幼少期30
お城へと到着し、レオのところまでメイドが案内してくれた。
「お招きありがとうごさいます。レオナルド様」
淑女の礼で挨拶をすれば、不満そうな顔をされた。私の礼は完璧なはずなのに失礼しちゃう。
「敬語はいらないし、レオって呼んでって言ったよね?」
後半を強調しながら笑顔で凄まれる。
えぇ、分かっていましたとも、不満の理由。でも、私は距離を置きたいのであえて敬語で話そうと思う。
「もちろん覚えております。どうしてもそのように話すことをお望みならば命じてはいかがですか?」
いじわるを言っていることは分かっている。年下相手に大人気ないことも。一度友達になることを了承したにも関わらず、彼を裏切っていることも。傷つけているだろうことも。
それでも、何よりも愛しい弟を最優先させるのだ。少しでも危ない橋は渡ってはいけない。ノアはいつでも魔術が使えたのだから。あの時と状況が違うのだ。
レオは悔しげに唇を噛んだ後、すぐにもとの表情に戻り
「それじゃあ意味がないから。いつか君の意思で僕の愛称を呼んでもらえるような男になれるよう頑張るよ」
と爽やかに笑った。
かなり嫌な態度をとったにも関わらず、怒ることなく大人の対応をされてしまった。これではどちらが大人なのか分からない。
何て返せば良いか分からず曖昧に笑ってやり過ごす。流石にその時は一生来ないなんて6歳の子供相手に言えなかった。
自分で気まずい雰囲気にしたのだが、居心地が悪いのでさっさと用件を済ませて帰るのが一番だと思い、リカルド様について話を振るとレオはハッとした表情をみせた。
「まさか、忘れてたわけでは……」
「っまさか!リカルドは今の時間なら温室にいるだろうから一緒に行こう」
明らかに忘れてたって顔してたけど、突っ込まないでおこう。やることやって、早く帰りたいしね。
あの後、一緒に行こうとするレオを説得し、状況によってはリカルド付きの従者の変更が必要になる可能性があることと変更する場合は公爵家の分家に従者にオススメの男女がいるので、紹介したい旨を伝えた。
紹介しようと思っている人達は私のいとこのお兄ちゃん、お姉ちゃんだ。小さい頃から私の瞳がキレイだと彼らが褒めてくれたから今の自分を嫌わずにいられたんだと思う。
彼等なら赤い瞳への嫌悪感を、兄への劣等感を抱えるリカルド様の助けになってくれるはずだ。
準備が整ったのでリカルド様のところへ行く。ここからは私の腕の見せ所だ。
深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、温室のドアを開いた。
そこには、驚いた表情で私を見つめるリカルド様の姿があった。
リカルドをほんの少ししか出せませんでした。
明日こそはリカルド中心のお話にしたいです。




