幼少期18
私が悪役をやらないから、イザベラ出現したの?もしかしたら、悪役回避って楽勝なのかも!!
念には念を入れて、イザベラ集団からは距離を置いておけば…。
うふ、うふふふふ…
嬉しすぎて、笑いがとまらない。悪いけど悪役はイザベラに任せておいて、私も友達作りたいな。学校に入ってから一人ぼっちは嫌だもの。
レオナルドに興味の無さそうな女の子がいいのだけど……
会場を見渡せば、ほとんどの令嬢はレオナルドの側にいるが、何人かは離れたところから見ているか、特に興味はなさそうである。
二人組の子は話しかけにくいし……。
一人でつまらなそうにレオナルドにたかる令嬢を眺めている子にしよう!
ピンクや黄色の可愛らしいドレスを着た令嬢が多いなか、その子はラベンダー色のドレスを着ていた。
黒い艶やかな髪がきれいだ。
「あの、私アリア・スコルピウスと申します。
お隣よろしいでしょ…う……か………」
声をかければ、令嬢はこちらを見て微笑みながら小さく頷いた。
その顔を見て、嫌な予感が胸の中を駆け巡る。垂れた目にラベンダー色の瞳、特徴的な泣き黒子。幼いながらもどことなく漂う色気。
もしかして……。
「はじめまして。カトリーナ・シュタインボックスと申します」
……やってしまった。後悔先に立たずとはこういうことなのだろうか。
私が声をかけた令嬢は、先生である侯爵ルートのライバルキャラであり、後味の悪い末路を辿るもう一人の令嬢であり、レオナルド王太子ルートの悪役令嬢の取り巻きの一人でもある、もっとも声をかけてはいけない人物だったのだ。
呆然と立ち尽くす私をしばらく見つめ、何を思ったのか急にカトリーナは立ち上がった。
「すみません。気がつかなくて」
申し訳なさそうに言われて引かれた椅子。
「えっ!?」
「あれ?違いました?」
「ちっっ違いますー!!!!」
私の様子に不思議そうに首をかしげている。
「イザベラ様には、こうするのですが…」
「えっ!?なんで?カトリーナ様とイザベラ様は同い年ですよね?」
「それは、イザベラ様の方が爵位が上ですから……」
困ったように微笑まれて何も言えなくなってしまった。
「椅子は自分で引きますのでお気になさらないで下さい。
これから、同じ学校に通うのです。例え爵位は違えど、学友として皆様と対等でありたいのです」
私の言葉に目をキラキラとさせるカトリーナ。
あれ?何だかすごく嫌な予感が……。
「私、アリア様に何があってもついて行きますわ」
「………結構です」
「………!!じゃあ、お友だちになって下さい」
断られて一瞬不満そうな顔をしたカトリーナだが、すぐに切り替えてきた。レオナルドのみならず、カトリーナにまで友達攻めされるとは……。
イザベラが取り巻き二人を連れていたので、すっかり油断していたのが悪かった。残りの一人もイザベラの取り巻きをしていると思ってしまったのだ。つまらなそうに眺めているなんて想像もしなかったのである。
「仲良くなれれば……」
「絶対に仲良くなってみせますわ」
せめてもの細やかな抵抗はすぐにカトリーナにへし折られた。
こうして、不本意にも取り巻き一人を友達として手に入れてしまったのだった。