初等部編7
翌日からちょっとビビりながら通い初めて早3ヶ月、何事もなく平和な毎日を過ごしている。
新しいクラスには私、レオナルド、カトリーナ、イザベラ、プリオス(イザベラ兄)、フランチェスコ、ジンスと知っている顔ぶれが多い。イザベラの取り巻き1・2は隣のクラスのBクラスだ。
クラスは一クラス20人の完全な実力主義の成績順。そこは、階級に対する考慮は全くない。成績が良い順でABCと3クラスに別れており、年3回のテストでも成績に応じて3名ずつが入れ替わる恐ろしいシステムつき。
だから、クラスの中でも成績が低い子やもう少しでクラスが上がりそうな子達は当然必死で勉強する。そうすると、追い抜かれたくない他のクラスメイトも頑張るという仕組みらしい。
私は王妃教育を幼い頃から受けていたので余裕でAクラスに入れた。
Aクラスには幼い頃から優秀な家庭教師がついている貴族の中でも身分の高い者が圧倒的に多い。
なので、辺境の子爵家の四男であるジンスは非常に珍しいのだ。そのせいか、当たり障りのない会話はしているようだが、若干クラスでも浮いている。
そう、だから彼は今行われている郊外学習のグループわけでどのグループにも所属できていないようなのだ。でも、本人は全くそのことを気にしていないようで、先生の方が困っているように見える。
グループは2~5名までで自由に組んで良く、もちろん私はカトリーナと組んだ。
あとは何故かイザベラも一緒。取り巻き1・2が別クラスになってしまった為か私達とちょくちょく一緒に行動したがる。彼女いわく、知り合いは多くいるが家格に加えて、どうも気が合わないのだそうだ。
私達も家格意外は合った記憶が一度もないのだが、イザベラはそうではないらしい。不思議だ……。
「レオナルド様とは組まないのですか?」と聞けば、「自ら行って、断られたら立ち直れませんもの……」と殊勝なことを言っていた。意外な一面に驚いていれば、カトリーナが頷いていたので恋する乙女達は気が合うのかもしれない。
私は恋してないから茅の外だが……。
どんどんグループが決まりホワイトボードに名前が書かれていく。このままでは本当にジンスはボッチになる。必死に先生が周りに声をかけてみるよう促しているが、一人でいいと断っているのが聞こえてくる。
仕方がない。男の子一人でもきっと彼なら気にしないだろう。
私は二人に相談をして、カトリーナは快く、イザベラはかなり渋々だが了承したのでジンスの近くまで行き声をかけた。
「ジンス・フォックスさん、まだ決まっていないのでしたら、私達とご一緒しませんか?」
周りがざわついたが気にしない。気にしたら負けだ。だって、先生があまりにも可哀想なんだもん。
ジンスはこうなることを予測していたかのようなふてぶてしい笑顔で「よろしく」と私にだけ聞こえるような小さな声で答えた。




