初等部編8
私達がホワイトボードに新しくジンスの名前を書き加えに行く途中、強い視線を感じて振り向けばレオと視線が重なった。
「アリア、僕も入れてもらってもいいかな?」
有無を言わさない笑顔で話しかけられる。
「えっと……」
レオを入れるとフランチェスコとプリオスも入れないといけなくなるから、明らかな人数オーバーになる。
どうするべきだろうか。
カトリーナを見れば困った顔をしている。やはり、考えていることは同じのようだ。
仕方がない、正直に言って断ろう。
小さな溜め息を吐き、意を決してレオを見る。
「もちろんですわー!!」
……えっ!?
イザベラーーー!!駄目だよOKしちゃったら。
目がハートになってるし。勘弁してよ。
「イザベラ様、それでは人数オーバーになってしまいます」
慌ててカトリーナと止めるが、イザベラはレオのことしか見ていない。
「レオナルド様とご一緒できるなんて光栄ですわ。私達、何をテーマにいたしましょうか」
お願いだから話を聞いて!!
切に願うがイザベラには届かず、代わりに兄の方には届いたようだ。
「イザベラ、スコルピウス嬢とシュタインボックス嬢が困っているではないか。
このクラスでの数少ない友人なのだろう?
レオナルド王子に夢中になるなとは言わないが、友をおざなりにしては駄目じゃないか。彼女達を困らせたいわけじゃないんだろ?」
プリオスの言葉でイザベラはピタリと動きを止めた。そして、気まずそうにこちらを見ている。そんなイザベラの背をそっとプリオスが押せば、おずおずと話し始める。
「ごめんなさい。困らせたいわけではありませんの。ただ、私嬉しくて……」
そうだよね。本当はレオと一緒にやりたかったんだもん。仕方ないよね。
よし、こうなれば最終手段だ。
「そうしたら私がジンスさんと組むので、他の皆さんで組んでください。そうすれば、5人ちょうどになりますわ」
元々は私がジンスも仲間に入れようとして起きたことだ。ここは私が外れるのが筋というものだろう。
しかし、そう思ったのは私だけのようで
「ダメダメダメダメ!!
男女二人でペアとか絶対に駄目だからね。アリア、あなた自分が何を言っているのか分かっているの?」
とカトリーナに詰め寄られ、イザベラは終始カトリーナに同意するかのように頷いている。
「どうして?元々ジンスさんも仲間に入れようって言ったの私だもの。誰かが溢れなければならないのなら、私達が別行動にすれば一番穏便に解決すると思うのだけど」
私の意見に皆口がパッカーンと開いたまま固まっている。
私、何かマズイこと言ったかな?
「スコルピウス嬢、私が王子達のグループに入れてもらい、2チーム合同発表へとすればどうでしょうか?
時間は限られていますし、その間に出来ることも絞られます。しかし、人数が多ければ調べられることも増えます。より充実した内容になるかと思うのですが…………先生もそれで構いませんよね?」
こちらの様子をハラハラと見守っていたらしい先生にジンスは話しかけ、了承を得ていた。
こうして、私、カトリーナ、イザベラの女子班とレオナルド、フランチェスコ、プリオス、ジンスの男子班合同で郊外学習を行うことが決まった。
それにしても、見守ってるだけなんてこの先生、大丈夫なの?
王家と公爵家相手に何か言うなんて大変なことだけど、ここは学ぶところなのだから、先生がしっかりとしてくれないと困るんだよなぁ。
……とは言っても、実際は難しいんだろうけど。
とりあえず、先生の影が薄すぎるからそれだけでもどうにかならないかな。近くにいるのに気付かないとか、どんだけなのよ。




