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幼少期27


 コンコンコン…… 

 お父様の部屋の前で返事を待つ。

 

 今までこんなに緊張してお父様の部屋の前に立ったことがあっただろうか……。ミモルにばれないよう小さく息を吐いて少しでも気持ちを落ち着けようとするが、私の心臓は早鐘のように打ちつけている。



「朝早くて、すまないね。この時間しか空けられなくて」

 申し訳なさそうな表情でお父様が出迎えてくれる。

「いえ、お忙しいところ申し訳ありません。お時間ありがとうございます」

「いいんだよ。本当は仕事を休んでゆっくり話したかったんだけどなぁ……」


 お父様はチラリと執事のセバスを見る。

 セバスはにっこりと微笑むがその目は笑っていない。鳥肌が立ち思わず腕をさすると、セバスは満足そうに頷きいつもの温和な雰囲気となった。


「……セバス、あまりアリアを怖がらせるんじゃない」

「いやはや、アリアお嬢様は優秀でありますな。さすがスコルピウス家のお嬢様でございますな」


 困り顔のお父様と嬉しそうなセバスを見ている私はきっと令嬢らしからぬ顔をしているに違いない。自分でも頬がひきつっているのがよく分かる。 

 しかし、セバスは全く気にしていないようで私を褒め称え始めた。


「いやー、私の一見穏やかそうな笑みを見破るとはやりますなー!!試しに威嚇もいれて見ましたが、その年齢にして寒気程度で済むとは、天晴れ!!!!ノア坊ちゃんも大変優秀でございますし、スコルピウス家は安泰ですなー」


「セバス、落ち着け。アリアを困らせるのもやめるように。今、セバスにお茶と軽食を用意させるから、朝食も兼ねて一緒に食べよう」


 先程まで人の話も聞かずにベラベラ話していたセバスはさっと執事の顔になり、てきぱきと用意をする。

 私の好みも熟知しているようで、ミルク多めの紅茶を入れてくれた。


 暖かい紅茶を一口飲むと強ばっていた心が少しだけほどけた気がした。

「おいしい……」

 そんな私の頭をひと撫でした後、お父様は人払いをし、部屋には二人きりになった。


「聞きたいことがあるのだろう?」


 瞳が優しげに細められる。その目には慈愛に満ちていた。お父様の優しさに背中を押され、私は話し出した。




「ノアが魔術を使ったんです。その時、瞳の色が私と同じ赤色に変わりました。

 魔術師じゃないのに魔術が使えて、お父様に教えてもらったって!!

 お父様、ノアは魔術師になってしまうのですか!?ノアに聞いてもよく分からないんです。

 ノアが……ノアがどこか遠くにいってしまいそうで、恐いんです…………」


 私の瞳から止めどなく雫が流れ落ちる。

 泣くつもりなんかなかったのに……。途中から自分で何を言っているのかも分からなかった。


 お父様がハンカチで私の目元を優しく拭う。


「アリア、君にはまだ話したことがなかったね。本当はもう少し大人になってから話すつもりだったのだけど、聞いてくれるかい?」


 私は小さく頷いた。




次回はお父様のターン

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