幼少期34
リカルド様と話をした後、レオとは挨拶のみで家に帰ってきた。レオは何か言いたそうにしてたけど、そこはスルーさせてもらった。
中身が大人の私が6歳児に恋をするとは思えないけど、あまり一緒にいると情がわきそうだしね……。
何より、少しでも早くお父様に報告したい。リカルド様の今の状況は想像よりも良かった。ただ、最悪の事態は回避できていたが、このまま放っておけば少しずつ歪みが生じるだろう。
今ならまだ間に合う。ノアの幸せが一番だけど、他の人がどうでも良いわけじゃない。
リカルド様にも幸せになってもらいたい。
この気持ちはただの偽善なのかもしれない。それでも、これから起きることは彼にとってプラスになるはずだ。
リカルド様が本当に必要として求めているのは、家族からの愛情なのだから……。
家に帰ればお父様とお母様が待っていた。二人ともリカルド様から話を聞くように頼んだものの私のことを心配していたようだ。
「ただいま戻りました。お父様、お母様、すぐにお伝えしたいことがあります」
私の表情をみて何かを感じ取ったのだろう。お父様はにんまりと人の悪い笑みをこぼした。
「これから、大掃除が始まりますわね」
まるで歌うように楽しげに言うお母様の姿に鳥肌がたった。
王子としてではなく、親友の息子としてリカルド様のことを心配していたようだ。
もしかしたら、私を王妃にしたいのって、親友の子供と自分の中の子供を結婚させたいだけなのかもしれないな……。
目の前で笑顔なのに全く目が笑っていないお母様を眺めながら、そんなことをぼんやりと思っていると、
「アリアちゃん、早くいらっしゃい。これから、作戦会議よ!!」
とお母様に呼ばれて慌てて後を追った。
それから、私に話を聞いたお父様とお母様は迅速だった。公爵家の分家の者をリカルド様付きとして城へと派遣し、事実確認とリカルド様の魔力制御の教育を開始した。
ものの一月でリカルド様の従者の半数はその職を外され、主犯となった貴族は一年の登城が禁止された。その程度で済んだのはまだ大きな問題が起きていなかったからだろう。
それでも貴族からすれば大問題だ。期間限定とはいえ登城禁止になったことは貴族間ですぐに知れ渡るだろう。失脚した貴族への風当たりは強い。
少なくとも当主が変わらないうちはまともな貴族からは相手にされなくなる。すぐに当主が変わったとしても、地道に信頼を勝ち取らなければあっという間に没落してしまうだろう。
リカルド様はというと、引きこもりは止めて家族と食事をとるようになったそうだ。王様と王妃様もどんなに忙しくても朝食は必ず一緒にとるようにしているが、それでも自分から話をすることはなく、聞かれたことに答えるのみでまだ心を開いてはいないらしい。
これからが大変だなぁ……。レオとリカルド様のことを思い浮かべ、私たちのように仲の良い兄弟として育ってくれるといいな……とどこまでも続く青空を見つめた。
アリアの幼少期編は終了です。ここから、リカルドやノア等の脇役サイドの話を挟んでから、初等部編へといこうと思います。
途中、休載もしましたが、ここまで読んでくださり、ありがとうございました。ブックマーク、評価、感想にとても励まされてます。
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