幼少期:リカルドside2
ガーディンが「魔力の制御の練習が必要だな!!」と言った日からはや一週間。
俺はスコルピウス公爵家の別邸という名の鍛練場へと向かっていた。俺が城へと戻るのはおよそ3週間後らしい。
「大掃除はしとくから、安心して帰ってこいよ。待ってるからな!!」
と俺の頭をがしがしと撫でながらガーディンは笑顔で見送ってくれた。
キャルロットはというと、まるで今生の別れのように俺を涙ながらに抱き締めて、自分も行きたいだの、3週間も俺に会えないのが耐えられないだのと騒いでいた。
新しい従者の兄妹は仕事は完璧なのに、俺に敬語を使わず、まるで兄弟のように接してくる。いや、兄上よりもずっと近い間柄のように感じる距離感だ。
本来なら即刻止めさせなけばならない態度なのだが、俺の瞳を恐れず、第2王子だからではなくリカルドとして接する二人に俺は救われたんだ。
そんな二人に見送られて、ずっと逃げ出したかった場所なのに早く帰りたいと思った。二人が待っていてくれる場所に……。
魔力制御をできるようになって、褒めてもらうんだ!と嬉しそうに笑う二人の顔を思い浮かべ、公爵家の別邸の扉を潜ったのだった。
扉を潜れば、一見優しげな男が出迎えてくれ、
「リカルド様、ようこそいらっしゃいました。私はセバスと申します。リカルド様の魔力制御の指南をさせて頂きます」
そう言って綺麗に頭を下げた。
「あぁ、よろしく頼む」
いつも通りに答えれば、遠くから射るような視線を感じた。
「……あいつは?」
思わず声に出せば、その存在は一瞬で俺の目の前に現れた。
「ねぇ、それが人に教わる態度なの?第2王子とは聞いていたけど、王族だからって指南してくれる人にそんな態度をとれるくらい偉いわけ?」
俺よりも幼いようにみえる子に詰め寄られて言葉をなくす。
こいつ、一瞬で移動した!?
俺が王子とわかった上でこんな態度をとり、魔術を平然と使うのを目の当たりにして、自分の生きていた世界があまりにも狭かったことを痛感した。
なにも言えなくなっている俺に対してその子は小さく溜め息を吐くとセバスの方へと話しかける。
「僕、こんなのと一緒に修行するの嫌です。師匠、別々に御指南承ることはできませんか?」
あまりの言われように唖然としていれば……
ゴスンッッ
その子はセバスに拳骨をくらわされ、涙目で頭を抱えていた。
「坊っちゃんこそ、そんな言い方をしてはなりません。初めては誰にでもあるのです。それを最初から見放すような言い方をして……。
リカルド様に謝りなさい」
これが俺とノアの出会いだった。
後に生涯俺を支えてくれる友人となるのだが、初対面でのお互いの印象は最悪。
最も気にくわないタイプだったとお互いに笑いながら話すようになるのはまだ少し先のこと。
ノア出てきました。アリアがいない時のノアはこんな感じです。もちろん、アリアにはバレないように徹底してますが……。