初等部編6
カトリーナと楽しく話していればあっという間に時間は過ぎていく。もうすぐ入学式が始まる時間だ。両親は少し離れたところから私に小さく手を降ってから親族席へと向かっていった。
私はあまり目立ちたくないので後ろの方に座る。イザベラ達は前の方を嬉々として陣取っていた。
目立って何が楽しいのか理解に苦しむが、本来なら私があそこにいたのかと思うとイザベラを拝みたい気分だ。
なむなむ……
思わず両手を合わせて拝んでいると、隣に誰かが座った気配がした。
「スコルピウス嬢は妹に何をしているんだい?まさか、呪いをかけているとかじゃないだろうね」
男の子が名乗りもせずにいきなり隣に座って話しかけてくる。
「えっと……どちら様?」
拝んだまま顔だけそちらに向ければ、パシンッと手を叩かれた。
「はじめまして。僕はプリオス・ピスケス。イザベラの双子の兄だ。
スコルピウス嬢、いくら妹が君に失礼なことをしたからって呪いをかけるのはやめてくれないか」
「えっ?」
私が明らかに驚いた顔をしたからだろうか、イザベラ兄はみるみる顔色を無くした。
「もしかして、僕の勘違い?」
私とカトリーナが頷けば、顔面蒼白ってこのことか!!と思うくらい更に顔色が悪くなった。
「すまない。てっきり先程のことで君の怒りを買ったイザベラが呪いをかけられているんだと……。
女性の手を叩くなんて、僕は最低だ!どうか、僕に罰を与えてくれ。何でも言うことを聞こう。さあ!ドンとこい!!」
何この展開。双子揃って面倒くさい。
お陰でまた悪目立ちしちゃったし、お願いだから黙って欲しい。…………ん?黙って?
そうか!これを頼もう。
「それでは、これから入学式が終わるまで話しかけないでください」
「え?罰は?スコルピウス嬢、罰をくれ!!」
「私の言うこと何でも聞くんですよね?話しかけないで下さい。何度も言わせないで」
睨みながら言えば、一瞬押し黙った後ポポポポポ……と音が出そうなくらい一気に顔が真っ赤になった。
何で?何で赤くなるの?
嫌な予感がする。助けを求めてカトリーナを見れば顔が引きつっている。
「御愁傷様……」
諦めろと言わんばかりの顔で言われ、スッと視線を剃らされる。
その間もイザベラ兄から熱を帯びた視線を受け続けて私のHPはみるみる減っていった。
このままHPが無くなって倒れるんじゃないかと思っていれば、入学式が始まった。
学園長やお偉いさんが長々と話をしていて、すっかり飽きてしまった私はうっかり椅子に座ったまま船をこいでしまう。
眠い、眠すぎる。
令嬢として居眠りなんて言語道断。なのは分かっているんだけど。もう…だ……め…………。
完全に眠ってしまいそうになった瞬間、
「「「「キャアアアアアァァァァァァァァ」」」」
けたたましい歓声で目が覚めた。
思わず椅子から転げ落ちそうなところを隣でカトリーナが腕を支えてくれた。小さな声でお礼を言い、何事かと見回せば、見目麗しき王子様が壇上にいた。
王子様がこちらに向かって微笑んだ瞬間、
バタバタバタバタバタン…………
私の周りが急に拓けた。
どうやらレオナルドの微笑み爆弾が命中したらしい。
令嬢達が次々と担架で運ばれ一時騒然となる事件はあったものの、その後の入学式は大きな問題が起こることなく無事に終了した。
微笑むだけで気絶者が続出するなんて……。仲良くなったら嫉妬がすごそうだし、ノアのことが無くても関わり合いたくないなぁ。
婚約者第一候補である以上は既に妬みや恨みをかってるんだろうけど。
イザベラには絡まれるし、イザベラ兄からは熱のこもった視線を向けられるし、倒れなかった令嬢達からはレオの視線の先に私がいることがバレて睨まれるし……散々な入学式だったなぁ。
もう、明日からの学園生活が不安しかないとか勘弁してーーー!!
イザベラ兄はMに目覚めました。今後、イザベラとセットでも出したいです。収集がつかなくなりそうですが(笑)




