軽くジンスの前世にも触れました。機会があれば、詳しく書きたいです。

次回でジンスsideは終わりです。その後は女子会です!

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