幼少期33
リカルド様が小さく頷いたことを確認し、話を続ける。
「まず、どうしても確認しなければならないことがあります。
……リカルド様は、王位継承を望まれますか?」
この質問は非常に危険だが、もしまだその可能性に気付いていないのなら、第2王子としての自覚と危機感を持たせなければならない。
「なんで、俺が王になるんだ?王になるのは兄上だって決まってるだろ?」
不思議そうにしている様子はこちらを騙そうとしているようにはみえない。これが嘘なら彼は私には手に余る。きちんとした大人が対応すべきだ。
まぁ、その大人たちが不甲斐ないから私がここにいるのだけど……。
「えぇ、現状では王位第一継承権はレオナルド様、次にリカルド様です。しかし、もしリカルド様が王位を望まれたらどうなると思いますか?」
「何も変わらない。兄上が王になるはずだ……」
そう言って少しの間考えた後、急に顔が青ざめた。
「お気付きになられましたか?」
私の問いに深く頷く。
「俺を王にするために、動く奴らが出てくるかもしれない。そうなったら、兄上が危ない……」
慌てて駆け出そうとするリカルドの腕をとり、落ち着かせる。
「もう一度だけ聞きます。リカルド様は、王位を継承したいですか?」
私の問いかけに首を横に振り、
「俺は王位を望まない。それは、第二王子だからじゃなく、兄上の方が王に相応しいからだ」
と力強く言い切った。
良かった。思っていたよりも状況は悪くなかった。リカルド様は他者と関わりを持たなくなったが、心根は素直で真っ直ぐだ。
レオのことも嫌っているわけじゃない。むしろ、大好きなのだろう。
あとは、余計なことを吹き込んだ大人たちのことを聞き出せばいい。そうすれば、後はお父様がどうにかしてくれる。
「リカルド様、赤い瞳のことやレオナルド様とわざと比較してくる者の名前を全員教えてくださいますか?」
一瞬考えるような素振りをみせたが、こちらの意図を察したようで次々と名を上げていく。
まだ5歳で部屋に引きこもりがちだけど、彼も厳しい教育を受けているだけのことはある。非常に優秀だ。
「これで全員だ。だが、流石にこの人数は裁けないだろ?」
「私に、スコルピウス公爵家にお任せください。2~3か月かかりますが、父が最良の結果をもたらすでしょう」
私が温室から去るときには、リカルド様の瞳は輝きを取り戻していた。




